(2024年1月17日作成)

結論

・特別調査・一般調査・着眼調査は「実地調査」であり、いわゆる税務調査となります。
・簡易な接触は、行政指導と解されます。
・しかし理由は不明ですが、国税庁は「簡易な接触とは行政指導です」とは明言せず、参考として濁したような文言で説明しています。
・しかし、財務省の資料において「文書・電話による行政指導や来署依頼による面接等により、納税者に対して申告額
等の適否の確認や非違事項の是正を行った簡易な接触」として、簡易な接触は行政指導であると明示していると解されます。
・したがって、簡易な接触は税務調査に該当せず、調査通知や事前通知にも該当しないはずです。
・以上より、簡易な接触における加算税は無申告加算税のみであるはずです。
・上記のように、簡易な接触についての意義が周知されておらず、弁護士会から「簡易な接触という名を借りた税務調査はしてはいけない」と要請された事実が存在します。

下記において解説いたします

調査と行政指導の違い

国税庁ホームページ「所得税及び消費税調査等の状況」による解説国税庁ホームページ「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2による解説財務省による解説性質加算税コメント
特別調査特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人 を対象に、相当の日数(1件当たり 10日以上を目安)を確保して実施しているものです--実地調査(税務調査)無申告加算税賦課、過少申告加算税賦課、重加算税賦課の可能性がある・「所得税及び消費税調査等の状況」による解説では「簡易な接触は行政指導である」という明言がありません。
・「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2による解説では「行政指導を行うことがありそれは簡易な接触というものである」との明言がありません。
・国税庁は納税者を混乱させています。
・財務省は行政指導と簡易な接触を結びつけるような解説です。
・弁護士連合会から調査と行政指導を明確に区分すべきという要請がされている
一般調査高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもの--
着眼調査資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です--
簡易な接触簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話によ る連絡又は来署依頼による面接を行い、 申告内容を是正するもの・税務調査のほかに、行政指導の一環として、例えば、提出された申告書に計算誤り、転記誤り、記載漏れ及び法令の適用誤り等の誤りがあるのではないかと思われる場合に、納税者の方に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請する場合があります。このような行政指導に基づき、納税者の方が自主的に修正申告書を提出された場合には、延滞税は納付していただく場合がありますが、過少申告加算税は賦課されません(当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課されます。)。
・なお、税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者の方に明示することとしています。
文書・電話による行政指導や来署依頼による面接等により、納税者に対して申告額等の適否の確認や非違事項の是正を行った簡易な接触行政指導無申告加算税賦課の可能性しか存在しないはず

 

国税庁ホームページ税務調査件数データ関係の報道発表資料による簡易な接触についての説明

・令和4事務年度所得税及び消費税調査等の状況←(参考3)簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。←「行政指導の文言無し」

・令和4事務年度法人税等の調査事績の概要←(注1)簡易な接触とは、税務署等において書面や電話による連絡や来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請するものです。←「行政指導の文言無し」

・令和4事務年度における相続税の調査等の状況←実地調査を適切に実施する⼀⽅、⽂書、電話による連絡⼜は来署依頼による⾯接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正するなどの接触(以下「簡易な接触」といいます。)の⼿法も効果的・効率的に活⽤し、適正・公平な課税の確保に努めています。←「行政指導の文言無し」

上記の通り、「簡易な接触は税務調査ではなく行政指導です」とは決して明言されておらず、簡易な接触も税務調査であると勘違いを誘導するような説明となっております。

「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け):問2」による説明

問2 税務署の担当者から電話で申告書の内容に問題がないか確認して、必要ならば修正申告書を提出するよう連絡を受けましたが、これは調査なのでしょうか。

調査は、特定の納税者の方の課税標準等又は税額等を認定する目的で、質問検査等を行い申告内容を確認するものですが、税務当局では、税務調査のほかに、行政指導の一環として、例えば、提出された申告書に計算誤り、転記誤り、記載漏れ及び法令の適用誤り等の誤りがあるのではないかと思われる場合に、納税者の方に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請する場合があります。このような行政指導に基づき、納税者の方が自主的に修正申告書を提出された場合には、延滞税は納付していただく場合がありますが、過少申告加算税は賦課されません(当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課されます。)。
なお、税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者の方に明示することとしています。←自発的な見直し要請の行政指導は簡易な接触である、とは明言していません。

財務省の説明

令和4事務年度国税庁実績評価書 業績目標1-4-1(適正申告の実現及び的確な調査・行政指導の実施)においては「文書・電話による行政指導や来署依頼による面接等により、納税者に対して申告額等の適否の確認や非違事項の是正を行った簡易な接触」という説明があります。

 

所得税法人税相続税における実地調査簡易な接触非違割合書面添付割合税理士関与割合平均比較所得税法人税相続税
特別・一般・着眼実地調査の合計件数(平均)/件56,862 76,000 11,228
上記非違割合/%83.574.783.4
簡易な接触件数(平均)/件547,849 57,600 11,789
上記非違割合/%56.6非公表24.3
税理士関与割合(平均)/%20.589.185.9
書面添付割合(平均)/%1.49.419.7