(2023年9月29日作成)

(※1)谷原誠、「税務のわかる弁護士が教える税務調査における重加算税の回避ポイント」、ぎょうせい、令和元年12月1日

注意すべき前提のお話

◎谷原誠、「税務のわかる弁護士が教える税務調査における重加算税の回避ポイント」、ぎょうせい、令和元年12月1日における谷原誠の前提

・現在通用すると税理士谷原誠が考える最高裁判例から、税理士谷原誠が最高裁ルールを抽出し、あくまで税理士谷原誠私見のフォーミュラ(公式)を提示している
・学説等は取り上げず、あくまで最高裁判決のみから分析している

という点をまずはしっかりと記憶お願いいたします。

◎税理士谷原誠はなぜ最高裁判決にこだわるのか?最高裁判決のみで公式を算出しても良いのか?最高裁判決と法律の関係については、こちらのページをご参考ください。

判例とは何か?最高裁判決判例と法律の関係

税理士以外の第三者行為については最高裁判例が存在しないため谷原誠ルールとしてルール化されていないと解されます

谷原誠書籍(※1)p57より、ここからは最高裁によって確立された規範がない論点に関する下級審判例及び裁決例を検討していきたい、と記述があります。従って、最高裁判例に基づいてフォーミュラ(公式)を算出するという前提により、税理士谷原誠は税理士以外の第三者行為についてルール化していない、と解されます。

まず「実質所得者課税」について検討しその後に「隠ぺい、仮装」の検討という二段階構造であると記述されています

谷原誠書籍(※1)p61より、まず「実質所得者課税」について検討し、その後に「隠ぺい、仮装」があったかどうか、が検討される、という二段階構造になります、と記述されています。

その他谷原誠書籍(※1)について弊所独自が気が付いたこと

・第三者行為は、納税者の従業員及び納税者の家族の行為、を定義していると解されます。
・納税者の従業員行為の場合と納税者の家族行為の場合と、で区別しての議論は無く、まとめて議論していると解されます。
・納税者の従業員行為の下級審判例及び裁決例を中心として議論していると解されます。
・納税者の従業員行為の検討条件はまとめられています。
・谷原誠書籍(※1)p65より、現在は第三者行為については、最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>が適用されると思います、とあります。しかし、谷原誠書籍(※1)p63-p81については、「平成18年以前の判決、裁決」が検討されています。ここは「平成18年以後の判決、裁決」で検討すべきだったのでは、というのが弊所独自の見解です。

谷原誠書籍(※1)が第三者行為の場合の議論のために検討した仙台地裁平成24年2月29日判決

◎事案の概要(弊所独自に編集)

・原告Xは旅館を経営している内国法人
・社員乙は副総支配人
・社員丙はXの総料理長
・社員乙は仕入れ先からリベート手数料を受け取り社員丙と分けていました。
・課税庁が本件リベート手数料を原告Xの収入と認定し、重加算税賦課決定処分をしました。
・原告Xが重加算税の取り消しを求めました。

◎判決の概要(弊所独自に編集)

・重加算税賦課決定処分は、原告Xにリベート手数料が帰属する前提だが、原告Xに帰属しない場合は前提を欠き、原告Xには益金が発生しないことになる。
・原告Xにリベート手数料が帰属するかどうかの判断は、社員乙らの法律上の地位、権限について検討することが相当である
・原告Xは社員乙に仕入権限を付与していなかった。
・原告は社員乙を含む全従業員にリベート手数料の受領禁止を周知していた。
・社員乙は、訴外丁からリベートを領収する際に、人目のつかない場所で行っていた。
・そうすると、社員乙は個人として訴外丁からリベート手数料を受け取ったと認められる。
・以上から、本件リベート手数料は原告Xに帰属しない。

◎税理士谷原誠書籍(※1)p61より谷原誠の見解

納税者の従業員による着服、リベート事案においては、収益が納税者に帰属するのか、あるいは、従業員個人に帰属するのか、について、以下の点を検討すべきだと考えられます。

①当該収入は、個人としての法的地位に基づき得たものであるか、あるいは納税者の従業員としての法的地位に基づき得たものであるか
②納税者の従業員として金員の受領権限があったか
③納税者は、従業員のリベート受領を禁止していたか
④従業員は、仕入業者の選定や仕入金額の決定に権限を有していたか
⑤受領した金員が従業員によって私的に消費されていたか
⑥納税者がリベートの受領について知らなかったか、または、知り得なかったか
⑦着服と対象となった行為は、納税者の業務に関する取引であったか

谷原誠書籍(※1)が第三者行為の場合の議論のために検討した国税庁の見解

国税庁の記述の紹介

谷原誠書籍(※1)P76より、税理士谷原誠は下記のように国税庁の見解を記述しています。

「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点、179頁)において、「代表権を有する者が行った不正行為は会社の行為となるが、その他の会社関係者が行った不正行為の結果、過少申告が生じた場合であっても、その不正行為を会社の行為と同視して重加算税を賦課できる場合がある。従業員であっても、会社の主要な業務を任され、長期にわたる不正や多額な不正など会社が通常の注意をすれば容易に発見できる不正行為を管理監督しなかったために、これを見過ごし、結果としてこれを起因とする過少申告が生じた場合には、会社の行為と同視することができる」

「不正行為者がどの範囲まで業務を任され、当該業務がどのようにチェックされていたか等について、特に次の①から③までについて関係者に対する『質問応答記録書』を作成するなどして証拠化しておく必要がある。

①重要な事務を担当していたこと
②当該従業員に業務を任せきりにしていたこと
③法人が何らかの管理・監督をしないまま放置していたこと」

谷原誠が編み出した基準

したがって、税務調査において重加算税賦課に関する指摘を受け、質問応答記録書の作成を開始する旨、課税庁職員から宣告された際は、当該通達の要件に該当しないように応答できるかがポイントになります。
①不正行為者が重要な事務を担当する地位や権限を有していないこと
②会社が就業規則やルールにより不正を禁止していたこと
③会社が管理・監督していたにもかかわらず不正が生じたこと

上記を税理士谷原誠は提唱しています。弊所独自のフォーミュラ(公式)にも利用させていただいております。

弁護士税理士谷原誠の書籍「税務のわかる弁護士が教える税務調査における重加算税の回避ポイント」を参考とした重加算税を回避する方法についての弊所独自の考察

谷原誠書籍(※1)が第三者行為の場合の議論のために検討した判決、裁決

谷原誠書籍(※1)p63-p64より、谷原誠が第三者行為の場合の議論のために検討した裁決は下記となり、「最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決」ばかりでした。ここは、平成18年以降で検討すべきだったのではないでしょうか、というのが弊所独自の見解です。

・静岡地裁昭和44年11月28日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・名古屋地裁平成4年12月24日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・東京地裁昭和55年12月22日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・札幌地裁昭和56年2月25日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・大阪地裁平成10年10月28日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・大阪地裁昭和36年8月10日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・大阪地裁昭和58年5月27日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・岐阜地裁平成2年7月16日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・鳥取地裁昭和47年4月3日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・国税不服審判所昭和62年7月6日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決
・国税不服審判所平成13年3月7日判決←最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決の<谷原誠ルール5>前の時代の判決

谷原誠書籍(※1)における第三者行為の要件まとめ

・第三者行為の場合は二段階構造である
・まず実質所得者課税で第三者行為が納税者の行為と同一視できるかどうか検討する
・同一視できた場合に、その第三者が隠ぺい、仮装行為していた場合は重加算税賦課要件を満たす