(2023年11月17日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる
令和4年4月15日裁決のオリジナルのあだ名
令和4年年金受給者(ご高齢)である請求人の一時所得未計上について隠ぺい仮装を認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
裁決の内容、要約、編集
(1) 事案の概要
・本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、税務調査を受けて、生命保険契約等に基づく一時金等を一時所得等に含める修正をして、所得税等の修正申告をしたところ、原処分庁が、請求人の過少申告について隠蔽又は仮装の事実があるとして重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、原処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。
・請求人は、年金受給者であった。
・2019年中(平成31年1月~令和元年12月)までに起こったことは以下である。
・請求人は、令和元年分における公的年金等を受領した
・請求人は、保険会社E社から平成31年(2019年)2月6日に一時金(以下「本件一時金」という。)を受領した。
・請求人は、保険会社F社から令和元年(2019年)6月11日に定期支払金(以下「本件定期支払金」といい、本件一時金と併せて「本件一時金等」という。)を受領した。
・請求人は、令和元年(2019年)8月19日、金地金の売却代金をD銀行の請求人名義の普通預金口座(以下「本件口座」という。)への振込みにより受領した。
・請求人は、令和元年分の所得税等について、法定申告期限内に申告した(以下、当該申告を「本件確定申告」といい、本件確定申告に係る申告書を「本件確定申告書」という。)。なお、請求人は、本件確定申告書の作成に当たり、請求人の子の夫であるG(以下「本件親族」という。)にその作成の補助を依頼した。
・税務調査日←令和2年(2020年)10月27日
・所得税の調査対象期間←2019年中(平成31年1月~令和元年12月)←法定申告期限令和2年(2020年)3月15日←処分日令和3年(2021年)2月26日から1年以内
・修正申告の勧奨による修正申告書の提出←令和3年(2021年)1月27日
・重加算税賦課処分←令和3年(2021年)2月26日
・税務調査において、請求人に対し、本件確定申告において本件一時金等が申告漏れとなっている旨指摘した。
(2)争点
請求人が本件確定申告において本件一時金等を申告しなかった行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
最高裁平成7年4月28日判決=オリジナル命名:最高裁平成7年積極的な隠蔽なしの無申告だが当初から過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動した判決の、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用したと明記されています。
(4)認定事実
・請求人は、本件一時金を受領する前に、D○○支店で請求人を担当する営業担当者(以下「本件D担当者」という。)から、口頭で、本件一時金が一時所得に該当し所得税等の確定申告が必要となる旨の説明を受けた。
・請求人は、本件各保険会社から送付された本件各書面をいずれも廃棄していた。
・請求人は、平成26年分ないし平成30年分の所得税等について、平成28年分を除き確定申告をしていなかった。また、平成28年分は、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けるためにした申告であった。
・請求人は、本件お知らせが届いた後、金地金の売却による利益について本件確定申告をするため、本件親族に本件確定申告書の作成の補助を依頼した。
・請求人は、本件確定申告において、公的年金等の収入金額を〇〇〇〇円として、雑所得の金額を算定していた。この収入金 額には、非課税所得に該当するいわゆる遺族年金の受給額(〇〇〇〇円)も含まれていた。
(5)争点の審判所の判断
・本件各保険会社から請求人に対し本件各書面が送付されており、本件各書面には、いずれも本件一時金等が所得税の課税対象となる旨記載されていた。これらのことからすると、請求人は、少なくとも本件一時金等の支払がされる前後の時点において、本件一時金等について、その存在及び所得税等の申告の必要性を認識することができたものと認められる。
・請求人は、少なくとも平成26年分ないし平成30年分の所得税等については、平成28年分を除いて確定申告をしていない。令和元年分においても、原処分庁から本件お知らせが届いたことを動機として、金地金の売却による利益について本件確定申告をしたが、その際、非課税所得である遺族年金の受給額も含めて、本件親族に本件確定申告書の作成の補助を依頼している。このような状況を踏まえると、請求人は、少なくとも確定申告の経験や税務の知識が豊富であったとはいえない。
・請求人は、本件調査担当職員による調査の当日に、本件一時金等が入金された本件通帳を本件調査担当職員に対し提示し、本件調査担当職員から本件一時金等の申告漏れを指摘されると、その申告漏れを認めて本件修正申告をしている。
・以上から、請求人が本件一時金等を申告しないことを意図していたとまではいえない。
・請求人が意図的に本件各書面を廃棄した事実は認められず、請求人が本件各書面についてその内容を理解しないまま廃棄した可能性は否定できない。また、そうである以上、請求人が本件各保険会社に対し本件各書面 の再発行を依頼するに至っていないとも考えられる。
・以上のことから、請求人が本件親族に本件通帳を提示しなかった、あるいは、本件各書面を廃棄したことをもって、請求人が過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められない。
(5)結果
2019年中(平成31年1月~令和元年12月)の所得税の重加算税賦課を取り消す。
当該裁決のさらなる要約
・当該裁決は、本件一時金を申告しなかったことについて、過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたかどうかが争点となりました。
・国税不服審判所は以下のように判断した
◎請求人は、本件一時金等について、その存在及び所得税等の申告の必要性を認識することができたものと認められる。
◎請求人は、少なくとも確定申告の経験や税務の知識が豊富であったとはいえない。
◎請求人は、本件一時金等が入金された本件通帳を本件調査担当職員に対し提示した。
◎請求人が本件一時金等を申告しないことを意図していたとまではいえない。
◎請求人が意図的に本件各書面を廃棄した事実は認められず、請求人が本件各書面についてその内容を理解しないまま廃棄した可能性は否定できない
弊所独自の考察
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は、所得税が申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことについていいがかりである、と弊所が感じた事例です。なぜなら、請求人は年金受給者でご高齢と推測され、確定申告の知識も豊富ではなく、単なる一時金の計上漏れの可能性が高いと推測されるところ、国税が隠ぺい仮装を主張したからです。
◎当該裁決は、最高裁平成7年外部からうかがい得る特段の行動判決における、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用しています。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査での虚偽発言は無かったと解されます。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
一時所得等の未計上について単なる計上漏れであることを主張すれば隠ぺい仮装行為の始期が変更される可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)