(2019年6月2日作成)(2023年7月20日再編集)(2024年9月6日再編集)
結論
弊所が導き出した結論は下記となります。
・税務調査官は、まず年間件数ノルマ達成のために素早く処理したいと考えている
・税務調査官は、素早く処理する中で追徴税額が多くとれればなおよいと考えている
・税務調査官は、素早く処理する中で不正を発見すること(重加算税を課すこと)があればさらに良いと考えている
・税務調査官は、上記が評価されて出世できればうれしいと考えている
・上記の考えはあくまで国税内部で秘めておく考えであって、世間には公表しない、したくないと考えている。
下記で詳細を記述します。
情報源
・書籍
・ネット
・事実として発生した事件
・事実として毎年公表されている調査の実績
なお遺憾ながら弊所は国税OB税理士は所属しておらず、直接的な体験談を語ることは出来かねます。
書籍の情報
・飯田真弓「税務署はやっぱり見ている」株式会社日経BP(2023年3月17日)より
〇p164-165、国税の組織の中では「税金をたくさん取ってきた者が出世するかという質問の答えはそうとは限らない」
〇p165、実務能力が出世に関係ないかというとそうとも言い切れない
〇p165、税務署でキャリアアップするためにはこの税務大学校で定められた研修をうける必要がある、
〇p165、研修を受けるためには選考試験に合格しなければなりません
〇p166、研修を受けられるかどうかの選考の際は、記述試験だけではなく、仕事に対する取り組み方も評価の対象に入ると予想できます。その意味では、たくさん税金を取ってきた職員のほうが評価がいいとなるかもしれません。出世に必須となる研修を受けられるかどうかの選考の際に、税務調査のでの成績も加味されるとすれば増差税額の多寡も出世に関係すると言えなくもない。
・大村大次郎「税務署対策最強の教科書」株式会社ビジネス社(2020年1月1日)より
〇p16、税務調査の本当の目的はそうではありません。本当の目的は追徴税を稼ぐことです。実は税務署の調査官というのは、追徴税をどれだけ稼ぐかで仕事が評価されます。
〇p19、私が現場にいたのは10数年前くらいなので、今は変わっているかもしれないとも思ったのですが、後輩の調査官に聞くと今も昔もまったく変わらないようです。国税庁は正式には税務署にはノルマなど課していないと言っていますが、追徴税をたくさんとってきたものが出世しているという現実がありますから、事実上ノルマはあると言えるのです。
・秋山清成「厳しい税務調査がやってくる続間違いだらけの相続税対策」中央経済社(2021年1月25日第1版)より
p50、勤務評定といいますのは、上司がこの職員はこんないい行動をしたとか、調査で何件も不正を見つけたとか、勤務の姿勢を1年間観察した結果をペーパーにまとめるんです。つまり税務署の昇任は、警察官みたいに昇任試験ではなくて、上司の人物評価で決まります。この勤務評定はもちろん日頃の勤務姿勢も大事なんですけど、税務署は税金を徴収するのが仕事ですから、一番重要なのは調査の成果なんです。調査の成果といいますのは、調査でどれだけ不正を見つけたとか、どれだけ使いの税金ととれたかというところなんですけど、しかし、税務調査官には会社の営業員さんみたいにノルマはないんです。(省略)くどいですが税務調査官にノルマはありません。しかし例えば、相続税の調査事案でしたら1年間に約8件から10件くらいが割り当てられますからこれを期間内に処理しなければなりません。これには相当なプレッシャーを受けますから、1つの事案にあまり時間をかけたくないというのも本音です。
・久保憂希也「社長、御社の税金は半分にできる!」(2012年1月30日第1刷)より
〇p125、国税調査官にはノルマがあります。こう書くとやっぱり追徴税額でノルマがあるんだなと思われがちですが、違うのです。国税調査官のノルマは税務調査の件数です。この半年や1年で○○件の税務調査をやりなさいというノルマなのです。(省略)ノルマが税務調査の件数だけならあれほど追徴税を欲しがらなくてもいいのではと思われるかもしれませんが、国税調査官にはノルマとは別に評価があるのです。国税調査官の評価はズバリ増差所得です。(省略)ほかの国税調査官よりも多くの誤りや不正を見つけたら評価が高い=出世するという単純な構造なのです。
ネット上の情報
増差金額及び追徴税額にノルマは無いが、調査件数にノルマはある、という記述が多く見受けられました。
調査官が「脱税行為を指摘すれば評価が上がり出世できると思った」と話した広島国税局・偽課税通知書作成事件
・2008年5月広島国税局の若手調査官が、企業が脱税行為などをしたように装った文書を捏造(ねつぞう)し、必要のない課税をしたとして、虚偽公文書作成・行使の疑いで広島地検に書類送検された。
・調査官は「脱税行為を指摘すれば評価が上がり、出世できると思った」と話している
・発覚しないよう、各企業に送った重加算税などを求める偽の通知書を「誤送付だった」と回収していた。重加算税など計約33万円は自分で納付していた。
事実として毎年公表されている調査の実績
下記をご参考ください。
・個人所得税及び個人消費税の税務調査等データ
・法人税及び法人消費税の税務調査等データ
国税庁は毎年
・調査の件数
・追徴税額の金額等
を公表しています。当然ながら見栄えの良い成績を公表したいことでしょう。そうすることこれらを目標としていると考えることは自然でしょう。
上記より導いた弊所独自の見解
税務調査官が目指す成績
極端な例を挙げれば下記となります。
・税務調査達成件数1件で追徴税額1億円(1件×1億)の成績の調査官A
・税務調査達成件数100件で追徴税額1億円(100件×100万円)の成績の調査官B
税務署の調査官は「上記のB」を目指していると考えられます。ラッキーでゲットした1件の高額追徴税額よりも、効率よく件数をさばき、さらに高額追徴税額を達成した調査官が評価されるのは当然でしょう。
税務署調査官が好む納税者のランキング
1位:不正をした納税者で重加算税賦課等に対して従順であり修正申告に応じる納税者
2位:不正無しの納税者で加算税賦課等に対して従順であり修正申告に応じる納税者
3位:不正をした納税者だが重加算税賦課等に対して取消交渉を求める納税者
4位:不正無しの納税者で加算税賦課等に対して減額交渉を求める納税者
上記の1位に関しては当然と考えられます。しかし、2位と3位はどうでしょうか。「1位の不正をした納税者で重加算税賦課等に対して従順であり修正申告に応じる納税者」がひるがえって「ごねる」とおそらく、3位の不正をした納税者だが重加算税賦課等に対して取消交渉を求める納税者までランクダウンします。加算税の金額は少額だが従順な2位の方が税務署調査官は好むでしょう。
つまり、税務署調査官は不正をしてくれた納税者は初めは好むのだが、そこからごねる納税者は処理速度に影響するため嫌いになっていく、と解されます。
税務調査官の狙いを踏まえれば、調査開始後の交渉については税務調査を妨害しない範囲でごねることが、調査開始後の唯一の防御策かもしれません
・税務署調査官は追徴税額を狙っている
・それと同時に早期終了も狙っており、長期化は望んでいない
これらのことを踏まえると
・判断が明らかな部分についてごねることは妨害として望ましくないが、税務調査官は長期化及び修正申告ではない更正を嫌がるので、判断が曖昧な部分についてはなるべくごねることが防御策になるかもしれません。
まとめ
・税務署は追徴課税を多くとりたいと考えているものの、早く終わらせたいとも考えています。
・そのあたりを考えながら納税者は交渉すべきと解されます。
過少申告かつ偽りその他不正の行為、隠ぺい仮装に心当たりがある方で調査通知があった方、あきらめないでください、調査通知後から調査日の前日までに自主修正申告をすれば重加算税を回避できることが国税通則法第68条1項に定義づけられています!(こちらの解説ページをご参考ください)
税務署から電話があっても慌てないでください!調査開始前であればまだ対応策は残されております。弊所にご連絡ください!