(2023年11月12日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる
平成27年6月9日裁決のオリジナルのあだ名
平成27年解約料を棚卸資産取得価格に含めなかったことについて隠ぺい仮装を認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・本件の内容は以下である。審査請求人(以下「請求人」という。)が、U社と「当初」の契約に基づいてf商品を期の途中まで仕入れていたが、急激に需要が減少する見込みに伴って期の途中で契約の解除を申し出た。するとU社は解約金を要求してきため、請求人は解約金を支払った。そして請求人は改めて今後の状況を予測し、U社と契約内容を見なおしたうえで、また同様のf商品を購入する契約をした。当該解約金は一括して全額その期の損金となるとして計上した。しかし、原処分庁は請求人はf商品を従前と同様の条件で購入を存続しているので、まず当該解約金の額は、期末棚卸資産の取得価額に含めて申告すべきとした。さらに、当該解約金の額を棚卸資産の取得価額に含めなかったことは隠ぺい又は仮装の行為があったとして、法人税に係る重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、隠ぺい又は仮装の行為はないなどとして、同処分の全部の取消しを求めた事案である。
・請求人は、輸入販売を行う法人である。
・請求人は、平成20年6月30日付及び同年9月8日付の「○○契約」と題する各契約書により、V国所在のU社との間で、「f商品」という製品名の○○(以下「f商品」という。)を同社から購入する各売買契約(以下「本件各当初契約」という。)を締結した。
・請求人は、平成21年1月6日(平成20年12月23日船積分)までに、本件各当初契約により取り決めたf商品の取引数量の合計X,XXXMTのうちのX,XXXMTをU社から購入しており、平成21年1月6日時点において購入していない残高はX,XXXMT(以下「本件未履行残高」といい、本件各当初契約により取り決めた内容のうち本件未履行 残高に係る部分を「本件未履行部分」という。)であった。(注) 「MT」は、重量単位であるメートル法上の「トン」(Metric Ton)を示す。以下同じ。
・請求人は、U社との間で、本件各当初契約の解除に合意したとし、その解約料として、平成21年3月6日、U社に対し○○○○円を支払った(以下、請求人が解約料としてU社に支払った金員を「本件金員」という。)。
なお、請求人は、本件各当初契約の解除に関する書類として、次の(イ)ないし(ホ)の各書面を保存していた(以下、これらのうち(イ)ないし(ニ)の各書面を併せて「本件解約関係書類」という。)。
◎(イ)平成20年12月3日付の事故報告書
◎(ロ)平成20年12月5日付の解約申込みに関する書面
◎(ハ)平成20年12月12日付の条件提案に関する書面
◎(ニ)平成20年12月22日付の条件同意に関する書面
◎(ホ)平成21年1月6日付の解約に関する契約書
・請求人とU社との間で取り交わされた「○○契約」と題する契約書(以下「本件解除契約書」という。)は、本件各当初契約の解除に関する事項が記載された書面であり、要旨次のことが記載されている。
A 両社は、契約締結日及び解約日を平成21年1月6日として本件各当初契約の解除に同意したこと。
B 請求人は、U社の追加費用及び損失を填補するために、○○○○円を支払わなければならないこと。
・請求人は、U社との間で、f商品を同社から購入する各売買契約(以下「本件各新規契約」という。)を締結した書類として、次の(イ)ないし(ハ)の各書面を保存していた。
(イ)平成21年3月19日付の「○○契約」と題する書面
(ロ)平成21年5月1日付の「○○契約」と題する書面
(ハ)平成21年5月29日付の「○○契約」と題する書面
・請求人は、平成21年4月15日から同年7月7日までの間に、合計X,XXX.XXMTのf商品をU社から仕入れた。
・請求人は、本件事業年度において、本件金員の額を特別損失の解約違約金勘定に計上して損金の額に算入し、本件事業年度の法人税の確定申告をした。
・請求人は、本件調査を受け、本件金員の額を上記ヘにおいて仕入れたf商品のうち本件未履行残高に相当する数量の製品に係る取得価額に含めて本件事業年度末における期末棚卸高を再計算し、その結果算出された棚卸計上漏れの額○○○○円を本件事業年度の確定申告における所得金額に加算するなどして、本件修正申告書を提出した。
・原処分庁は、請求人が、本件事業年度末における期末棚卸高の算定に当たり、本件金員の額を本件未履行残高に相当する数量のf商品に係る取得価額に含めなかったことには隠ぺい又は仮装の行為があるとして、本件重加算税賦課決定処分をした。
・法人税の調査の対象となった期間
◎平成20年12月1日から平成21年11月30日←法定申告期限平成22年1月31日←処分日平成24年5月29日から3年以内
・修正申告の勧奨による提出日←平成23年11月30日
・処分日←平成24年5月29日
・原処分庁は以下のように主張している。
◎請求人は、関税の負担の軽減を図ることを目的として、請求人及びU社の双方において本件未履行部分を解約する意思はないにもかかわらず、本件金員を解約料に仮装するために、U社と通謀の上、虚偽の内容を記載した本件解除契約書を日付操作の上で事後的に作成し、さらに、これに関連して、本件解除契約書と新規購入に係る契約書面を分離し、新規購入に係る契約書面を破棄し、本件解約関係書類を日付操作の上で事後的に作成した。したがって、請求人が、本件事業年度末における期末棚卸高の算定に当たり、本件金員の額を本件未履行残高に相当する数量のf商品に係る取得価額に含めなかったことについて、隠ぺい又は仮装の行為が認められる。
(2)争点
・争点1、本件事業年度末における期末棚卸高の算定に当たり、本件金員の額を本件未履行残高に相当する数量のf商品に係る取得価額に含めなかったことについて、隠ぺい又は仮装の行為があったか否か。
・争点2、省略
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記はありませんが、国税庁は、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)において、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としており、それが引用されていると解されます。
(4)争点1本件事業年度末における期末棚卸高の算定に当たり、本件金員の額を本件未履行残高に相当する数量のf商品に係る取得価額に含めなかったことについて、隠ぺい又は仮装の行為があったか否か、の審判所の判断
・請求人の役員及び従業員は、e社長、m本部長、平成20年12月当時管理本部長であったn(以下「n本部長」という。)、i部長、営業第一本部○○チーム課長であったp(以下「p課長」という。)及びj所長である。
・U社の役員及び従業員は、U社のCEO(Chief Executive Offi cer)であったq及びk部長である。
・請求人は、平成20年12月中旬に、U社に相応の違約金を支払うこととなっても解除するとのe社長の判断の下に、U社に対して解約を行いたい旨を申し入れ、その後、両社の間で、本件各当初契約の解除に関する交渉が行われた。この交渉の過程において、U社は、請求人に対して、本件各当初契約の解除に伴う解約料の支払に加え、本件各当初契約を解除した後に本件未履行残高を超える数量のf商品の新たな購入を求め、この新規購入に関する事項についても本件各当初契約の解除に係る契約書に盛り込むことを求めていた。
・これに対し、請求人は、その内容等につき引き続きU社と交渉を経た後、平成21年3月10日頃に、U社より、請求人が求める本件各当初契約の解除及びU社が求めるf商品の新規購入に関する取引条件が記載された各契約書のドラフトを受領したところ、このうち新規購入に関して作成される契約書については、個別の購入契約を締結した時点で破棄するとの請求人の提案にU社は同意していた。
・船積み再開後の取引に係るU社及び請求人の行為は、いずれも本件各新規契約に基づき行われたものであったと認められる
・他方、請求人がU社から受領した「○○契約」と題する契約書のドラフトに記載された条件等については、船積み再開後である平成21年4月3日においても請求人とU社との間でなお協議が継続していたと認められることからすると、当該ドラフトを受領した同年3月10日頃の時点において、その記載された条件等によりf商品の取引を行う旨を請求人とU社との間で合意していたとまで認めることはできない。
・そうすると、請求人がU社との間で交渉していた本件各当初契約の解除及び本件未履行残高を超える数量のf商品の新規購入に関して、平成21年3月10日頃に請求人がU社から受領したそれぞれの契約書のドラフトは、いずれもその受領した時点において、請求人及びU社の代表者の署名がされた契約書として取り交わされたものではなかったが、本件各当初契約の解除に関しては、その契約書のドラフトに記載された条件等により請求人とU社との間で解除の合意が成立していたと認められ、他方で、U社から要求された本件未履行残高を超える数量のf商品の新規購入に関しては、請求人は今後もU社との間でf商品の取引を引き続き行うことを前提に交渉していたものの、当該解除の合意が成立した時点においては、価格等の条件を含め要求された総数量での取引の合意にまでは至らず、今後何回かに分けた個別の購入契約を締結することを合意したにとどまったものと認められる。そして、当該解除の合意に従って、本件金員が支払われ、また、その後のf商品の取引は本件各新規契約を順次締結することに基づき行われたものと認められる。
・本件各当初契約に基づく最終の取引が平成21年1月6日であったことからすると、本件各当初契約の解除が当該日付以後に予定されていた取引(本件未履行部分)に関して解約するものであったという意味において虚偽の内容を記載したものと評価することはできない。そうすると、本件解除契約書は、請求人とU社との間の交渉の結果、両社が最終的に本件各当初契約の解除に合意したことから、その合意に係る契約書として作成され、双方の代表者等の署名がされたと認めるのが相当である。
・本件解約関係書類の記載内容が全く虚偽であるとまでいうことはできない。
・本件各当初契約は、請求人とU社との間においてその解除の合意は有効に成立しており、本件金員は当該解除の合意に基づいて請求人によりU社に対して支払われたものである。そして、本件解除契約書は、当該解除の合意に係る契約書として作成されたものと認められることからすると、これらの点において、請求人に事実を隠ぺい又は仮装したと評価される行為があったとは認められない。
・本件金員が、本件各当初契約の解除の合意に係る解約料として請求人からU社に支払われたものであっても、棚卸資産の購入のために要した費用の額に該当する場合には、その取得価額に含まれることとなる。そして、船積み再開後の取引が本件各新規契約に基づき行われたものであったことからすると、本件金員の額が棚卸資産の取得価額に含まれるものか否かという課税要件に関して、本件各新規契約に基づく取引について本件金員の支払との関係を示す事実は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実に該当するというべきである。
・この点については、請求人とU社との間では、請求人が申し入れた本件各当初契約の解除に関する内容とともに、U社から要求された本件未履行残高を超える数量のf商品の新規購入に関する内容についても交渉が行われ、また、請求人においても、U社との間のf商品の取引を今後も引き続き行うことを前提にこの交渉を行っていたにもかかわらず、本件解約関係書類は、当該交渉に関する経緯のうち本件各当初契約の解除に関して本件解除契約書に記載された内容に係る部分のみが記載され、さらに、本件解除契約書において解約日とされている平成21年1月6日より前の時期に作成されたものとする体裁を取りつつ、事後に作成されたものであって、その作成経緯等は極めて不自然なものといわざるを得ない。
・しかし、本件各当初契約の解除に合意した時点においては、U社から要求されたf商品の新規購入に関して条件等の合意には至らず、結果として、本件未履行残高に相当する数量のf商品はその後に順次締結された本件各新規契約に基づき取引が行われたのであるから、本件解約関係書類において、合意に至らなかったU社の要求内容に係る交渉経緯が記載されていないとしても、そのことをもって、本件各新規契約に基づく取引について本件金員の支払との関係を示す事実を隠ぺいし又は故意に脱漏したとまでいうことはできない。
・さらに、本件各当初契約の解除に係る合意の時期が平成21年1月6日あるいは同年3月10日頃のいずれであったとしても、当該解除の合意は、請求人とU社との間の本件各新規契約の締結よりも前に合意していたこととなるのであるから、実際に、解除の合意の時期と異なるように体裁を取っていたとしても、そのことをもって、本件各新規契約に基づく取引について本件金員の支払との関係を示す事実をわい曲したものと評価することもできない。
・したがって、請求人が本件金員の額を棚卸資産の取得価額に含めなかったことにつき、隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められない。
(5)結果
・法人税の調査の対象となった期間
◎平成20年12月1日から平成21年11月30日←重加算税を取消す
当該裁決のさらなる要約
・請求人は、f商品を、需要があると見込んで長期の仕入契約を結んでいた。しかし、ある年度の途中から急激に需要が減ったため、f商品解除を申し出た。
・請求人は、f商品を、解約料を支払うことによって、当初の長期契約を解除した。しかし、新たな契約に基づいて引き続きf商品を仕入続けた。
・請求人は、税務調査において解約料がf商品の期末棚卸資産の取得価額に参入されることを指摘され、修正申告書を提出した。
・原処分庁は、当該解約料に関する契約書の日付について、通謀による虚偽があったと主張したが、隠ぺい仮装はなかったとされた。
弊所独自の見解
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。解約料の全額を損金とするのか、棚卸資産の取得資産に含めるのかは解約によるもので判断が難しかった。また仮に処理を誤ったとしても単なる期ずれと解されます。しかし単なる期ずれで終わらせないように、解約料解除に関する契約書の改ざんを指摘したことはいいがかりのように感じたからです。
◎当該裁決は、明記はありませんが、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決は、明記はありませんが、取引を把握できるような集計資料も存在していたと解されます。
◎当該裁決において、明記はありませんが、請求人の調査への協力具合は協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
国税が単なる期ずれについて隠匿虚偽記載等を主張してくるケースがあるのでそのようないいがかりについては否定することで重加算税賦課を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)