(2023年11月12日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

平成28年4月19日裁決のオリジナルのあだ名

平成28年請求される側が請求書を自ら作成したが隠ぺい仮装を認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1) 事案の概要
・本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁の調査による指摘に従い、消費税及び地方消費税の修正申告書を提出したところ、原処分庁が、内容虚偽の請求書を請求人が自ら作成して、太陽光発電設備の取得費を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて確定申告書を提出したことは仮装に基づくものであるとして、重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、仮装の事実はないなどとして、同処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。
・請求人は、土木建築用機械、金物の販売及び賃貸並びに自然エネルギー等による発電、電気の供給及び販売等を主な目的とする法人である。
・請求人は、平成25年9月30日、G社に対し、d市e町に所在する太陽光発電設備(以下「本件太陽光発電設備」という。)に係る設置工事(以下「本件工事」という。)を273,861,000円で発注し、G社はこれを請け負った。
・請求人は、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告書において、課税仕入れに係る支払対価の額に本件太陽光発電設備の取得費を含めた。
・なお、当該確定申告書に併せて提出された税理士法第33条の2《計算事項、審査事項等を記載した書面の添付》第1項に規定する添付書面には、G社を発行者とする本件工事の代金請求に係る平成26年1月31日付請求書(以下「本件請求書」という。)が添付されていたが、本件請求書は、請求人が作成したものであり、その欄外に補足として「工事完了は3月31日までとする。」と記載されていた。
・本件工事は、平成26年7月15日に完了し、請求人は、同日、G社から本件太陽光発電設備の引渡しを受けた。
・請求人は、本件課税期間の消費税等について、課税標準額を○○○○円、仕入税額控除の額を○○○○円並びに消費税の還付税額を○○○○円及び地方消費税の還付税額を○○○○円として法定申告期限までに申告した。
・税務調査の勧奨による修正申告提出日→平成27年3月13日
・処分日→平成27年3月27日
・消費税の調査の対象となった期間
◎平成25年4月1日から平成26年3月31日←法定申告期限平成26年5月31日←処分日平成27年3月27日から1年以内

(2)争点
請求人は、本件太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したか否か。

(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
最高裁平成7年4月28日判決=オリジナル命名:最高裁平成7年積極的な隠蔽なしの無申告だが当初から過少申告の意図を外部からうかがい得る行動した判決、の前半部分を引用したと明記されています

(4)審判所の判断
・請求人の主張
◎本件太陽光発電設備は、本件課税期間内に雑工事を除きほとんど完成していたところ、H社の接続工事が未了で売電できなかったため、法人税については建設仮勘定として経理し、消費税等については、消費税等の課税仕入れの保存書類とするためG社の了解を得て本件請求書を作成し、本件太陽光発電設備の取得費を課税仕入れの対価の額に含めたのであって、消費税等の還付を早めに欲しいとの理由から、本件太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装した事実はない。
・本件請求書は、請求人が作成したものであり、その欄外に補足として「工事完了は3月31日までとする。」と記載されていたこと、が認められる。
・請求人が、G社から本件工事の目的物である本件太陽光発電設備の引渡しを受けたのは、本件課税期間の翌課税期間に属する平成26年7月15日であったことが認められる。
・しかしながら、本件請求書は、飽くまで本件工事の代金を請求する書面であって、本件太陽光発電設備の引渡しに係る書面ではない上、本件請求書が平成26年1月31日付で作成されていることからすれば、「工事完了は3月31日までとする。」との記載は、工事完了の予定日が記載されたものとみるほかない(なお、本件の全証拠資料を精査しても、本件請求書が本件課税期間終了後に日付を遡って作成されたなどの事情は見いだせない。)。
・原処分庁は、請求人は本件課税期間内に本件太陽光発電設備が完成しないことを十分認識していたにもかかわらず、内容虚偽の本件請求書を作成した旨主張するが、仮に請求人がかかる認識の下で本件請求書を作成していたとしても、本件太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したことにはならず、上記の判断を左右するものではない。

(5)結果
・消費税の調査の対象となった期間
◎平成25年4月1日から平成26年3月31日←重加算税を取消す

当該裁決のさらなる要約

・請求人は、翌期に納品された工事費用について、請求書を自ら作成して当期に仕入税額控除を繰上げて適用している。
・原処分庁はこれらの行為は隠ぺい仮装に該当すると主張したが、請求書はあくまで請求代金を支払う書面であって納品日を仮装したわけではないとして、隠ぺい仮装は認められなかった。

弊所独自の考察

・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりではない、と弊所が感じた事例です。なぜなら、請求人が請求書を作成するという通常ではない行動とともに、仕入税額控除の繰上げが行われているからです。
◎しかし請求書はあくまで代金を請求する書面であるから引き渡し日を仮装したことにはならないとしました。
◎請求人が自ら請求書を作成した理由は不明ですが、仕入税額控除の繰上げを狙っていた以外に理由は考えにくいように思われます。しかし、法人税法上は建設仮勘定としていたようです。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、明記はありませんが、請求人の調査への協力具合は協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、明記はありませんが、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
請求書を自ら作成するような行動があったとしても隠ぺい仮装は無かったと主張すれば重加算税を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)

類似する裁決

平成25年9月26日裁決(平成25年請求書による経費繰上計上に納品日の隠匿虚偽記載等が存在しないので隠ぺい仮装を認めなかった裁決)

が類似するように解されます。共通する点は、繰り上げ経費計上している点です。

しかし、

・本案件である平成28年裁決は、請求された側が自ら請求書を作成している点
・上記の平成25年裁決は、請求される側が、相手先に請求書を要求して相手方から請求書をもらっている点

が異なっております。

しかし、いずれにせよ、隠ぺい仮装はないとされています。