(2023年11月13日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる
平成30年1月11日裁決のオリジナルのあだ名
平成30年申告の必要性が明記されている資料を受け取ったにも関わらず無申告であっても質問応答記録書の内容だけでは隠ぺい仮装を認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
用語の意味
・換地とは、土地区画整理法に基づく土地区画整理事業によって、従前の宅地を造成・整形化し、その地権者に対し、新たに交付される宅地のことを言います。
・不換地(ふかんち)とは、従前地に対して換地を定めず(元の権利者は新しい土地を取得せず)、金銭(補償金)清算することを言います。
裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、土地区画整理組合から交付を受けた換地不交付に対する清算金について、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、法定申告期限後に所得税及び復興特別所得税の確定申告書を提出したところ、原処分庁から重加算税の賦課決定処分を受けたため、請求人には隠ぺい又は仮装と評価できる行為はないとして、当該処分のうち無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。
・a市b町土地区画整理組合(以下「本件組合」という。)は、土地区画整理組合であり、a市b町字dなどを施行地区として、a市b町土地区画整理事業(以下「本件事業」という。)を施行した。
・請求人は、本件事業の施行地区に、別表1の順号1ないし6の各土地を所有していた。
・請求人は、本件組合が行った土地区画整理法第103条《換地処分》に規定する換地処分により、別表1の順号5及び6の各土地については、換地処分後の土地を取得した。
・換地不交付の同意をした別表1の順号1ないし4の各土地については、平成27年4月30日に、同法第110条《清算金の徴収及び交付》第1項に規定する清算金(以下「本件清算金」という。)を、D信用金庫○○支店の請求人の名義の普通預金口座(以下「本件口座」という。)への振込入金により受領した。
・請求人は、本件組合の理事長名で送付された平成27年7月31日付の「清算交付金に伴う確定申告について(お知らせ)」と題する書面(以下「本件お知らせ」という。)及び本件清算金に係る「平成27年分不動産等の譲受けの対価の支払調書」(以下「本件支払調書」という。)を受領した。本件お知らせには、本件清算金は分離譲渡所得に該当するため、平成27年分の所得税の確定申告の手続が必要である旨などが記載されていた。
・また、本件支払調書には、「支払いを受ける者」欄に請求人の住所及び氏名、「換地処分を受けた年月日」欄に平成○年○月○日、並びに「交付された清算金額」欄に本件清算金の額がそれぞれ記載されているほか、「摘要」欄に土地区画整理法第90条による換地不交付である旨や譲渡所得等の課税の特例の適用はない旨などが記載されていた。
・請求人は、平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の確定申告書を、法定申告期限までに提出しなかった。
・調査日←平成28年10月31日
・処分日←平成29年1月31日
・調査対象期間←平成27年分←法定申告期限平成28年3月15日←処分日から1年以内
(2)争点
請求人が法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったことについて、重加算税の賦課要件を満たすか否か。
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記はありませんが、最高裁平成7年4月28日判決=オリジナル命名:最高裁平成7年積極的な隠蔽なしの無申告だが当初から過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動した判決における、外部からうかがい得る特段の行動を引用したと推測されます。
(4)審判所の判断
・まず、請求人が、本件清算金について、所得税等の課税の対象となり、所得税等の確定申告を要し、これにより算出された税額を納付しなければならないと認識していたことについては、原処分庁及び請求人との間に争いはない。
・請求人が、平成28年2月か3月頃、確定申告会場に行った際、本件清算金を受領した事実を秘匿するために、あえて本件お知らせや本件支払調書を持参せず、本件清算金に係る所得税等の確定申告に関する相談さえしなかったとの事実が認められるとし、当該事実は、同旨の請求人の申述に基づき認められる旨主張する。確かに、本件調査担当職員が作成した平成28年11月1日付の質問応答記録書には、請求人が原処分庁の主張する事実と同じ内容を申述した旨の記載があり、請求人が読み聞かせを受けた上で当該質問応答記録書に署名押印したことが認められ、また、請求人 が重加算税の賦課を前提とした所得税等の予納をしたのは、請求人が上記の申述内容を認めていたからこその行動とも考えられる。
・しかしながら、請求人は、当審判所に対して、確定申告会場に本件清算金に係る資料が入った封筒を持参した旨答述し、上記申述の内容を否定しているところ、上記質問応答記録書における請求人の申述内容をみると、そもそも何のために確定申告会場に行ったのかという点が明らかではないし、本件お知らせや本件支払調書を持参しなかった理由も「国民健康保険料が上がっていたので」としかされていないなど、合理性、具体性に乏しく、本件清算金を受領した事実を秘匿するために、あえて本件お知らせや本件支払調書を持参しなかった旨の申述が直ちに信用できるとはいえない。そして、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人が訪れたとする確定申告会場や対応者等を特定することさえできず、請求人の当該申述を裏付ける客観的な証拠も認められない。
・そうすると、上記質問応答記録書に記載された請求人の申述が信用できると判断する根拠がない。
・請求人は、平成28年10月31日の本件調査の当初から、平成27年中に本件清算金を本件口座への振込入金により受領したことを認めた上で、本件清算金を含む本件事業に係る書類をまとめて入れている封筒の中から取り出した「清算金通知書」などの本件清算金の額が分かる書類や、別途保管していた本件口座に係る預金通帳を提示し、また、一旦は、上記の提示した書類等で本件清算金の額等の確認はできるなどとして、当該封筒を提示することを拒んだものの、結局、その日のうちに当該封筒ごと提示したというのである。
・そうすると、平成28年10月31日の本件調査の全体をみたときに、請求人が、本件清算金を受領した事実やそれに関する本件お知らせ等の資料について隠ぺいしようとする態度を一貫してとっていたとか、調査に非協力的な態度をとったとまではいえない。
・請求人は、本件お知らせ及び本件支払調書を含む本件清算金に係る書類を廃棄するなどの行為をしていない。
・請求人は、本件口座に本件清算金が振り込まれた平成27年4月30日以降本件調査が開始された平成28年10月31日までの間において、本件口座から特段多額の出金はなく、本件清算金を受領した後、これを隠匿しようとするような行為をしていないことがそれぞれ認められる。
・その他、当審判所の調査によっても、請求人が、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、当該意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたことをうかがわせるような事実は認められない(なお、仮に、請求人が主張するように、確定申告会場に行った際、本件清算金に係る資料を持参したものの、本件清算金についての相談をしなかったとしても、当該意図を外部からもうかがい得る特段の行動と評価することはできない。)。
・以上検討したところによれば、請求人が、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められない。
(5)結果
調査対象期間である平成27年分←重加算税を取消す
当該裁決のさらなる要約
・請求人が受け取った本件お知らせには、本件清算金は分離譲渡所得に該当するため、平成27年分の所得税の確定申告の手続が必要である旨などが記載されていた。
・請求人は確定申告書会場に行ったが、資料は持参しなかった。なぜ申告会場に行ったか、なぜ資料を持参しなかったかは不明です。
・原処分庁は質問応答記録書を作成した。
弊所独自の考察
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は、無申告でした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりとはいえない、と弊所が感じた事例です。なぜなら、本件清算金は分離譲渡所得に該当するため、平成27年分の所得税の確定申告の手続が必要である旨などが記載された本件お知らせを受け取っていたからです。
◎しかしながら、無申告の場合は隠ぺい仮装がなかったとされる傾向があるため、原処分庁は質問応答記録書によって隠ぺい仮装を創作しようとしたようにも見受けられます。
◎当該裁決は、最高裁平成7年外部からうかがい得る特段の行動判決における、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用しています。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、非協力的な態度をとったとまでは言えない、と明記がありました。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
明らかに申告の必要性が明記されている資料を受け取っているにも関わらず無申告であっても隠ぺい仮装は無かったと主張すれば重加算税を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)