(2023年9月28日作成)

注意すべき前提のお話

◎谷原誠、「税務のわかる弁護士が教える税務調査における重加算税の回避ポイント」、ぎょうせい、令和元年12月1日における谷原誠の前提

・現在通用すると税理士谷原誠が考える最高裁判例から、税理士谷原誠が最高裁ルールを抽出し、あくまで税理士谷原誠私見のフォーミュラ(公式)を提示している
・学説等は取り上げず、あくまで最高裁判決のみから分析している

という点をまずはしっかりと記憶お願いいたします。

◎税理士谷原誠はなぜ最高裁判決にこだわるのか?最高裁判決のみで公式を算出しても良いのか?最高裁判決と法律の関係については、こちらのページをご参考ください。

判例とは何か?最高裁判決判例と法律の関係

税理士谷原誠は最高裁平成18年4月20日判決から<谷原誠ルール5>を抽出しています

<谷原誠ルール5>税理士が納税者に無断で隠ぺい又は仮装行為をした場合

(1)納税者において当該税理士が隠ぺい仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができたこと
(2)法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたこと
(3)納税者においてこれを防止せずに隠ぺい仮装行為が行われたこと。
(4)(1)~(3)に基づいて過少申告がされたこと

弊所がおすすめする最高裁平成18年4月20日判決の呼び方

まず裁判例、判例を呼ぶ時、人と議論するとき、人に説明するときにおいては、「最高裁平成○○年○月○日判決」とか「○○地裁平成○○年○月○日判決」のように呼びます。わかりにくいというか呼びにくいですよね?ただ、これ仕方がないことだと思います。例えば、弊所はブラザーのレーザープリンターを利用しているのですが、インクトナーを交換するときは「TN-29J」を購入します。「ブラザーのトナー買っといて」と人に頼んでも「型番はどれ?」となります。商品で記号番号が付されても覚えにくいです、でも覚えるしかありません、私も「TN-29J」は嫌でも暗記しました。

裁判例の話に戻しますとやはり「最高裁平成○○年○月○日判決」と呼ぶしかないわけですが、有名な判例にはその裁判のテーマや内容を表す名前、あだ名がつくことがあります。最高裁平成18年4月20日判決には特にあだ名がありません。。

そこで弊所がおすすめする呼び名、あだ名が、最高裁平成18年4月20日判決=オリジナル命名:最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決、です。

「最高裁平成18年4年20日判決」と暗記しても「この判決ってどんな内容だったっけ?」となれば意味がなく、また暗記しにくいです。しかし、「最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決」と暗記すれば、「あー、税理士が勝手に行った不正に納税者が気が付かなかったやつだ」となります。

最高裁平成18年4月20日判決の内容

・下記においては原文を大幅に編集しておりますのでご注意ください。

事案の概要

・Xは自宅の土地家屋を譲渡したら譲渡益が発生しました。
・Xは夫丁に申告について相談した。丁は長男と、区民相談で納税額800万円程度と教えてもらい、さらに税務署からの回答としても800万円程度であると教えてもらっていたのでメモしていた。
・丁から相談を受けた乙税理士はメモの納税額804万円を見て「大体そんなもんでしょう」と述べたうえで、自身のメモを作成し「税金は550万円で済むから手数料10万円と合わせてください」といった。
・丁がどうしてそんなに安くできるのかと聞いたところ乙税理士は「私は長いこと税務署に勤めていたから素人と計算が違う。ちゃんと計算できるから間違いありませんよ」と答えた。
・丁らは乙税理士に委任し、560万円を交付した。
・乙税理士は虚偽の確定申告書を提出し、550万円を納付せず取得した。
・乙税理士の不正の協力者はいなかった。
・X及び丁は、確定申告の控を要求したり、申告について税務署への問い合わせもしなかった。
・その後、東京国税局査察部の調査により乙税理士の脱税行為が発覚し、課税庁はXに重加算税の賦課決定をしました。
・Xは取消訴訟を提起しました。

判決

◎重加算税の賦課要件を提示した

以下の場合には、隠蔽仮装行為を納税者本人の行為と同視できるとして、重加算税の賦課要件を満たす。

(1)納税者が税理士に納税申告の手続きを委任した場合であること
(2)納税者において当該税理士が隠蔽仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができたこと
(3)法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたこと
(4)納税者においてこれを防止せずに隠ぺい仮装行為が行われたこと
(5)(1)~(4)に基づいて過少申告がされたこと
(6)税理士の専任又は監督につき納税者に何らかの落ち度があるというだけで、当然に当該税理士による隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視することができるとはいえないこと

◎判断内容

・Xは乙税理士に委任した際に、脱税の意図はなく、専門家である同税理士を信頼して依頼したものであり、同税理士が脱税を行っていた事実を知っていたとうかがうこともできない。
・確定申告後、東京国税局査察部の調査により乙税理士の脱税行為が発覚するまでに、同税理士による隠ぺい仮装を認識した事実も認められない。
・Xに落ち度はあるものの、同税理士による隠ぺい仮装行為を容易に認識し得たというべき事情もうかがわれない。

以上から、重加算税の賦課要件を満たさないとしました。

まとめ

・最高裁判例は法律レベルの拘束力を持つ
・最高裁が納税者が申告を委任した税理士が隠ぺい、仮装を行った場合の判断を示した
・税理士谷原誠が当該判例から、納税者が申告を委任した税理士が隠ぺい、仮装を行った場合の<谷原誠ルール5>を導き出している。