(2020年4月3日作成)(2023年7月27日再編集)(2024年4月23日再編集)

結論:現在においてまず税務署から来る税務調査を行いたい旨の電話は「調査通知」です。

事前通知と調査通知の違いを正しく理解されている方は少ないかもしれません。ここで事前通知と調査通知の違いをはっきりさせたいと思います。

平成28(2016)年度税制改正で加算税改正に伴い「調査通知」が導入されたため、事前通知より通知項目が少ない調査通知でまず「調査を行う旨」を伝え、同時に「日程はいかがしましょうか」と尋ねてくるケースが多いです。ただ平成23(2011)年度税制改正で平成25年1月1日以後は事前通知が義務化されたため、日時が合意できたら後日改めて事前通知をしてこられます。つまり2度電話があります

なぜこのような手順となるのでしょうか?それは税務調査における事前通知の歴史に関わってきますので、下記で説明します。

税務調査における事前通知の歴史

①~平成13(2001)年までは事前通知は明文化されていませんでした。
②平成13(2001)年3月27日付事務運営指針において「原則として事前通知する」とされました。
③平成23(2011)年度税制改正で平成25年1月1日以後は事前通知が行われることが国税通則法74条の9に規定されました。
④平成26(2014)年度税制改正で国税通則法74の9⑤により納税者への事前通知は納税代理人に対して行えば足りるとされ、平成26年7月1日以後にされる事前通知において適用されることになりました。
⑤平成28(2016)年度税制改正で加算税改正に伴い「調査通知」が導入され平成 29 年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用となりました。

①~平成13(2001)年までは事前通知は明文化されていませんでした。

驚くべきことですが、実は平成13年(2001年)までは税務調査の事前通知の有無は明文化されていませんでした。つまり事前通知をするかどうかは税務署職員の判断に任せられていたということになります。

・事前通知をした方がメリットが多いと考える税務署職員
・事前通知をしない方がメリットが多いと考える税務署職員

事前通知をした方がメリットが多いと考える税務職員は多かったと思われます。国税局査察部、通称マルサでなければ強制調査はできないです。つまり事前通知なしでアポなしで納税者を訪問しても「今日は都合が悪い」と言われてしまえばまず税務調査自体ができません。また仮に税務調査にしぶしぶ応じたとしても、帳簿、帳面、資料が準備されているわけではないでしょうからまずそれらの準備に時間がかかります。つまり税務調査は納税者の協力無しにはスムーズに進まないので、事前通知をしたほうが調査が円滑に進むのでメリットが多いと考える税務署職員もたくさん存在したと想像できます。

反対に事前通知をしない方がメリットが多いと考える税務署職員を存在したと思います。想像するに、性格的に荒っぽい方がそのような方法をとっていたと考えられます。例えば、納税者が無申告であることや過少申告であることについて心あたりがある場合は、税務署職員に対して強く主張できないことも多くあるでしょう。そのような納税者に対してこれまで多くの追徴課税を徴収してきた実績と自信がある税務署職員の方は、事前通知をしない方がメリットが多いと考えていたと思われます。

②平成13(2001)年3月27日付事務運営指針において「原則として事前通知する」とされました。

事務運営指針とは何でしょうか?事務運営指針とは国税組織における内規です。内規とはある組織の中でのみ適用される規則です。国税組織における内規で代表的なものが2つあります。

・通達:上位組織である国税庁が下位組織である国税局及び税務署へ通達する、法令解釈について基本的な考えをまとめたもの。
・事務運営指針:国税組織全体が国税組織の中で守るべき統一的な考えをまとめたもの。

<旧事務運営指針(平成13(2001)年3月27日)>
税務調査の際の事前通知について(事務運営指針)
1、税務調査に際しては、原則として、納税者に対し調査日時をあらかじめ通知(事前通知)する。ただし、事前通知を行うことが適当でないと認められる次のような場合については、事前通知を行わない。
①業種・業態、資料情報及び過去の調査状況等から見て、帳簿書類等による申告内容等の適否の確認が困難であると想定されるため、事前通知を行わない調査(無予告調査)により在りのままの事業実態等を確認しなければ、申告内容等に係る事実の把握が困難である想定される場合
②事前通知することにより、調査に対する忌避・妨害、あるいは帳簿書類等の破棄・隠ぺい等が予想される場合
2、なお、事前通知を行うかどうかは、個々の事案に即して、無予告調査の必要性を十分に検討して決定し、税務調査の指令の際に指示するとともに、その事績を記録する。

上記のように事務運営指針において、税務調査に際しては原則として事前通知をするといことが定められました。しかし、先述のようにあくまで内規ですので、拘束力はそれほど強くありません。税務署職員の中には事務運営指針を知っていながら無視したり、またそもそも知らない、ということもありえたようです。

③平成23(2011)年度税制改正で平成25年1月1日以後は事前通知が行われることが国税通則法74条の9に規定されました。

平成23年(2011年)においてようやく事前通知が国税通則法74条の9において制定されました。また事前通知を要しない場合としてが、国税通則法74条の10において制定されました。

国税通則法第七十四条の九 税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。以下第七十四条の十一(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査(税関の当該職員が行う調査にあつては、消費税等の課税物件の保税地域からの引取り後に行うものに限る。以下同条までにおいて同じ。)において第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。
一 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時
二 調査を行う場所
三 調査の目的
四 調査の対象となる税目
五 調査の対象となる期間
六 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
七 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
第七十四条の十 前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第三項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない

④平成26(2014)年度税制改正で国税通則法74の9⑤により納税者への事前通知は納税代理人に対して行えば足りるとされ、平成26年7月1日以後にされる事前通知において適用されることになりました。

平成23年(2011年)の国税通則法の改正により、税務調査の通知について、納税義務者に税務代理人がある場合には、納税義務者と税務代理人の双方に対して通知されることとされましたが、平成26(2014)年度改正において税務代理人に対してすれば足りるということになりました。

⑤平成28(2016)年度税制改正で加算税改正に伴い「調査通知」が導入され平成 29 年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用となりました。

平成23(2011)年度税制改正で原則として事前通知することが法令上義務化されたことにより、事前通知直後かつ更正の予知前に多額の修正申告又は期限後申告を行うことにより加算税の賦課を回避している事例が散見されていました。そこで当初申告のコンプライアンスを高めるためから、事前通知ではなく「一定の調査通知」から更正の予知までについても一段低い水準の加算税を課すこととされました。

事前通知に必要な項目(国税通則法74条の9より)
① 調査を開始する日時
② 調査を行う場所
③ 
調査の目的
④ 調査の対象となる税目
⑤ 調査の対象となる期間
⑥ 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
⑦ その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

調査通知に必要な項目(加算税制度(国税通則法)の 改正 のあらましより)
①実地調査を行う
②調査の対象となる税目
③調査の対象となる期間

なぜ調査通知が導入されたのか?(私見)

事前通知と調査通知の違いについて明確にした書籍等が見当たらないため、弊所が総合的に導いた私見となります。

通知があった場合」を基準としてその後加算税を課すというルールを設定したため、「通知があった場合」はいつか?は大変重要となりなります。上記の通り、「事前」通知については「調査日時」が必須項目にあります。調査日時というのは、税務署調査官と納税者が合意して決定されることになります。そうすると「事前」通知があった場合=調査日時に合意した場合ではないのか?という疑義が生じ、反対解釈として調査日時に合意しなければ通知があった場合にはならず引き延ばせるのでは?というような解釈を生んでしまいます。

その点、調査通知については、実地調査を行う旨、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間、だけですので、納税者との日時の合意、交渉は発生しません。調査がある旨を伝えた日=調査通知日=加算税発生の基準日、という明確な基準を定めることができる、と国は考えたと思われます。

以上が、調査通知を導入した理由と弊所は考えます。

過少申告かつ偽りその他不正の行為、隠ぺい仮装に心当たりがある方で調査通知があった方、あきらめないでください、調査通知後から調査日の前日までに自主修正申告をすれば重加算税を回避できることが国税通則法第68条1項に定義づけられています!(こちらの解説ページをご参考ください)

税務署から電話があっても慌てないでください!調査開始前であればまだ対応策は残されております。弊所にご連絡ください!