(2023年9月26日作成)
結論
・あるテーマの裁判が最高裁までたどり着く確率は極めて低いです。
・その極めて低い確率の中でたどりついたあるテーマの最高裁の判断、判決は、貴重であり、重要であり、尊重されるべきもの、となります。
・そうするとあるテーマにおける最高裁の判断はその後の同様のテーマと考えられる裁判の判断において絶大な影響を与え、引用されることが多々あり、つまり拘束力を持つことになります。
・このように実質的に法律のような拘束力をもつ最高裁の判決を「狭義の意味での判例」として、判例と呼ばれる、ということが妥当すると思われます。
以下で詳細を解説します。
判例とは?
判例って何?という質問は実は難しいと言われています。弊所の見解としては下記です。
・最も広義の意味として地裁、高裁、最高裁すべての裁判例に限る場合
・狭義の意味として、すべての裁判例の中で、図書館資料やデータベース等の情報源に収録された裁判例に限る場合
・最も狭義の意味として、すべての裁判例の中で、先例として事実上の拘束力を持ち、他の裁判で何度も引用される最高裁の裁判例に限る場合
となります。
なお、判例を収録する資料や情報源は、ある裁判で示された法律的判断が、別の事件にも適用できるかどうかの判断に資するという趣旨で編集されています。このため、判例集等に収録される判例は、全体の裁判数からするとごくわずかであり(訴訟全体の1%以下)、有名な事件であっても判例集等に収録されない場合があります。
最高裁へはなかなかたどり着かない
最高裁での裁判は、上告審と呼ばれます。2020年度に上告受理申立てが認められたのは、申立があった1902件のうちの32件で、率にして1.7%でした(西天満総合法律事務所https://mt-law.jp/blog/2021/10/post-161.html)。
上告受理申立てが認められるのは、以下の場合とされます。
・憲法の解釈の誤りがあるとき
・重大な訴訟手続の違反があるとき
・原判決に判例に反する判断があるとき
・法令の解釈に関する重要な事項を含むとき
となります。上告受理申立てが認められることがいかに困難であるかがわかります。
小括
以上から、すべての裁判例のなかでデーターベース等に選ばれた裁判例において何度も引用されるような最高裁の裁判例は法律レベルの拘束力持ち判例と呼ばれる、ことになります。
なお税務訴訟では最高裁への道のりはさらに長いです
Y税務署長がXを税務調査し、Y税務署長がXへ更正・加算税の賦課決定通知書送付した場合に、Xが納得いかなかった場合の最高裁への道のりは下記となります。
・Y税務署長への異議申立て
・Y税務署長による異議決定
・国税不服審査署長への審査請求
・国税不服審査所長による裁決
・地方裁判所へ訴え提起
・高裁へ控訴
・最高裁上告
となります。
いかがでしょうか、税法においても、最高裁の下す判断を得ること、オープンとされることがいかに貴重であるかがわかります。
まとめ
法律問題って、当然法律が重要なんじゃないの?なんで裁判例が関係あるの?という疑問が解消したでしょうか。税務調査においても判例、判例、と言われますが、あまりピンときていない方もおられたかもしれませんが、以上が理由となります。