結論:全業種全事業者に等しく可能性はあります

身もふたもない結論で大変申し訳ありませんが、みなさん税務調査の可能性は等しくあると思っておいてください。しかし弊所独自の見解としては以下の2点が重要と思います。

①パトロール的な意味での税務調査は全業種、全事業者に等しく可能性があるでしょう。
②狙いを定めている、重点的に力を入れている業種や対象者については国税庁がHPでわざわざ公開しているのでそこから読み取りましょう。

前提知識:KSKとは?

国税庁はKSKというシステムを導入していることは、税理士業界においてもわりと一般的に知られています。私も名前だけは聞いたことがありました。

国税総合管理(KOKUZEI SOUGOU KANRI)システムの頭文字をとったものだそうです。

経済成長に伴う事務量の増大や質的な複雑化に対応するため、事務の合理化・効率化のためにコンピュー タの活用を推進。

① 都市局と地方局で異なったシステムから国税局・税務署をネットワークで結んでオンライン処理できる システムに統一。
② 経済取引の複雑・広域化、情報化の急速な進展等を踏まえ、地域や税目を超えた情報を一元的に管理す るため、発展性のある新しいコンピュータシステムを導入。

・昭和63年 導入決定
・平成7年 東京国税局管内の2税務署、仙台国税局管内の2税務署において試行を開始
・平成9年 東京国税局管内全税務署に導入
・平成11年 大阪国税局管内全税務署に導入
・平成12年 名古屋国税局管内全税務署、関東信越国税局管内の10税務署に導入
・平成13年 全国導入完了

という歴史をたどってきたようです。

重要なのは、KSKには調査官が実際に見聞きした情報もデータ化されるということです。

例えば、税務調査官も人間ですのでランチやディナーで外食します。そこでの店員の動きや売上管理、現金管理が気になる店があったとします。そうすると税務調査官はそれをメモや暗記しておいて後日KSKシステムに入力するそうです。

現在では、携帯、スマートフォンの普及がすさまじく、メモや録音が簡単になりました。税務調査官は24時間目を光らせているそうです。

その後、外観調査、内偵調査といった段取りをへて、税務調査の対象となる事業者が選ばれるそうです。

情報元のまとめ表

情報元内容
女性で2000年代くらいまで税務署勤務されていた元国税調査官OB税理士Aさんが執筆された書籍どんな会社、どんな業種が選ばれやすいかはわからない、基本的にはKSKの情報による、というような記述がありました。
男性で1990年代くらいまで税務署勤務されていた元国税調査官Bさんが執筆された書籍税務調査はほとんどの場合はろくな情報もなしに行く、売上が上昇しているのに利益が出ていない事業者、数値の変動が大きい事業者に行く、との記述がありました。
男性で2000年代に国税庁勤務されていたのCさんが執筆された書籍KSKにより、長い間調査していない事業者は狙われやすい、売上増だが所得率減の事業者は狙われやすい、同業者の比率と離れている事業者は狙われやすい、最後は調査官の勘で選ばれる、との記述がありました。
ネット上の情報売上高が大きい事業者、所得率が高い事業者、不正割合の高い業種は狙われやすい、との記述がありました。
弊所の見解①パトロール的な意味での税務調査は全業種、全事業者に等しく可能性があるでしょう。
②狙いを定めている、重点的に力を入れている業種や対象者については国税庁がHPでわざわざ公開しているのでそこから読み取りましょう。

女性で2000年代くらいまで税務署勤務されていた元国税調査官OB税理士Aさんが執筆された書籍

元国税OBのAさん曰く「どんな業種、どんな会社が税務調査に選ばれやすいかなんかわからない、私も知りたいくらい」だそうです。基本的にはKSKの情報による、というような記述がありました。元社員や元社長の妻などからの密告・タレコミ、「あの会社は脱税してるよ」などという電話が税務署に匿名でかかってくることも実際にあるそうです。ひどい扱いをされた元社員、仲の悪かった社長夫婦が腹いせに密告することがあるそうです。

男性で1990年代くらいまで税務署勤務されていた元国税調査官Bさんが執筆された書籍

税務調査はほとんどの場合はろくな情報もなしに行く、売上が上昇しているのに利益が出ていない事業者、数値の変動が大きい事業者に行く、との記述がありました。「あの店は繁盛している」という風評などで、税務調査の対象になることも多いそうです。また急に人件費が増加しているようなところは架空人件費が疑われたりするようです。

ただ本当に売上の割に利益率が悪くなったり、人件費が高騰する場合もあるわけだからその場合は税務申告書の、たとえば概況書の特記事項にその旨を記入して変に疑われないようにすべきとの記述がありました。

男性で2000年代に国税庁勤務されていたのCさんが執筆された書籍

KSKにより、長い間調査していない事業者は狙われやすい、売上増だが所得率減の事業者は狙われやすい、同業者の比率と離れている事業者は狙われやすい、最後は調査官の勘で選ばれる、との記述がありました。

ネット上の情報

売上高が大きい事業者、所得率が高い事業者、不正割合の高い業種は狙われやすい、との記述がありました。

まとめ

不正が多い業種は狙われやすい、長年調査していないところは狙われる、などは改めて言われるまでもなく容易に想像できるため、回答になっていないように思われます。やはり根拠がなければ話になりません。国税庁は毎年、税務調査についての詳細なデータを開示してくれています。下記のページをご参照ください。

個人所得税及び個人消費税の税務調査等データ
法人税及び法人消費税の税務調査等データ

これらのデータには
・富裕層に対する調査状況
・インターネット取引を行っている個人に対する調査状況
・無申告者に対する調査状況
・事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種
・不正発見割合の高い10業種及び不正1件当たりの不正所得金額の大きな10業種(法人税)

が分類されて集計されています。これらのデータを見れば、どのような業種や事業者が税務調査に狙われやすいか自ずと見えてくるのではないでしょうか?

以上、税務調査全国対応を専門に行う税理士が、どのような業種や事業者が税務調査に狙われやすいか解説させていただきました。
 

過少申告かつ偽りその他不正の行為、隠ぺい仮装に心当たりがある方で調査通知があった方、あきらめないでください、調査通知後から調査日の前日までに自主修正申告をすれば重加算税を回避できることが国税通則法第68条1項に定義づけられています!(こちらの解説ページをご参考ください)

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