(2023年11月15日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

令和2年3月10日裁決のオリジナルのあだ名

令和2年工事完了日とずれた納品日が記載されている請求書による経費計上について隠ぺい仮装を認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1) 事案の概要
・本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、建物の修繕工事に係る費用を事業年度終了の日付で修繕費に計上し、当該修繕費を損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、原処分庁が、請求人の代表取締役は、当該修繕工事が事業年度終了の日までに着工すらしておらず、当該修繕費を損金の額に算入できないことを認識した上で、当該修繕工事の施工業者に請求書を発行させることによって損金の額に算入したのであるから、その行為は事実の仮装に当たるとして法人税等の重加算税の賦課決定処分等をしたのに対し、請求人が、仮装の事実はないとして原処分の一部の取消しを求めた事案である。
・請求人は、不動産業を営む法人であり、代表取締役はE(以下「請求人代表者」という。)である。
・請求人は、「G」と称する賃貸用の集合住宅(以下「本件建物」という。)を取得した。
・請求人代表者は、本件建物に発生していた雨漏りを防止するための修繕工事(以下「本件修繕工事」という。)について、H社から、「納品日」欄に「3.30」、「商品名」欄に「G修繕工事」、と記載された平成30年3月31日付の請求書(以下「本件請求書」という。)の交付を受けた。
・請求人は、平成30年3月31日付で、本件請求書に基づき本件修繕工事の代金(以下「本件修繕費」という。)を「修繕費」勘定に計上し、本件事業年度の法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入した。なお、請求人は、本件修繕費について、総勘定元帳の「修繕費」勘定の「摘要」欄に「期末未払計上 H社 G修繕工事 3月 請求」及び相手科目名を「未払金」として記載している。
・本件修繕工事は、遅くとも平成30年7月末日までに完了し、請求人は、平成30年9月28日、H社に対し、本件修繕費を支払った。
・処分日←平成31年2月25日
・法人税等の調査対象期間
◎平成29年4月1日から平成30年3月31日事業年度←法定申告期限平成30年5月31日←処分日平成31年2月25日から1年以内
・更正処分(期ずれ)については争っていない。
・重加算税賦課要件である隠ぺい仮装があったかどうかを争っている。

(2)争点
請求人が本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入したことに、通則法第68条第1項に規定する仮装に該当する事実があるか否か。

(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明確な明記はありませんが、国税庁の「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)を引用、参考としていると解されます。なお当該資料には、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としています。

(4)争点の審判所の判断
・本件修繕工事については、請求人代表者が平成30年1月13日付の見積書の交付を受けて程なく工事を発注し、これを受注したH社は、同年3月31日(本件事業年度終了の日)までに下請業者の手配や近隣住民への説明その他施工に向けた準備に取り掛かるとともに、同年4月頃には請求人代表者の求めに応じて本件請求書を発行しており、その後は、H社により同年7月末までに本件修繕工事が完了し、請求人から同年9月28日に本件請求書に基づき本件修繕工事の代金が決済されている
上記の事実経過をみると、本件修繕工事につき、H社により施工されることが確かなものとして施主である請求人側から依頼があれば、竣工前に本件請求書を発行したとしてもあながち不自然とは言い切れず、また、本件請求書の「納品日」欄に記載されている「3.30」については、請求人の主張のように、H社の請求書発行に係るシステムの便宜上「3.30」と入力 されたにすぎない可能性も否定できない。そして、本件請求書の「納品日」欄が直ちに本件修繕工事の完了日を示すと認めるに足りる証拠はないから、本件請求書の「納品日」欄に「3.30」と記載がされているからといって、本件請求書が直ちに虚偽のものであるとまでは評価できない。
・請求人代表者がH社に対して、本件請求書の発行に当たって、本件修繕工事の完了日を平成30年3月30日にする旨を依頼した事実に関する記述は存在しない。
・本件事業年度の総勘定元帳、決算書、確定申告書及び勘定科目内訳明細書は、請求人代表者ではなく、いずれも請求人の税務代理人により作成されたものであり、請求人代表者に、税務会計に関する知識や認識があったと認めることはできない。そして、請求人代表者に、本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入できないことの認識や過少申告の意図があったとは認められない。
・原処分庁の主張する「相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成」及び「帳簿書類への虚偽記載」の各事実を認めることはできず、故意に事実をわい曲したと評価すべき行為は見当たらない。したがって、請求人が本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入したことに、通則法第68条第1項に規定する仮装に該当する事実があるとは認められない。

(5)結果
・本件法人税賦課決定処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の金額については違法であるから、取り消すべきである。

当該裁決のさらなる要約

・請求人代表者はから、平成30年4月頃、H社に本件請求書の発行を依頼し 、H社は、その求めに応じて本件請求書を発行した。
・国税不服審判所は以下のように判断している。
◎H社により施工されることが確かなものとして施主である請求人側から依頼があれば、竣工前に本件請求書を発行したとしてもあながち不自然とは言い切れない。
◎H社の請求書発行に係るシステムの便宜上「3.30」と入力 されたにすぎない可能性も否定できない。
◎本件請求書の「納品日」欄に「3.30」と記載がされているからといって、本件請求書が直ちに虚偽のものであるとまでは評価できない。
◎請求人代表者に、本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入できないことの認識や過少申告の意図があったとは認められない。

・弊所独自の視点
◎当該裁決は、工事完了より前に発行された請求書の納品日の日付を基準として経費計上したために、期ずれとなった事例と解されます。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。なぜなら納品日の日付を改ざんする、遡及して修正する、などの行為は存在しなかったからです。会計税務処理において納品日の重要性は認知されていないように解されるところ、請求書発行システムの便宜上そのように記載されたにすぎない可能性があるからです。国税は単なる期ずれでは重加算税を賦課できないことから、納品日の隠匿虚偽記載等であるといいがかりをつけてきたように感じたからです。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
国税が単なる期ずれについて隠匿虚偽記載等を主張してくるケースがあるのでそのようないいがかりについては否定することで重加算税賦課を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)