(2023年7月11日作成)(2023年10月17日再編集)(2024年4月24日再編集)

結論

平成25年(2013年)1月1日以後の税務調査においても、税務調査の結末が更正ではなく納税者の修正申告であれば、
・増差所得や本税について不服申立ての可能性を残さない
・増差所得や本税について理由付記が不要となる
ため、調査官は修正申告を望んでいると解されます。

下記で詳細を記述します。

平成25年(2013年)1月1日以降の税務調査内容不服申立の可能性理由附記の必要不要
改正前税務調査の結末が増差所得や本税について修正申告無し理由の付記不要
税務調査の結末が青色申告者に対する更正有り理由の付記必要
税務調査の結末が白色申告者に対する更正有り理由の付記不要
青色申告制度がない税目、消費税、相続税の更正有り理由の付記不要
過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税賦課決定有り理由の付記不要
重加算税賦課決定有り理由の付記不要
改正後税務調査の結末が増差所得や本税について修正申告無し理由の付記不要
税務調査の結末が青色申告者に対する更正有り理由の付記必要
税務調査の結末が白色申告者に対する更正有り理由の付記必要
青色申告制度がない税目、消費税、相続税の更正有り理由の付記必要
過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税賦課決定有り理由の付記必要
重加算税賦課決定有り理由の付記必要

税務調査の結末の多くは、税務署が指摘した誤りに基づく税務署が修正した申告書を納税者にそのままなぞらせ再現させた申告書を提出させる、という奇妙な結末です。

税務調査を受け、誤りを指摘され、結果修正申告の提出となった、と聞くと、税務署が「この金額、この申告書、この納税額で処分する」と納税者に突きつけ、納税者はそれにしぶしぶ同意する、ようなイメージかと思われます。これを、更正、更正処分と言いますが実はこちら(更正)の方がめずらしいとされています。多くのケースは、誤りの指摘にもとづいて、税務署が申告書の見本のようなものを提示してくるので、それをそのまま納税者に再現させて提出させることになります。

なぜこのような現象が生じるのでしょうか?

(不服申し立てをするつもりのない)納税者にしてみれば修正申告も更正処分も同じである

税務調査で税金の計算に誤りが発見された場合、「法的には」2つの終わり方が存在します。1つは修正申告でもう一つは更正です。現実には税務調査のほとんどが修正申告で終わります。

・修正申告、税務調査の中で、調査官の指摘になっとくし、自ら誤りを認めてするもの
・更正、税務調査の中で、調査官に否認指摘されたが、納得できないので修正申告を提出しなかったところ、税務署側から処分されるもの

納税者側において修正申告と更正では支払うべき追徴税額は全く同じです、ただ不服申立ての可能性が残るか残らないかです。言い換えると、不服申し立てをするつもりのない納税者においては、修正申告も更正も同じとなります。

不服申立てとは、税務署からの処分に納得できない場合、納税者が裁判の前段階で税務署もしくは国税不服審判所に訴えを起こすことをいいます。修正申告は、自ら納得してするものであるため、救済措置である不服申立てができません。しかし、更正の場合は行うことができます。

加算税賦課処分はずっと不服申立可能です

勘違いしがちですが、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税という「加算税」は「賦課処分」ですのでそもそも以前からずっと不服申立可能です。

まずは税務署が修正申告書の見本のようなものを作成してくれる理由について

では修正申告の場合は、税務署は納税者に対して「今回の修正点を考慮して修正申告を作成して後日提出お願いします」と投げかけるだけでもよいのでは?という疑問が生じます。税務署がわざわざ見本を作成してくれるなんて親切ですね、とも解釈できるかもしれませんが、これは税務署の狙いによるものでもあります。

例えば無申告者の無申告の理由も様々かと思われます。会計や税務について知識を有しているがあえて作成しない無申告者、あるいは計算ができない、集計ができない、税金計算が本当にできない無申告者も存在すると思います。税務署からすれば、税務調査を行い、修正の内容について納税者に理解を求める作業を行い、そして修正する金額を算出し、最後に「では、納税者さん、今回の修正内容で修正申告をお願いします」と伝えたにも関わらず「私はできない、確定申告書の作成方法がわからないから無申告だったのです。作成してください、と言われてもできない、わからない、そんな難しいことは私には無理です」と最後の最後に主張され、さらに時間がかかるケースが想定されます。

おそらくそのようなケースを避けるために「あとは書き写すだけ」の見本のような申告書を作成するだけの状態にしているのだと思います。申告書の見本をわざわざ作成してくれるなんて、税務署は、国は優しいですね、というよりかは、税務署が効率よく業務をすすめるための仕組みと解されます。

税務調査を受け税務署の誘導に従えば良くも悪くも申告そのものは完了します

上記で「税務署が申告書の見本のようなもの作成するのでそれをそのまま転記作成すれば修正申告は完了する」とお伝えしました。そうなると、

・税理士に頼まず自力でご自身のみで税務調査を受けた場合でも申告書を作成できない、税務調査が終わらないということはあり得ない。
・税務調査で税務署に言われるがままの申告書を作成するのは嫌だから税理士を雇う、と選択としても、その税理士がその税務調査に対して無力、効果をもたらさないのであれば、ただただ税理士報酬というコストが加わるだけにすぎない恐れがある。

重加算税を回避するために税務調査初日の前日までに自主的に修正申告書を提出するために税理士へ依頼することは、確実な意味があるように思われます。弊所をご検討いただければと思います。

加算税に対する理由付記、特に重加算税の理由付記が開始されたことは画期的であり期待されましたが、期待通りにはいかないようです

こちらのページをご参考ください。

現在も存在すると思われる理不尽な調査及び理不尽な重加算税については反論しましょう

隠蔽(いんぺい)仮装行為については不明確でありかつ理由付記が存在しなかったために、言わば「処分庁の言いたい放題、やりたい放題」ではないか、という批判がありました。改正により「少なくとも重加算税の理由が付記される、つまり理由が明らかになる」と期待されたところですが、結果としては「外部からもうかがいうる特段の行動という文言を利用した総合勘案による重加算税」が存在するようです。

まとめ

・税務調査については、もし仮にご自身のみで対応する場合は、修正申告であっても更正であっても完結、完了しないことはない、と言い切れると解されます。
・税理士に税務調査の報酬を依頼するメリット、魅力を感じないのであれば、ご自身のみで対応し、税務署が作成した申告書の誘導にのることも一つの選択肢と解されます。
・調査内容に納得できない場合は、修正ではなく更正を選択し、さらに不服申立てを行うという道があります。

過少申告かつ偽りその他不正の行為、隠ぺい仮装に心当たりがある方で調査通知があった方、あきらめないでください、調査通知後から調査日の前日までに自主修正申告をすれば重加算税を回避できることが国税通則法第68条1項に定義づけられています!(こちらの解説ページをご参考ください)

税務署から電話があっても慌てないでください!調査開始前であればまだ対応策は残されております。弊所にご連絡ください!