(2023年12月12日作成)(2024年9月10日再編集)

結論

・除斥期間5年が7年に延長されるのは偽りその他不正の行為が6年目、7年目に存在していた場合であり、隠蔽又は仮装行為が存在していた場合ではありません。しかし税務調査の税務調査官は隠蔽又は仮装行為と偽りその他不正行為の差異を言及しない、またはそもそも理解してない可能性もあります。
・税理士鴻秀明は当該論点について明らかにすべきという意見を述べています。
・税理士鴻秀明の指摘を調べると確かに現在においても国税庁は延滞税の控除期間について重加算税賦課要件の隠ぺい仮装と偽りその他不正の行為を混同しているように解されます。
・国税不服審判所公表裁決隠ぺい仮装を認めなかった事例の中には、隠ぺい仮装は無かったが偽りその他不正の行為が存在するとした事例が存在しました
・国税不服審判所公表裁決隠ぺい仮装を認めなかった事例の中には、隠ぺい仮装が無ければ偽りその他不正の行為も存在しないとしてその差異を言及しなかった事例が存在しました。
・国税不服審判所まで争わない多くの通常の税務調査においては隠蔽仮装、偽りその他不正の行為の厳密な文言の解釈や分析はされることはなく、とにかく不正だ、として税務調査官にとって有利、納税者にとっては不利な主張が行われていると推測されます。

下記で詳細を記述します。

除斥期間5年が7年に延長されるのは偽りその他不正の行為が6年目、7年目に存在していた場合であり、隠蔽又は仮装行為が存在していた場合ではありません

税務調査の除斥期間になること等はこちらのページをご参考ください。

税務調査期間3年5年7年の違いと除斥期間

しかし税務調査の税務調査官は隠蔽又は仮装行為と偽りその他不正行為の差異を言及しない、またはそもそも理解してない可能性もあります。

税理士鴻秀明は当該論点について明らかにすべきという意見を述べています

鴻秀明『税務調査のガラパゴス化と重加算税』税務経理協会(平成25年3月20日)

・p74-75より、(3)税理士会、日本税理士会連合会税制審議会では「隠ぺい・仮装」と「偽りその他不正の行為」の関係について明確性を欠いていると指摘していますが、同審議会としての確立した見解は示されていません。(省略)「隠ぺい又は仮装の行為」は「偽りその他不正の行為」に含まれるとの見解が多数説となっています。
・p78-81より、何が問題なのか、延滞税に焦点をあてて検討します。国税庁のホームページ→申告・納税手続き→延滞税の計算方法で、延滞税の控除期間について、次の解説があります。

(注)  期限内申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には、法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除されます。
また、期限後申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には、その申告書提出後1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除されます。

重加算税を課された場合を除く、という文言に着目してください。(省略)しかし、延滞税の控除期間を定めた国税通則法第61条では「偽りその他不正の行為により国税を免れ」と規定されています。一方、国税庁のホームページ→税務大学校→税大講本→国税通則法では、延滞税の控除期間は「偽りその他不正の行為」があった場合、と説明しています。整理すると次のようになります。

国税通則法第61条の条文では、「偽りその他不正の行為」
国税庁の通達では、「重加算税」
国税庁のホームページでは、「重加算税」
税大講本では、「偽りその他不正の行為」

国税庁は、通達で法律の内容を変えてしまったのでしょうか。

p84より、税務署は長年にわたり、延滞税の計算期間の特例規定について、多くの事案で誤った処理を繰り返してきたのではないか、国税庁は誰もそれをもんだいとしてこなかったので黙認してきたのではないか、という疑念を拭い去ることができっません。
p85より、そのような疑念を払拭するのはとても簡単なことです。国税庁はが「隠ぺい・仮装」と「偽りその他不正の行為」との関係を明らかにし、それを公表すれば良いのです。

税理士鴻秀明の指摘を調べると確かに現在においても国税庁は延滞税の控除期間について重加算税賦課要件の隠ぺい仮装と偽りその他不正の行為を混同しているように解されます

下記の図をご参考ください。

(図1)国税庁ホームページ延滞税の計算期間

(図2)国税通則法 第61条 延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例

確かに

国税庁のホームページにおいては、重加算税を課された場合
国税通則法においては、偽りその他不正の行為により国税を免れた場合

となっており、税理士鴻秀明の指摘通りとなります。

国税不服審判所公表裁決隠ぺい仮装を認めなかった事例の中には、隠ぺい仮装は無かったが偽りその他不正の行為が存在するとした事例が存在しました

下記のページをご参考ください。

国税不服審判所公表裁決隠ぺい仮装を認めなかった事例の中には、隠ぺい仮装は無かったが偽りその他不正の行為が存在するとした事例が存在した

改めて簡潔にまとめると下記になります。

・これらの裁決事例は隠蔽仮装は存在せず重加算税は取り消された。
・しかし、偽りその他不正の行為が存在するとして長い期間で更正を受けた

国税不服審判所公表裁決隠ぺい仮装を認めなかった事例の中には、隠ぺい仮装が無ければ偽りその他不正の行為も存在しないとしてその差異を言及しなかった事例が存在しました

下記のページをご参考ください。

国税不服審判所公表裁決隠ぺい仮装を認めなかった事例の中には、隠ぺい仮装が無ければ偽りその他不正の行為も存在しないとしてその差異を言及しなかった事例が存在した

改めて簡潔にまとめると下記になります。

・これらの裁決事例は隠蔽仮装は存在せず重加算税は取り消された。
・そして隠蔽仮装が存在しなければ偽りその他不正の行為も存在しないとされた

まとめ

国税不服審判所まで争わない多くの通常の税務調査においては隠蔽仮装、偽りその他不正の行為の厳密な文言の解釈や分析はされることはなく、とにかく不正だ、として税務調査官にとって有利、納税者にとっては不利な主張が行われていると推測されます。