(2023年9月29日作成)

(※1)谷原誠、「税務のわかる弁護士が教える税務調査における重加算税の回避ポイント」、ぎょうせい、令和元年12月1日

結論

・課税要件事実の主張立証責任は課税庁にある、という最高裁判決が存在することから重加算税賦課要件事実の立証責任は課税庁にあると解されます。
・しかしそうであったとしても、納税者としても、積極的に立証活動を展開していくことが必要と解されます。
・重加算税賦課要件事実の証明度については、ルンバール事件という最高裁判決における、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる、という考えを採用することが妥当すると解されます。

重加算税賦課要件事実の立証責任についての最高裁判例

まず最高裁判例の重要性についてはこちらのページをご参考ください。

判例とは何か?最高裁判決判例と法律の関係

最高裁判決は、所得税事案に関し「所得の存在及びその金額について決定庁が立証責任を負うことは言うまでもないところである」(最高裁昭和38年3月3日判決、月報9巻5号668頁)としています。

このことから、課税要件事実の主張立証責任は課税庁にあると解してよいと思われます。

しかし納税者が何も立証しなくて良いことにはならない

最高裁判例ではなく、下級審の裁判例ですが下記のようなものが存在します。

必要経費について、控訴人が行政庁の認定額をこえる多額の主張をしながら、具体的にその内容を指摘せず、したがって、行政庁としてその存否・数額についての検証の手段を有しないときは、経験則に徴し相当と認められる範囲でこれを補充しえないかぎり、これを架空のもの(不存在)として取り扱うべきものと考える(広島高裁岡山支部昭和42年4月26日判決行集18巻4号614頁)としたものがあります。

谷原誠書籍(※1)p133において、必要経費などについては、納税者の領域内にあり、また、証拠を保全しておくことはそれほど困難ではないことが多いので、その立証は容易なことが多いと思われます。したがって、国側において、経費の不存在について一定の立証をした場合は、納税者が立証可能なはずなのに、合理的な立証ができないときは、国の立証が成功した、と判断される場合もありえます。したがって、課税要件事実の立証責任が国にあるとしても、納税者としても、積極的に立証活動を展開していくことが必要です、との記述があります。

重加算税賦課要件事実の証明度

・立証責任を負担する者はどの程度証明すれば立証したことになるのかという、証明度の問題があります。
・谷原誠書籍(※1)p134、おいて、ルンバール事件判決(最高裁昭和50年10月24日判決、民集29巻9号1417頁)を紹介しています。
・「証明度」については税法裁判に限らず、法全体の論点としている壮大な論点であるため、議論をするには広すぎることから、弊所は税理士谷原誠が提唱するルンバール事件判決の指す証明度をそのまま利用することといたします。

ルンバール事件判決における事実認定の証明度のルールは、以下とされました。

①立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではない
②経験則に照らして全証拠を総合検討する
③因果関係については高度の蓋然性を証明する
④通常人が疑を差し込まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。