(2023年11月15日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

令和元年11月20日裁決のオリジナルのあだ名

令和元年山林譲渡金額1億円が無申告で一時的に調査に非協力であっても隠ぺい仮装を認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・審査請求人(以下「請求人」という。)が法人税等の確定申告書を提出しなかった。
・原処分庁が、請求人が所有する山林の売却により生じた所得に係る法人税等及び重加算税の決定処分を行った。
・請求人は、原処分において損金の額として認められた費用等とは別に損金の額に算入されるべきものがある、と主張した。
・請求人は、重加算税賦課の取消を求めた。
・請求人は、農場、山林及び果樹園の経営等を目的とする有限会社であった。
・調査日←平成29年3月14日
・処分日←平成30年4月27日
・請求人の申告状況は以下であった。
◎平成24年4月1日から平成25年3月31日事業年度←白色申告
◎平成25年4月1日から平成26年3月31日事業年度←白色申告
◎平成26年4月1日から平成27年3月31日事業年度←白色申告
◎平成27年4月1日から平成28年3月31日事業年度←法定申告期限平成29年5月←処分日は平成30年4月27日から2年以内←無申告
・法人税の調査対象期間
◎平成27年4月1日から平成28年3月31日事業年度←法定申告期限平成29年5月←処分日は平成30年4月27日から2年以内←無申告
・請求人は、平成27年6月12日、H社との間で、本件山林を100,000,000円で譲渡する旨の契約(以下「本件契約」といい、本件契約に基づきされた本件山林の譲渡を「本件譲渡」という。)を締結し、同日、本件契約に基づき、H社から手付金10,000,000円を現金で受領した。
・平成27年12月18日、H社から、本件契約に係る売買代金の残金90,000,000円が振り込まれ、同日、本件山林につき売買を原因とする所有権移転登記がなされた。
・本件代表者は、本件山林の売却代金から、本件山林の取得費及び費用を差し引くと赤字となり税金が生じないと考えたから申告をしなかったものであり、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図していたわけではない、と主張している。
(2)争点
・請求人が費用と主張する金額(以下「本件各金員」という。)は、本件事業年度の損金の額に算入されるか否か(争点1)。
・請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽又は仮装」に該当する事実があったか否か(争点2)。

(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記は無い。しかし、最高裁平成7年4月28日判決=オリジナル命名:最高裁平成7年積極的な隠蔽なしの無申告だが当初から過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動した判決の、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用したと解される。

(4)争点の審判所の判断
◎争点1について
・本件各金員のうち、本件事業年度において支出されたものは別表3の順号156の金員のみであり、その他については、本件事業年度において支出されたものはなく、債務として確定していた可能性のある金員もない。そこで、別表3の順号156の金員について検討すると、証拠として提出されたレシートの内容からは、収入印紙の購入のための支出であったことは認められるものの、請求人は、帳簿書類等は作成しておらず、また、当審判所の調査によっても、当該収入印紙の用途、請求人の業務との関連性及び請求人の支出であることを客観的に判断することはできない。したがって、本件各金員はいずれも、法人税法第22条第3項第2号に規定する「当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額」に該当するとは認められない。
◎争点2について
・本件調査担当職員は、日程調整や請求書、領収証等の確認のため、平成29年5月9日から同年10月23日までの間、16回にわたって本件代表者に電話をかけたが、電話が通じなかったり、電話が通じても請求人はこれに応じなかった。
・本件調査担当職員は、平成30年1月10日及び同月15日、本件代表者に電話をかけたが、請求人は、これに応じなかった。
・本件調査担当職員は、平成30年4月9日、本件代表者に電話をかけたが、「勝手にしろ、申告もしない。」などと発言し、これに応じなかった。
・本件調査担当職員は、平成30年4月11日、同月13日及び同月19日、本件代表者に電話をかけたが、「勝手にしろ、そのうち時効が来る。」などと発言し、これに応じなかった。
・前3期各事業年度の法人税について、各確定申告書をそれぞれ提出しており、本件事業年度の直前の2事業年度については、法定申告期限内に各確定申告書をそれぞれ提出していた。
・これら請求人の行動からは、請求人が本件事業年度等の法人税等について、法定申告期限までに申告する必要があることは認識していたと認められる。
・本件代表者は、本件調査担当職員の度重なる税務調査への協力要請に応じなかったことは認められるものの、本件調査担当職員が、平成29年3月14日、本件事業年度等の法人税等の調査のため本件代表者の自宅に臨場した際には、本件契約に係る売買契約書及び本件預金口座に係る通帳を提示し、本件契約に係る売買代金の決済方法等について説明している。
・請求人は、本件譲渡による所得が生じていないと認識していた可能性も否定できない。これらのことからすると、当該協力要請に応じなかったことをもって明確な無申告の意図に基づく行為であったと評価することはできない。

(5)結果
法人税←平成27年4月1日から平成28年3月31日事業年度←重加算税言賦課を取り消す。

当該裁決のさらなる要約

・請求人は、山林所得の生じている平成28年3月期の法人税が無申告であった。
・請求人は、本件山林の売却代金から、本件山林の取得費及び費用を差し引くと赤字となり税金が生じないと考えたから申告をしなかったものであり、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図していたわけではない、と主張した。
・請求人は一時的に調査に非協力的な態度をとったが、のちに資料を提示した。
・国税不服審判所は以下のように判断した
◎請求人が本件事業年度等の法人税等について、法定申告期限までに申告する必要があることは認識していたと認められる
◎本件調査担当職員の度重なる税務調査への協力要請に応じなかったことは認められる
◎本件調査担当職員が、平成29年3月14日、本件事業年度等の法人税等の調査のため本件代表者の自宅に臨場した際には、本件契約に係る売買契約書及び本件預金口座に係る通帳を提示し、本件契約に係る売買代金の決済方法等について説明している
◎当該支出に関する証拠書類を提出したことからすると、当該支出が、法人税法第22条第3項各号の規定により本件事業年度の損金の額に算入することができるか否かは別として、請求人は本件譲渡による所得が生じていないと認識していた可能性も否定できない。これらのことからすると、当該協力要請に応じなかったことをもって明確な無申告の意図に基づく行為であったと評価することはできない。

弊所独自の考察

・弊所独自の視点
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりとはいえない、と弊所が感じた事例です。請求人は過去、白色申告提出済みであり、申告する必要があると認識していたと認められるとされたからです。また、譲渡代金は1億円という多額でした。仮に赤字であったとしても、赤字としての申告は必要だろうと認識することが通常と解されるからです。
◎しかし、今回は無申告であるため隠ぺい仮装が認められなった可能性が高いと解されます。
◎当該裁決は、最高裁平成7年外部からうかがい得る特段の行動判決における、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用しています。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと明記されています。
◎当該裁決は、取引を把握できるような集計資料の保存については、領収書等の整理ができていないと発言した、との明記がありました。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、一時的に非協力であったが、協力的な時もあったと明記されています。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言の有無は無かったように解されます。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
過去に申告経験済みで申告の必要性を認識しているとされる場合において無申告期間の譲渡金額が多額であったとしても重加算税賦課を回避できる可能性があります。(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)