(2023年11月14日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

平成30年9月3日裁決のオリジナルのあだ名

平成30年第三者が行った不正な不動産所得等確定申告については納税者の行為と同一視できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1) 事案の概要
・本件は、平成28年中に賃貸用の不動産を取得した審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該不動産の販売を代理した法人(いわゆる不動産売買仲介会社)の従業員により作成された平成27年分の所得税等の確定申告書等を提出したところ、原処分庁が、請求人が平成27年中に当該不動産を取得したかのように装った確定申告書等を当該従業員らに作成させ、それらを提出したとして、所得税等の重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該確定申告書等は当該従業員らが独断で作成したものであり、請求人に仮装行為はないなどとして、当該賦課決定処分の全部の取消しを求めた事案である。
・請求人は、会社員である。
・F社は、不動産の売買等を目的とする法人である。
・G社は、平成27年及び平成28年において、F社が行うマンションの分譲販売の代理人として、顧客の勧誘から契約の締結に至るまでの手続の一切を受任していた。
・請求人は、平成28年1月28日、G社の従業員であったK及びL銀行○○支店の融資担当者と面談し、請求人を買主、F社を売主、G社を売主代理人として、売買代金の全額の支払を所有権の移転及び物件の引渡しの条件とする旨の本件各不動産に係る売買契約(以下「本件各売買契約」という。)を締結するとともに、請求人を貸主、G社を借主として、賃貸借開始日を同日とし、毎月の賃料の支払を翌月25日とする旨の本件各不動産に係る建物賃貸借契約(本件各売買契約と併せて、以下「本件各売買契約等」という。)を締結した。
・また、請求人は、本件各売買契約等の締結に併せて、請求人を借主、L銀行を貸主、融資の実行希望日を平成28年1月29日とする金銭消費貸借契約を締結し、本件各不動産を購入するための資金の借入れの手続を行った。
・請求人は、平成28年1月29日、F社に対し、借入れの手続によって融資を受けた借入金を原資に、本件各売買契約に基づく売買代金の全額を支払い、F社から本件各不動産の引渡しを受けた。
・請求人は、平成28年1月29日、本件各不動産について、同日の売買を登記原因とする所有権移転登記の手続をした。
・Hは、G社の経理課長であったMに対し、請求人の本件各不動産の取得時期及び賃貸開始時期を平成27年に前倒しして、請求人の平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下、これらを併せて「所得税等」という。)の確定申告書並びに不動産所得に係る収支内訳書を作成するよう指示又は依頼した。
・Mは、請求人が本件各不動産を取得したのは平成28年1月であることを知りつつも、Hからの上記指示又は依頼に従い、本件各不動産の取得時期及び賃貸開始時期をいずれも平成27年12月とする請求人の平成27年分の所得税等の確定申告書及び不動産所得に係る収支内訳書(当該確定申告書と併せて、以下「本件申告書等」という。)を作成し、これらをHに交付した。
・Hは、平成28年4月頃、請求人に対し、本件申告書等のほか、本件申告書等に押印の上、税務署へ提出するよう教示する旨の書面等を同封した封書を郵送した。
・処分の日←平成29年7月3日
・調査の日←不明
・所得税調査の対象となった期間←平成27年分←法定申告期限平成28年3月15日←処分日から2年以内
(2)争点
G社の従業員(H、M)が本件申告書等を作成し、請求人が本件申告書等に押印して原処分庁に提出したこと(以下、これら一連の行為を併せて「本件各行為」という。)は、通則法第68条第1項の賦課要件を満たすか否か。
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明確な明記はありませんが、最高裁平成18年4月20日判決=オリジナル命名:最高裁平成18年税理士の不正行為を納税者と同一視できない判決、を引用したと解されます。
(4)争点の審判所の判断
・請求人は、Hから、平成27年分の所得税等の還付申告が可能である旨の説明を受け、これに対して全く疑問を抱くこともなく、そのようなものかと理解したというのであるから、単に所得税法の知識が不足していたというほかなく、Hに対して虚偽の内容の申告書等の作成を持ち掛けたなどと認められないことはもとより、当該説明を受けたことをもって、同人との間で不正な申告をすることを共謀したものと認めることもできない。
・請求人は、本件申告書等に自ら押印して原処分庁へ提出した事実は認められるものの、本件申告書等の受領から提出に至るまでの間に、本件申告書等の記載内容を確認した事実を認めることはできない上、上記イのとおり、還付申告が可能である旨のHの説明に疑問を抱くこともなかったのであるから、請求人をして、G社の従業員が虚偽の内容の本件申告書等を作成した行為を追認したと認められないことはもとより、本件申告書等に事実と異なる内容が記載されていることを認識していたとか、それを予想することができたと認めることもできない。
・むしろ、請求人が、本件調査担当者の指摘を受けて初めて、本件申告書等を提出した行為が違法であると理解したことも併せ鑑みると、請求人は、Hから受領した本件申告書等に何ら疑問を差し挟むこともなく、これらを適正なものと誤認し、同人から促されるまま、本件申告書等を提出したにすぎないと認められる。
・以上のことからすれば、G社の従業員が本件申告書等を作成した行為は、請求人の行為と同視することはできないから、本件各行為は、通則法第68条第1項の賦課要件を満たさないといわざるを得ない。
・原処分庁の主張について
◎原処分庁は、請求人がHに対し、本件各不動産の取得時期を平成27年に前倒しした申告書の作成を本件各売買契約の条件として提示し、G社の従業員らに虚偽の内容の本件申告書等を作成させた旨主張し、本件においては、Hが、本件調査担当者に対して原処分庁の上記主張に沿う申述をした事実が認められる。
◎しかしながら、Hは、上記申述をした後、本件調査担当者に対し、請求人は本件申告書等について何も知らず、G社が勝手に手続を行った旨申述した事実も認められ、当審判所に対しては、G社の従業員が勝手に気を利かせて本件申告書等を作成したようである旨の答述を行っているなど、Hの上記各申述及び答述は、一貫性に欠ける上、これら申述等が変遷したことにつき合理的な説明をするわけでもなく、その信用性を認めることはできない。

(5)結果
所得税平成27年分の重加算税を取消す。

当該裁決のさらなる要約

・請求人は会社員であり確定申告の知識は無知でした。
・請求人は平成28年の取引にも関わらず平成27年の取引として前倒しして還付を受けることができるというHの質問に疑問は持たず、同人から促されるまま、本件申告書等を提出したにすぎなかった。
・原処分庁は、当該不正行為は請求人からHへ虚偽の通謀を持ち掛けたと主張したが、認められなかった。

弊所独自の考察

・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は、申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。なぜなら、請求人は確定申告について無知でありHにすべて任せていたところ、Hが独断で行った不正行為について原処分庁が請求人から持ち掛けたと主張したことはいいがかりである、と感じたからです。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
納税者が確定申告を委任した第三者が不正を行った場合には、当該不正行為は納税者の行為と同一視できないと否定することで重加算税を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)