(2023年12月12日作成)(2024年9月12日再編集)
結論
・質問応答記録書と検索すると小難しい説明でごちゃごちゃしてよくわからないと解されます。
・要するに質問応答記録書は、法的な強制力は無く署名拒否することもできるが、拒否したからといって有利になるわけではなく、反対に署名したからといって当該記録書ですべてが決定されるわけでもありません。
・実際に、国税不服審判所公表裁決隠ぺい仮装を認めなかった事例の中には、処分庁が作成した質問応答記録書や処分庁が記録した申述内容が争点の核となるような事例において処分庁の主張を認めず隠ぺい仮装が認められなかった事例が存在します。
・ただ気を付けるべき点は税務調査官が有利になるような誘導尋問に基づく質問応答記録書の作成です。仮に立ち会う税理士がいるのであれば当該税理士は納税者を守るべきです。
・税理士鴻秀明は質問応答記録書に対して批判的な意見を記述しています。
下記で詳細をまとめます。
質問応答記録書と検索すると小難しい説明でごちゃごちゃしてよくわからないと解されます。
質問応答記録書とは、と検索すると下記のように解されます。
・調査官が納税者の回答を記録するものである
・署名押印はしたほうがよいのか
・署名押印をしたらどうなる
・とにかく長文でよくわからない
要するに質問応答記録書は、法的な強制力は無く署名拒否することもできるが、拒否したからといって有利になるわけではなく、反対に署名したからといって当該記録書ですべてが決定されるわけでもありません
そこで弊所が端的にまとめます。
・質問応答記録書に法的な強制力は無い
・署名を拒否することもできるが拒否したから納税者が有利になることはない
・反対に署名したといって当該資料ですべてが決定されるわけはありません。
実際に、国税不服審判所公表裁決隠ぺい仮装を認めなかった事例の中には、処分庁が作成した質問応答記録書や処分庁が記録した申述内容が争点の核となるような事例において処分庁の主張を認めず隠ぺい仮装が認められなかった事例が存在します
こちらのページをご参考ください。
当該ページを改めてまとめますと下記となります。
・国税不服審判所は、仮に納税者に不利な記述が質問応答記録書に存在したとしても、検討の材料とし、なぜそのような記録が残ったかの経緯をきちんと検討します。
・したがって国税不服審判所は、申述、答述、質問応答記録書に記録された内容をそのまま鵜呑みにするわけではない、と解されます。
ただ気を付けるべき点は税務調査官が有利になるような誘導尋問に基づく質問応答記録書の作成です。仮に立ち会う税理士がいるのであれば当該税理士は納税者を守るべきです
税務署の調査官は当然ながら国税側が有利になるような納税者からの回答を導き出そうとし、それを記録しようとします。具体例は下記となります。
・単なる売上漏れを売上除外と納税者に回答させる、それを質問応答記録書に記録しようとする
・単なる在庫計上漏れを棚卸資産除外と納税者に回答させる、それを質問応答記録書に記録しようとする
・納品日の書き間違いの訂正を納品日の改ざんと納税者に回答させる、それを質問応答記録書に記録しようとする
このような場合は、きっぱり拒否、抵抗していただいてまったく問題ありません。税務調査専門税理士は当該論点については納税者を守るべきとなります。
税理士鴻秀明は質問応答記録書に対して批判的な意見を記述しています。
鴻秀明『税務調査における質問応答記録書の実務対応』清文社(2021年4月20日)より
・p45より、調査官が納税義務者から聴き取った内容を、質問応答等の形式で調書として作成することもあります。それらの名称は税法に具体的な定めがないことから、申述書、申立書、確認書、抗弁書、聴取書、供述書、質問顛末書、嘆願書など、様々な名称で呼ばれていました。
・p48より、この問答で明らかになったことは、申述書や聴取書には法的根拠がないことを国税庁が事実上認めたことです。その後に創設された質問応答記録書も、同様の性格を持つ書面であるため、法的根拠はないと解されます。
・p49より、申述書等を証拠とした課税については、国会で問題点を指摘されたことで、改善策が必要になったと推測されます。指摘された問題点を改善するならば、「税務調査の証拠として、私文書である申述書等よりもより証拠能力の高い公文書とする」、「不服申立て、訴訟にも耐えうる答述証拠とする」、「調査官による安易な申述書等の作成を抑制する」、という要望を満たすことができる書面が必要となります。平成25年6月に国税庁は、新たに質問応答記録書という名称の書式を考案し、「質問応答記録書作成の手引きについて」を職員に配布しました。これは供述調書を参考に書式を定めたと言われています。刑事事件の手法を取り入れ、不服申立や訴訟を意識して作成された行政文書であり、これに従って作成された質問応答記録書は、私文書である申述書よりも証拠力が高いと言えます、質問応答記録書はその存在が国民に公表されていないため、税理士界隈にもあまり知られていない調書です。また質問応答記録書はその証拠能力を検証するという仕組みの存在も明らかにされておらず、調査官が事実の隠蔽・仮装を認定するうえで、利便性の高い調書となっています。質問応答記録書には、直接の法的根拠は見当たりません。
・p69より、これまでの説明やこれから説明することも踏まえ、質問応答記録書の特徴をまとめると以下のようになります。
①法律上の直接の根拠なし→国税庁の自由な裁量で運用できる
②法的な性格は行政文書→公務員が作成する書類であり、民間人が署名・押印する理由がない
③その作成は質問検査権の範囲外→納税義務者が関わる必要がない
④供述調書と同じ形式→納税義務者を犯罪被疑者と似たような扱いにしている
⑤課税庁内での取り扱いが非公開→質問応答記録書を不可視化している
⑥課税庁内での証拠力の検証なし(推測)→課税要件の検討した行われていない
⑦外部や公平な第三者によるチェックなし→課税庁内ですべて完結する(不服申し立ては例外)
⑧作成趣旨の説明が対職員と対納税者とで相違する→質問応答記録書の抱える本質的な問題である
⑨作成に非協力的な納税者は調査非協力者→行政文書の作成は公務員の職務であり、民間人は無関係である
⑩開示請求しても黒塗り部分の判読不可→自分が署名・押印した文書を読めない
⑪写しを交付しない→納税義務者への配慮に欠けている
質問応答記録書の最大の特徴は、一方的に課税庁にとって利便性の良い書証になっていうこと、納税義務者への配慮に欠けていることにあります。
・p71より、質問応答記録者は、少なくとも法人の調査では、重加算税絡みで作成されることが圧倒的に多いようです。メディアも含め、世間一般の重加算税の受け止め方は、刑事事件の制裁と変わりありません。そのような重い制裁が、質問応答記録書の作成に協力したために課されたとしたら、理不尽ではないでしょうか。
まとめ
・質問応答記録書の署名は拒否できます。
・ただ拒否したから重加算税を回避できることを含めた納税者に有利になることが確定することにもなりません。