(2023年11月12日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

平成26年10月9日裁決のオリジナルのあだ名

平成26年輸入申告について委託通関業者任せとしていた知識不足により適正な課税価格の一部の資料しか送付しなかったことに気が付かなかったことは意図的に漏れ落とそうとしたものではないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1) 事案の概要
・輸入申告とは、貨物を輸入する際に税関長に対して許可を受けようとする意思表示のことで、一般的な申告は書面(申告書)をもってしなければなりません。
・輸入申告は、貨物を輸入しようとする者が行うことになっていますが、財務大臣の許可を受けた通関業者と呼ばれる代行会社に輸入手続を依頼することもできます。
・本件は、ついては以下の内容である。
◎審査請求人(以下「請求人」という。)が、エスカレーター部品の輸入を行っていた。
◎請求人は、申告に係る輸入取引については通関業者に委託しており、その仕組み制度については正確には把握しておらず、とにかくインボイスを渡せばよいと解していた。
◎請求人は、本件貨物部品の取引総額が記載された書類と、取引総額の一部のみが記載されているインボイスを受け取った。
◎請求人はインボイスのみを必要書類として通関業者に渡し、消費税の申告を行った。
◎原処分庁が、当該部品に係る代金としての請求人の支払金額に比して不足額が認められるとして、消費税及び地方消費税の更正処分を行うとともに、請求人が適正な課税価格を明らかにする書類を隠匿し、事実を隠ぺいしたとして、重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該書類を隠匿しておらず事実の隠ぺいには該当しないとして、当該賦課決定処分の全部の取消しを求めた事案である。
・請求人は、エスカレーター部品の中華人民共和国(以下「中国」という。)からの輸入に際し、輸入貨物に係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、平成22年6月8日に、原処分庁から委任を受けたF税関e出張所長(以下「e出張所長」という。)に対して、次表の「当初申告」欄のとおりとする輸入(納税)申告(以下「本件申告」といい、本件申告により輸入されたエスカレーター部品を「本件貨物」という。)をした。
・請求人は、本件申告に係る申告書において、中国所在の貿易商社であるG社を本件貨物の輸出者(仕出人)とするとともに、以下を添付した。
◎①「COMMERCIAL INVOICE」と題する書類(以下「本件インボイス」という。)、
◎②「BILLOF LADING」と題する書類(以下「本件船荷証券」という。)、
◎③「PACKING LIST」と題する書類(以下「本件包装明細書」という。)及び
◎④「ARRIVAL NOTICE」と題する書類(以下「本件貨物到着案内通知」といい、
◎①~④を併せて「本件通関添付書類」という。
・本件インボイスに記載された本件貨物の代金額に運賃の額を加算した金額を本件貨物の課税価格(関税の課税標準となる価格をいう。以下同じ。)として、当該課税価格を基に納付すべき消費税等の額を計算していた。
・なお、当該申告書において、通関業者であるM社(以下「本件通関業者」という。)が、請求人の代理人とされていた。
・実は、上記①~④では本件取引の総額は把握できない状態であった。
・処分日←平成25年4月24日
・調査日、不明
・調査対象期間、不明
・なお、請求人は、本件貨物の購入に係る発注先であった中国所在のH社から受領した価格明細表(以下「本件価格明細表」という。)及び支払説明書(以下「本件支払説明書」といい、本件価格明細表と併せて「本件価格明細表等」という。)を有していたところ、e出張所長は、本件インボイスに記載された本件貨物の代金額について、本件価格明細表等に基づき本件貨物に係る代金としての請求人の支払金額に比して不足額が認められるとして、本件更正処分において、当該不足額を本件貨物の課税価格に算入すべきとし、当該算入した後の課税価格を基に納付すべき消費税等の額を計算した。

(2)争点
本件の争点は、本件申告に際して、本件貨物の適正な課税価格を明らかにする書類の一部を本件通関業者に送付しなかったことが、事実の隠ぺいに該当するか否かである。

(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記はありませんが、国税庁は、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)において、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としており、それが引用されていると解されます。

(4)審判所の判断
・請求人は、本件貨物を含むエスカレーター部品の輸入取引を、H社との間で行っていた。
・請求人は、平成22年6月2日、H社から、本件貨物及びg店分貨物に係る本件支払説明書並びに本件貨物に係る本件インボイスをファックスで受け取った。
・本件支払説明書には、作成者としてH社の名称とともに、貨物の価格の合計○○○○元の記載があり、この金 額は本件取引総額と一致しており、また、このうち日本円で○○○○円をG社に、残りの金額をH社にそれぞれ支 払うよう求める旨の記載がある。一方、本件インボイスには、作成者としてG社の名称とともに、本件貨物に係る契約番号、品名、数量及び単価に関する記載があり、総額として「JPY○○○○」と記載されている。
・請求人は、平成22年6月3日、H社から、本件船荷証券及び本件包装明細書をファックスで受け取った。
・請求人は、平成22年6月3日、本件通関業者に対し、
◎本件インボイス、
◎本件船荷証券及び本件包装明細書とともに、
◎本件貨物の海上輸送者であったK社から同月2日にファックスで受け取った本件貨物到着案内通知をファックスで送付したが、
◎本件価格明細表等については、いずれも送付しなかった。
・請求人の海外事業部のN担当者は、本件調査担当職員及び当審判所に対して、要旨次のとおり申述及び答述した。
◎私は、輸入貨物に係る税関への申告手続を通関業者に依頼するに当たって、①インボイス、B/L(船荷証券)、パッキングリスト(包装明細書)及びアライバルノーティス(貨物到達案内通知)の4種類の書類を通関業者に渡せばよいと考えていた。
◎本件インボイスに記載された金額についても、確認していないし、確認していないのでどのような金額であるのか分からない。社内の経理においてもインボイスに記載された金額に基づいて支払処理はされておらず、インボイスについて通関用の書類という認識しかなかった。仮に、本件インボイスの金額欄が空欄であれば気付いて連絡していたと思うが、その程度の認識しかなかった。
◎私は、税関の申告における課税標準額が、どのように計算されるか知らなかった。税関からも通関業者からも指導を受けたことはなかったからであり、通関についてのセミナーを受講したこともなかった。
・本件貨物の課税価格に、本件取引総額のうち本件インボイスに記載された金額以外の本件貨物の課税価格に算入すべき金額が含まれていなかったことは、請求人が、本件取引総額を示す書類として、本件通関業者に本件インボイスのみを送付し、本件価格明細表等を送付しなかったことに起因して生じた結果であったと認められる。
・N担当者の申述等は、各事実と整合するものと認められ、また、これら各事実と相違すると認めるに足る証拠もない。そうすると、輸入貨物に係る税関への申告手続を通関業者に任せていた請求人が、通関に当たって必要とされる書類を、
◎インボイス、
◎B/L(船荷証券)、
◎パッキングリスト(包装明細書)及び
◎アライバルノーティス(貨物到着案内通知)の4種類の書類であると認識し、本件貨物に係る税関への申告手続を本件通関業者に対して依頼する際においても、これらの4種類の書類が必要であると判断して、本件通関添付書類のみを本件通関業者に送付したとしても、不自然な行動であったとは認められない。
・請求人が、本件インボイス及び本件価格明細表等を含む本件貨物に係る取引内容を示す各書類を1冊のパイプ式ファイル内に保管し、本件調査担当職員の求めに応じて、当該パイプ式ファイルを提示したことを併せ考慮すると、請求人が、本件通関業者に本件インボイスのみを送付し、本件価格明細表等を送付しなかったことは、本件取引総額を意図的に漏れ落とすものであったとは認められない。

(5)結果
・調査対象期間(不明)の重加算税を取消す。

当該裁決のさらなる要約

・請求人は、輸入申告を通関業者に代理を依頼していた。
・請求人は、通関についての知識は乏しかった。したがって、取引総額を適正に代理人である通関業者に伝達できているのかどうかセルフチェックできなかった。
・原処分庁は、適正な課税価格を通関業者に伝達しなかったことは隠ぺい仮装に該当すると主張したが、認められなかった。

弊所独自の見解

・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。輸入申告については、仕組みの理解が難しいため委託通関業者に依頼していました。今回はそれが原因によるミスと思われます。しかし国税の主張は、適正な課税価格であるかどうかセルフチェックで気が付かなければ隠ぺい仮装だと主張しているようなものだからです。
◎当該裁決は、明記はありませんが、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決は、明記はありませんが、取引を把握できるような集計資料も存在していたと解されます。
◎当該裁決において、明記はありませんが、請求人の調査への協力具合は協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
制度や仕組みの複雑さ、難易度によるものであろうと推測されるミスについて国税が隠ぺい仮装を主張してくるケースがあるので、そのようないいがかりについては否定することで重加算税賦課を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)