更正の予知とは
(2026年1月20日更新)
結論
・調査通知の段階では更正の予知は無いと解されます。
・調査通知の段階における更正の予知の有無について、国税庁は原則として更正の予知無し、と公表しています。
・国税不服審判所公表相続税裁決は、調査通知後から調査開始日までにおける納税者の自主的な申告は奨励されるべきと述べています。
・更正の予知有り=調査着手説が有力ですが、開示請求により取得可能な国税庁の内部資料である、資料第3-2号実地調査マニュアル(調査初任者用)令和4年8月4日、は「端緒把握説≒客観的確実性説」を参考として記述しています。いずれにせよ納税者及び税理士は事前自主修正申告については調査着手説に基づいて行動するしかないと考えます。
・税務調査官へ事前自主申告する旨は伝えるべきではありません。
以下で詳細を記述します。
調査通知の段階における更正の予知の有無について
調査通知の段階では更正の予知は無いと解されます。
・一つ目の根拠は、更正の予知について言及している国税庁の事務運営指針が存在します
・二つ目の根拠は、国税不服審判所公表相続税裁決が述べた法の趣旨からすれば、調査通知後から調査初日の前日までに自主修正申告が可能な期間を設けなければ、法の趣旨に沿わない、と解されるためです。
根拠1:更正の予知について言及している国税庁の事務運営指針
・申告所得税及び復興特別所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針) 、第1の1(注)
・法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)、第1の1(注)
・消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)、第2のⅡの1(注)より、
(修正申告書の提出が更正があるべきことを予知してされたと認められる場合)
2 通則法第65条第1項又は第5項の規定を適用する場合において、その法人に対する臨場調査、その法人の取引先の反面調査又はその法人の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該法人が調査のあったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合の当該修正申告書の提出は、原則として、これらの規定に規定する「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当する。
(注) 臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当しない。
上記のように、「税務調査のための日時の連絡を行った段階で提出された修正申告書は原則として更正を予知してされたものに該当しない、つまり更正の予知無しで提出されたものである」と明記されています。
根拠2:国税不服審判所公表相続税裁決が述べた法の趣旨
国税不服審判表公表相続税裁決において、税務調査開始前事前自主修正申告に関する重要な裁決が存在します。
まず当該裁決の重要な前提条件としては以下となります
・当該裁決は、国税通則法平成28年(2016年)改正による平成29年1月以降に法定申告期限が到来するものについては調査通知後かつ更正の予知前の自主修正申告について過少申告加算税が課されることなる前の、平成28年7月に税務調査が行われた平成26年に法定申告期限が到来する相続税の税務調査の事例です。
・したがって当該裁決当時は、調査通知は存在せず事前通知のみが存在していました。
・したがって当該裁決当時は、事前通知後かつ更正の予知前であれば過少申告加算税が賦課されず、重加算税も賦課されないという制度でした。
上記の前提で、国税不服審判所は以下のように判断を明示しました。
当該裁決当時の旧国税通則法65条第5項が、事前通知後かつ更正の予知前であれば過少申告加算税が賦課されない旨を規定しているのは、課税庁において課税標準を調査する等の事務負担等を軽減することができることも勘案して、自発的に修正申告を決意し修正申告書を提出した者に対しては例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税者の自発的な修正申告を奨励することを目的とするものと解される。
つまり以下のように言い換えることが可能と解されます。
・調査通知後から更正の予知前に納税者が自発的な修正申告を提出することは、課税庁においても事務負担等が軽減されるというメリットが存在するはずである。
・したがって、むしろそのような修正期間を設けないと法の趣旨に反することになるはずである。
以上から弊所は、調査通知の段階では更正の予知は存在しない、発生しない、と解しております。
酒井克彦「裁判例からみる税務調査」p439において、
・和歌山地裁昭和50年6月23日判決
・東京地裁昭和56年7月16日判決
においても同様の趣旨を述べているとの記述がありました。
では更正の予知はいつ発生するのか?
弊所は更正の予知について調査着手説を採用することが妥当すると解しております。
・更正の予知について言及している国税庁の事務運営指針は、調査着手説とも端緒把握説ともとれるような文章となっております。
・調査着手説が妥当すると述べている書籍が多く散見されます。
・国税は、資料第3-2号実地調査マニュアル(調査初任者用)令和4年8月4日、は端緒把握説を参考として記述しているため、端緒把握説を採用している可能性があります。
・しかし、実務上は「いつ端緒を把握したかを認識することは困難」であるため調査着手説を採用するしか方法がない、と解されます。
まず税務調査の段階は以下のフェーズに分解できると考えられます。
①調査通知(税務調査をしたい旨の連絡)があった段階
②税務調査の初日(調査着手説)
③税務調査中(端緒把握説≒客観的確実性説)
調査着手説とは、実地調査が開始された後の修正申告は更正を予知してされたものであるとして加算税が課せられるべきと考える見解です。
端緒把握説は、単に税務職員が調査を開始したというだけでは更正の予知があったと考えるのではなく、当該職員が何らかの非違の端緒となるものを発見する段階より前に提出された修正申告は更正を予知して提出された修正申告ではないとする見解です。
客観的確実性説は、酒井克彦「裁判例からみる税務調査」p443より、端緒把握説の文脈である説、と記述があります。
更正の予知について言及している国税庁の事務運営指針
・申告所得税及び復興特別所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針) 、第1の1(注)
・法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)、第1の1(注)
・消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)、第2のⅡの1(注)より、
(修正申告書の提出が更正があるべきことを予知してされたと認められる場合)
2 通則法第65条第1項又は第5項の規定を適用する場合において、その法人に対する臨場調査、その法人の取引先の反面調査又はその法人の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該法人が調査のあったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合の当該修正申告書の提出は、原則として、これらの規定に規定する「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当する。
(注) 臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当しない。
上記の国税庁の事務運営指針は、調査着手説とも端緒把握説ともとれるような文章となっております。
書籍の記述
・酒井克彦「裁判例からみる税務調査」p445、基本的には、更正の予知の解釈に当たっては、端緒把握説が妥当するとしつつも、調査着手説の考え方をも包含した解釈を採る立場に妥当性を見出しうる、と記述がありました。
・谷口勝司・奥田芳彦「詳細加算税通達と実務」p53、実務上は調査開始後に提出された修正申告書については、原則として納税者が更正があるべきことを予知して提出したものとして取り扱っているところである、と記述がありました。
以上から書籍は、調査着手説、が妥当すると述べていると解されます。
資料第3-2号実地調査マニュアル(調査初任者用)令和4年8月4日
資料第3-2号実地調査マニュアル(調査初任者用)令和4年8月4日のp81は、参考として以下を記述しています。
「更正があるべきことを予知されたものでないとき」とは、税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階(いわゆる「客観的確実時期」)に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識したうえで修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないことをいうと解するのが相当である(東京地裁平成24年9月25日東京地裁判決)
以上から国税は、端緒把握説≒客観的確実性説を採用していると解されます。
いずれにせよ、納税者、税理士は調査着手説として心構えるしか方法論はありません
端緒把握説≒客観的確実性説は不明点が多いところから、その一歩手前である調査着手説を採用するしかない、と弊所は解しております。
国税不服審判所公表裁決において重要な事例が公表されました
・平成30年3月29日裁決は、納税者が依頼した税理士が税務調査日前のある日の午前中に税務調査前に事前自主申告する旨を調査官に伝えると、その日の午後に調査官が電話で調査を開始させた事例です。
・令和5年12月7日裁決は、税務調査官が初回の電話による調査通知の段階で更正の予知を発生させた事例となります。
こちらのページをご参考ください。
国税不服審判所公表相続税裁決の中には更正の予知の有無の判断及び調査日時変更の交渉に関係する重要な事例が存在した
令和5年12月7日裁決(令和5年事前通知及び調査通知導入後であっても行政指導か税務調査であるか明示せずかつ税務調査開始宣言をせずに初回電話で予想されうる非違項目の内容を確認することにより更正の予知を発生させたことが許された裁決)
上記の裁決事例から学ぶことは以下となります。
・税務調査官に対して事前自主申告する旨は伝えないでください。
・税務調査官から「臨場調査に先立って電話で調査を開始します」という申出は必ず拒否してください、そうでなければ臨場調査の前の電話で更正の予知が発生することになります。
・しかし初回の電話による調査通知の段階で調査官が更正の予知を発生させる理不尽な事例も存在します。
まとめ
・更正の予知は調査着手説により調査通知の段階では存在しない、と考えることが妥当すると解されます。
・税務調査前に事前自主申告する旨は調査官に伝えるべきではないと考えます。
この記事の監修者

- 税務調査専門税理士
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プロフィール
近畿税理士会上京支部
登録番号128205
税務調査案件を全国対応している税理士
事前自主申告による税負担の軽減に全力を尽くしている
これまで多くの税務調査案件を早期解決に導いてきた
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