(2023年11月18日作成)

裁決要旨検索システムを利用した統計から算出した裁決で争った場合の重加算税賦課回避可能性は15%という弊所独自の見解

あくまで弊所独自の見解ですが、裁決要旨検索システムを利用した統計から算出した裁決で争った場合の重加算税賦課回避可能性は15%という確率を導きだしました。

裁決要旨検索システムのキーワードを仮装として検索し年度別でまとめた表20240105

以下においてその算出の過程や根拠、注意点、留意点をご説明します。

裁決要旨検索システムを利用して重加算税賦課回避可能性を算出することを思いついた経緯

まず、不服申立制度や国税不服審判所や裁決要旨検索システムについては下記をご参考ください。

不服申立制度や国税不服審判所や裁決要旨検索システムについて

以上から裁決要旨検索システムを利用すれば、重加算税賦課が争点となった裁決を年度を絞って、年度ごとに検索できることに弊所はたどり着きました。

そうすると、まず重加算税賦課が争点となった裁決の件数を集計し、そのうち裁決において重加算税賦課が取り消された件数を調べれば、裁決において重加算税の取消を主張した場合の重加算税回避の確率を算出できるのではないか、と思いつきました。

裁決要旨検索システムを利用して重加算税賦課回避可能性を算出する過程においての実際の手順

裁決要旨検索システムを利用して重加算税賦課回避可能性を算出する場合の、実際の作業手順は以下のようになります。

・平成19年以前の裁決事例を除外して年度別に検索して集計した理由
◎最高裁昭和62年5月8日判決、最高裁平成6年11月22日判決、最高裁平成7年4月28日判決、最高裁平成17年1月17日判決、最高裁平成18年4月20日判決が、隠ぺい、仮装の有無の判断について現在国が採用している判例であり、当該判例によって分析することが妥当すると税理士谷原誠は解説しています。当該考えを弊所は賛同しています。したがって、平成19年以前の公表裁決は現在採用している判断基準とは異なる恐れがあると判断し、除外しました。
◎隠ぺい、仮装の判断は、納税者の資料保存能力、集計能力が関係すると解され、パソコン、スマホ、ネット技術による影響も無視できないところ、それらが存在しない昭和、平成初期の裁決は時代錯誤であるため分析から除外することが妥当すると判断し、現在の状況と近似する平成20年以降の裁決の抽出を試みたためです。

弁護士税理士谷原誠の書籍「税務のわかる弁護士が教える税務調査における重加算税の回避ポイント」を参考とした重加算税を回避する方法についての弊所独自の考察

・裁決要旨検索システムにおけるキーワードを「仮装」とした理由
検索期間を平成20年1月1日から令和4年12月31日とし、キーワードを、「重加算税」「隠ぺい」「隠蔽」「仮装」とそれぞれ検索した結果は下記となりました。

◎キーワード「重加算税」→698件
◎キーワード「隠ぺい」→657件
◎キーワード「隠蔽」→187件
◎キーワード「仮装」→966件

「仮装」による検索結果の件数が最も多数となったため、「仮装」を採用しました。

・キーワード「仮装」+平成20年の暦年、平成21年の暦年、、、、と年度別にエクセルで集計しました。
・検索結果のうち、同一裁決と思われる裁決は集約して1件とカウントしました。
・健作結果のうち、隠ぺい仮装が認められず重加算税賦課を取消した件数を集計し、反対解釈として残りの件数は重加算税賦課が維持された件数として集計しました。

以上が実際の算出過程となります。

既に判明している当該検証内容の欠点、欠陥、留意点、不完全である理由

しかしながら、当該算出の方法は、弊所独自の方法のため、下記の欠陥のような点が含まれておりますのでご注意ください。

・「仮装」というキーワードで検索したが、それですべての重加算税事例を抽出できているわけではない可能性が高いです。
・なぜなら国税不服審判所が「隠ぺい仮装行為を認めなかった事例として平成20年から令和4年で掲載しているうち相続事例を除くと58件」のはずですが、弊所の裁決要旨検索システムで集計して算出した事例数と齟齬があります。原因を調べるとやはり「仮装」のキーワードで抽出できていないものがありました。
・弊所が同一裁決として集約した件数に誤りがあるかもしれません。
・その他弊所による見落としによる誤りがあるかもしれません。

しかしながら、ある程度の信用性はある算出データであると自負しております。今後、時間をかけて精度を高めてアップデートしていく所存です。

当該作業で見出すことができた重加算税賦課回避基準、要件へのヒントを見いだせるかもしれない論点

・国税不服審判所が「隠ぺい仮装を認めなかった事例」としてまとめてはいないが、裁決要旨検索システムの検索結果においえて「隠ぺい仮装を認めなかった事例と推測される事例」が散見されたため、当該事例を抽出して研究する。
・裁決要旨検索システムの検索結果において「隠ぺい仮装を認めなかった事例と推測される事例」かつ「非公開」とされている事例が存在するため、TAINSや情報公開制度を利用して内容を確認し研究する。
・H25年改正以後不利益処分理由付記、つまり重加算税賦課にあたっての理由付記が争点になった事例かつ「非公開」の裁決が存在することを見出すことができたため、TAINSや情報公開制度を利用して内容を確認し研究する。
・偽りその他不正の行為が争点となった事例かつ「非公開」の裁決が存在することを見出すことができたため、TAINSや情報公開制度を利用して内容を確認し、隠ぺい仮装と偽りその他不正の行為の差異について研究する。

まとめ

・弊所は国税不服審判所の裁決要旨検索システムを利用し、重加算税の賦課について裁決まで争った場合に、重加算税を回避できる可能性、確率を算出する方法を見出し、それは15%と結論づけました。
・国税不服審判所の裁決要旨検索システムを利用し、集計することで、重加算税を回避する要件、条件を研究するための材料が見つかりました。