(2023年11月15日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる
令和2年2月13日裁決のオリジナルのあだ名
令和2年過去申告経験済みで税理士が見つからず無申告であって一度資料を捨てた旨の発言をしたとしても隠ぺい仮装を認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・本件は、請求人が、法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったことに、隠蔽又は仮装に該当する行為はないとして、その一部の取消しを求めた事案である。
・請求人は、有限会社であり、道路交通安全施設工事を主たる事業としている。
・請求人は、設立時以降、平成14年12月1日から平成15年11月30日までの事業年度(以下「平成15年11月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)までの間、原処分庁に対して、いずれも請求人の税務代理人であったJ税理士が作成した確定申告書を提出していた。
・請求人の代表取締役は、設立時から平成30年12月1日までの間をG(以下「本件前代表者」という。)が、そして、同日以降を本件前代表者の長男E(以下「本件代表者」という。)がそれぞれ務めている。また、本件代表者の妻Hは、同日、請求人の取締役に就任し、現在に至っている。
・請求人は、平成16年11月期以降の確定申告書を提出していなかった。
・調査日←平成30年8月28日
・処分日←平成30年11月29日
・法人税の調査対象期間となった期間
◎平成25年11月期←法定申告期限平成26年1月31日←処分日平成30年11月29日から5年以内
◎平成26年11月期←法定申告期限平成27年1月31日←処分日平成30年11月29日から4年以内
◎平成27年11月期←法定申告期限平成28年1月31日←処分日平成30年11月29日から3年以内
◎平成28年11月期←法定申告期限平成29年1月31日←処分日平成30年11月29日から2年以内
◎平成29年11月期←法定申告期限平成30年1月31日←処分日平成30年11月29日から1年以内
・復興特別法人税及び地方法人税、消費税及び地方消費税の調査対象期間となった期間
◎省略
(2)争点
請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか否か。
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記は無い。しかし、最高裁平成7年4月28日判決=オリジナル命名:最高裁平成7年積極的な隠蔽なしの無申告だが当初から過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動した判決の、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用したと解される。
(4)争点の審判所の判断
・本件調査担当職員は、平成30年8月28日、本件前代表者に対し、請求人の所得金額を計算するための帳簿や請求書などの書類の提示を求めたが、本件前代表者はこれらの書類を提示しなかった。本件前代表者は、直近3年間ほどの期間は、本件代表者に請求人の経営等の全てを任せているので不明であるが、それ以前の期間については、帳簿は作成しておらず、また、請求書などの書類は全て捨てた旨申述した。
・請求人は、平成30年8月29日(調査日初日の翌日)、本件代表者が、請求人の収入に関する書類並びに請求人の支出に関する書類を提示した。
・請求人は、平成30年8月31日(調査日初日から3日後)、本件前代表者が管理していた領収証並、外注支払明細書及び給料支払明細書を提示した。
・本件前代表者は税務代理を、平成23年頃、L税理士に断られ、本件代表者の妻は、平成26年J税理士に断られ、その他にも2名ないし3名の税理士に断られ、平成28年、M税理士に断られた。本件前代表者及び本件代表者の妻の行動からすれば、請求人は、漫然と無申告の状態を放置していたわけではなく、むしろ、申告をしようとしていたことがうかがえる。
・本件調査において、本件前代表者は平成30年8月28日に本件調査担当職員に対し、請求書などの書類は全て捨てた旨、一度は申述したことが認められるものの、その翌日である同月29日には本件代表者が管理していた書類を、さらに、同月31日には本件前代表者が管理していた書類を、それぞれ本件調査担当職員に提示している。これらの事実からすれば、この本件前代表者の申述について、直ちに虚偽の答弁を行ったとまで評価することはできず、まして、この申述によって、請求人が無申告で済ませようとする態度を貫いたとか、本件調査に非協力的な態度をとったとか、本件調査を困難ならしめる状況を作出したなどと評価することもできない。
・事情を総合すると、請求人は、申告の必要性を認識しながら、これをしなかったことは認められるものの、税を免れようとする確定的な意思に基づいて無申告を貫いていたとまで評価することはできないから、その無申告行為そのものとは別に、法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできない。そして、その他原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によっても、請求人が、法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めるに足りる事実はない。したがって、請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認めることはできない。
(5)結果
重加算税賦課を取り消す。
当該裁決のさらなる要約
・平成25年11月期、平成26年11月期、平成27年11月期、平成28年11月期、平成29年11月期の法人税が主に無申告であった
・登場人物は以下である
◎本件代表者E
◎本件代表者の妻
◎本件前代表者G
・本件前代表者Gや本件代表者の妻は、平成23年から平成28年頃にかけて税理士を探して行動していた。
・本件前代表者Gは一度資料は捨てた旨の発言をした。
・しかし、本件代表者Eはすぐに、収入や支出に関する資料を提示した。
・国税不服審判所は以下のように判断した
◎請求人は、漫然と無申告の状態を放置していたわけではなく、むしろ、申告をしようとしていたことがうかがえる。
◎本件前代表者の申述について、直ちに虚偽の答弁を行ったとまで評価することはできず、まして、この申述によって、請求人が無申告で済ませようとする態度を貫いたとか、本件調査に非協力的な態度をとったとか、本件調査を困難ならしめる状況を作出したなどと評価することもできない。
・「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認めることはできない。
弊所独自の考察
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりとはいえない、と弊所が感じた事例です。請求人は過去税理士に依頼して申告済みの年も存在し、申告義務は認識していたと解されるからです。
◎しかし、今回は無申告であるため隠ぺい仮装が認められなった可能性が高いと解されます。
◎当該裁決は、最高裁平成7年外部からうかがい得る特段の行動判決における、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用しています。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと明記されています。
◎当該裁決は、取引を把握できるような集計資料の保存については、一度は捨てた旨の発言をしたがその後提示した、との明記がありました。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、一時的に非協力であったが、その後協力的な時であったと明記されています。
◎当該裁決において、請求人の調査での虚偽答弁までは存在しない、と明記がありました。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
過去に申告経験済みで申告の必要性を認識しているとされる場合において無申告であったとしても重加算税賦課を回避できる可能性があります。(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)