(2023年11月15日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる
平成30年9月27日裁決のオリジナルのあだ名
平成30年居住用財産譲渡特別控除の適用及び適用理由答弁について隠ぺい仮装は認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・本件は、共同審査請求人E(以下「請求人E」という。)及びG(以下「請求人G」といい、請求人Eと併せて「請求人ら」という。)が、3棟の建物の敷地の用に供されていた請求人ら共有の土地を更地にして譲渡したことによる譲渡所得について、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を適用して所得税等の確定申告をしたのに対し、原処分庁が、2棟の建物は請求人らが居住の用に供していなかったからその敷地部分については当該特例を適用できず、また、請求人Eが虚偽答弁をしたなどとして所得税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分等をしたところ、請求人らが、3棟の建物は併せて一構えの家屋で全てが請求人らの居住の用に供していた家屋に該当するから敷地の全てに当該特例を適用でき、また、請求人Eが虚偽答弁をした事実はないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
・請求人Eは、社会保険労務士で、請求人Gは、年金受給者で、Eの母親であった。
・請求人らが共有する土地(「本件土地」)の共有持分は、請求人Eが5分の3、請求人Gが5分の2であった。
・本件土地の上には、本件母屋と本件別棟Aと本件別B棟の3棟の建物があった。(本件別棟Aと本件別B棟を併せて「本件各別棟」という。また本件母屋及び本件各別棟を併せて「本件各建物」という。)
・本件各別棟は、いずれも昭和39年に賃貸の用に供する目的で建築された木造瓦葺平屋建ての共同住宅であり、構造上中央で2等分されて、独立した二つの区画に仕切られていた(以下、本件別棟Aにある区画を「本件居宅A」及び「本件居宅B」といい、本件別棟Bにある区画を「本件居宅C」及び「本件居宅D」といい、本件居宅Aないし本件居宅Dを併せて「本件各居宅」という。)。
・請求人らは、平成27年6月18日付で、J社に対して、不動産売買契約を締結した(以下、これらの売買契約を併せて「本件各譲渡契約」といい、その契約書を「本件各譲渡契約書」という。)。
・請求人Eは、平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、分離長期譲渡所得の金額の計算上、措置法第35条第1項の規定による居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(以下「本件特例」という。)を適用して、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した(以下、請求人Eが申告した平成27年分の所得税等の確定申告書を「本件申告書A」という。)。なお、本件申告書Aの「税理士署名押印」欄に、署名及び押印はない。
・請求人Gは、平成27年分の所得税等について、分離長期譲渡所得の金額の計算上、本件特例を適用して、確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限後の平成28年4月7日に申告した(以下、請求人Gが申告した平成27年分の所得税等の確定申告書を「本件申告書B」といい、本件申告書Aと併せて「本件各申告書」という。)。なお、本件申告書Bの「税理士署名押印」欄に、署名及び押印はない。
・なお、法定申告期限後でも本件特例の適用は可能である。
・処分日←平成29年7月14日であった。
・調査日←平成28年8月5日であった。
・請求人E及びGの所得税調査対象期間
◎調査対象期間←平成27年分←法定申告期限平成28年3月15日←処分日平成29年7月14日から2年以内
(2)争点
・争点1(本件土地のうち本件特例を適用できる範囲は、全てか一部か。)について
・争点2(請求人らの行為は、通則法第68条第1項及び第2項の各賦課要件をそれぞれ満たすか否か。)について
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記はありませんが、最高裁平成7年4月28日判決=オリジナル命名:最高裁平成7年積極的な隠蔽なしの無申告だが当初から過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動をした判決の、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用したと推測されます。
(4)争点の審判所の判断
◎争点1(本件土地のうち本件特例を適用できる範囲は、全てか一部か。)について
・本件特例は、個人がその居住の用に供している家屋又は当該家屋の敷地の用に供されている土地等を譲渡するような場合には、これに代わる新たな居住用財産を取得するのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があり、担税力も高くない例が多いことなどを考慮して設けられた特例措置であると解される。
・個人がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、本件特例の適用対象となる家屋は、これらの家屋のうち、その者が主として居住の用に供していると認められる一の家屋に限るものとする旨規定している。
・二以上の家屋が併せて一構えの家屋であるといえるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人 及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。
・本件母屋は、居住用家屋としての機能を有し、請求人らがそこで日常生活を営んでいた。
・本件各別棟は、木造瓦葺平屋建てで、当初は賃貸用家屋として建築され、本件各居宅の面積はいずれも約29
程度で、それぞれが2部屋の居室、風呂場、トイレ、台所及び玄関を有し、電気、水道及び固定電話回線等の各設備が備わっていたこと並びにプロパンガスの供給を受けることができたことが推認される。
・これらの本件各建物の規模、構造、間取り、設備、本件母屋と本件各別棟との距離並びに通常考えられる用法及び機能等を考慮すれば、本件各建物はそれぞれ独立して居住の用に供し得る機能を有する居住用家屋であることが認められる。
・したがって、本件特例の適用の前提となる家屋は、請求人らが日常生活を営んでおり、主として居住の用に供していた本件母屋に限られる。
・本件母屋の敷地の用に供されていた部分の範囲を、塀や障壁等によって特定することはできない。
・本件名寄帳によって本件各建物の課税床面積を把握することは可能であるから、当該課税床面積を用いて計算することが合理的である。
・本件土地のうち、本件特例が適用される範囲は、本件母屋の敷地に相当する部分であり、その面積は、本件土地の面積に本件特例適用割合を乗じた面積である。
◎争点2(請求人らの行為は、通則法第68条第1項及び第2項の各賦課要件をそれぞれ満たすか否か。)について
・原処分庁と請求人らの間において、請求人らの行為には、いわゆる積極的な隠蔽又は仮装の行為がない点については争いがない。
・請求人Eは、原処分庁に対して平成28年9月29日付で提出した文書において本件各居宅は、譲渡直前において物置として利用していた旨を述べており、それ以降、本件調査報告書及び本件提出文書に記録又は記載されている内容からしても、一貫して同旨を述べている。
・そして、本件居宅Aには平成27年7月に行われた本件解体工事の直前まで本棚、座卓、額縁及び書籍の束が置かれていたことや、本件解体業者は、本件各建物から4t(トン)車で合わせて3台分にも及ぶ大量の「生活ごみ」を撤去したことが認められる。
・これらの状況からすれば、本件居宅B、本件居宅C及び本件居宅Dにも、本件解体工事以前に、本件居宅Aと同様、請求人らの荷物や不用品が保管されていた可能性が高いというべきであって、そうすると、請求人Eが本件各居宅を物置として利用していた旨述べている平成28年9月29日付の当該提出文書の内容には信用性があり、請求人らが、本件各居宅を物置として利用していたものと認めるべきであって、審判所の調査を踏まえても、この事実を覆すに足りる証拠は見当たらない。
・請求人Eは、社会保険労務士であるものの、税の専門家ではなく、本件申告書Aを原処分庁に提出した時点では本件税理士法人に関与の依頼をしておらず、その助言等を受ける機会がなかったのであるから、請求人Eが本件申告書Aを原処分庁に提出した時点で本件特例の対象となり得る「居住の用に供している家屋」の範囲を正しく理解していたのかという点については疑問を持たざるを得ない。
・以上によると、請求人Eは、本件各居宅を物置として利用していれば、本件各建物が一体として自己の居住の用に供する家屋に該当すると誤解し、本件土地の全体に本件特例を適用して申告をした可能性があるといわざるを得ない。
・請求人Gは、本件調査への対応を請求人Eに委任していたところ、当審判所の調査によっても、請求人Gについて請求人Eと格別に判断すべき事情は認められないことから、請求人Eに上記意図が認められない以上、請求人Gについても上記意図があったとは認められない。
・原処分庁は、本件調査の際、請求人Eが原処分庁に対し、本件各居宅が自己の居住用家屋であったなどと真実と異なる虚偽の答弁をした旨主張する。
・しかし、記憶の曖昧さや質問に関する認識の相違として説明できる程度であり、本件調査担当職員が請求人Eに対して、どの程度具体的に質問し、それに対し請求人Eがどのような回答をしたのかが明確でなく、両者の認識が相違していた可能性も否定できないことから、請求人Eが原処分庁に対し、真実と異なる虚偽の答弁をしたとまでは認められないし、本件調査報告書における請求人Eの答弁が虚偽であると認めるに足る証拠もない。
・原処分庁は、本件調査における請求人Eの原処分庁に対する答弁の内容や本件提出文書によって、主張を変遷させるなどして本件調査を困難にさせた旨主張する。
・しかし、本件調査報告書及び本件提出文書における一連のやり取りを見比べても、答弁の内容を変遷させたとまで認められるような記載は見当たらない。
・原処分庁は、たとえ隠蔽又は仮装の発現とみられる行動が納税申告書提出後又は法定申告期限経過後にしかなかったとしても、その発現行為自体から、納税申告書提出時又は法定申告期限経過時における過少申告の意図が推認されるときは、特段の事情が認められない限り、当該発現行為は当初からの内心の意図に基づくものと推認され、重加算税の賦課要件を充足すると解すべきである旨主張する。
・しかしながら、請求人Eの本件申告書A提出後の言動及び本件提出文書の記載に、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動と評価すべき事実があったとは認められないことから、納税申告書提出後又は法定申告期限経過後に隠蔽又は仮装の発現とみられる行動があったとは認められない。
・以上のとおり、請求人Eが当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告をしたものとは認められないから、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。
・さらに、請求人Gは、本件調査への対応を請求人Eに委任していたところ、当審判所の調査によっても、請求人Gについて請求人Eと格別に判断すべき事情は認められないことから、請求人Eの行為が通則法第68条第1項の賦課要件を満たさない以上、請求人Gについても同条第2項の賦課要件を満たすとは認められない。
(5)結果
・調査対象期間←平成27年分←請求人E、請求人Gの重加算税賦課を取り消す。
当該裁決のさらなる要約
・請求人E及び請求人Gが共有して所有している大きな敷地において、母屋、居宅A、居宅Bが建っており、請求人E及び請求人Gは当該敷地を売却して、当該敷地全体について居住用住宅譲渡所得特別控除の特例を適用させた。
・原処分庁は、まず当該特例は全体には適用できず主たる居宅に対応する部分のみであると主張し、また全体には適用できず主たる居宅に対応する部分のみしか適用できないことを知りながら申告書を提出したことは隠ぺい、仮装に当たると主張しました。
・国税不服審判所はまず当該特例は全体ではなく、母屋に対応する部分のみとしました。
・また国税不服審判所は、請求人E及び請求人Gが当該特例が全体に適用されると誤解した可能性がある、母屋以外の居宅A、居宅Bは物置として使用していたという発言は虚偽には当たらず、隠ぺい、仮装は無かったとしました。
弊所独自の考察
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は、所得税が申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。なぜなら、納税者は自身にとって有利なように税法を解釈するところ、今回は敷地全体に適用されるかそれとも一部のみか判断に迷いながら、全体と判断して当初申告を行ったにすぎないと思われます。有利な方を選択しようとチャレンジしたことが、不利な方だと知りながら行ったため隠ぺい仮装であるという原処分庁の主張はいいがかりであると感じたからです。
◎当該裁決は、最高裁平成7年外部からうかがい得る特段の行動判決における、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用しています。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。しかし、原処分庁は物置として使用していた等の請求人の発言を虚偽の答弁であると主張しました。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
納税者に有利な特例を選択したこと選択した理由についての発言に対して隠ぺい仮装があったと主張された場合には、隠ぺい仮装を否定すれば重加算税を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)