(2023年11月11日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

平成25年11月13日裁決のオリジナルのあだ名

平成25年土地建物売買仲介手数料が架空ではなく実態に即しているとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1) 事案の概要
・本件においては、審査請求人(以下「請求人」という。)が、以下のように計算して確定申告を行った。
◎土地及び建物の取得価額180,000,000円、土地価額と建物価額は明確に区分されていない。
◎土地及び建物取得のために要した業務委託報酬42,500,000円(税込)
◎仲介手数料5,733,000円(税込)
◎180,000,000円-路線価格から算出した土地価格=建物取得価額(税込)
◎建物取得価額(税込)+業務委託報酬42,500,000円(税込)+仲介手数料5,733,000円(税込)を仕入税額控除として適用した。
・原処分庁が調査により勧奨した修正申告においては、以下のような計算式であった。
◎土地及び建物の取得価額222,500,000円(180,000,000+42,500,000)
◎土地及び建物の取得価額222,500,000円×(建物固定資産評価額/土地及び建物固定資産評価額)+仲介手数料5,733,000円(税込)を仕入税額控除として適用した。
・原処分庁は、本件不動産の売買価額は222,500,000円であるところ、これを180,000,000円とし架空の業務委託手数料42,500,000円の全額を建物に係る手数料として計上することにより控除対象仕入税額を過大に計上して消費税等の確定申告をしたのだから、請求人の行為には事実の仮装があるとして、修正申告に対し、本件賦課決定処分をした。
・請求人は、平成22年9月1日から平成23年8月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、法定申告期限までに申告した。
・調査による修正申告の勧奨による提出→平成24年6月11日
・処分日←平成24年6月27日
・消費税の調査対象期間
◎平成22年9月1日から平成23年8月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)←法定申告期限平成23年10月31日←処分日平成24年6月27日から1年以内
・原処分庁が、当該土地及び建物の購入に関する行為に、事実の仮装があったとして重加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、仮装の事実はないとして、同処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた。
・請求人は、昭和46年9月○日に設立された法人で、主に不動産の賃貸、管理及び保全、売買等の業務を行っており、本件課税期間における代表取締役はG(以下「G代表」という。)であった。
・平成23年3月4日付「不動産売買契約書」(以下「本件売買契約書」という。)
A 売主である本件売主と買主である請求人は、売主所有の本件不動産につき売買契約を締結した。
B 本件不動産の売買代金は180,000,000円(以下「本件売買契約代金」という。)とする。
・受託者をK社とする平成23年3月4日付「業務委託契約書」
A 委託者である請求人と受託者であるK社は、K社に対して請求人が依頼する本件不動産の各種調査、助言及び交渉をK社が行うにつき、業務委託契約を締結する。
B 請求人は、本件不動産の購入に伴い、次のCに定める業務をK社に委託し、K社はこれを受託する。
C 請求人がK社に委託する業務は、以下のとおりとする。
(A) 本件不動産の購入に関しての調整・交渉
(B) 取引の手続及び日程に関する検討並びに立案
(C) 契約書類の確定及び作成についての支援並びに履行についての助言及び支援
D 請求人は、K社が上記Cの業務を遂行し、本件不動産の売買契約が締結され、当該契約に基づいて本件不動産の引渡しが完了したときは、次のとおり報酬を支払うこととする。
(A) 報酬金額35,000,000円
(B) 消費税等相当額は上記金額に含む。
・受託者をL社とする平成23年3月4日付「業務委託契約書」(以下、業務委託契約書と併せて「本件各業務委託契約書」といい、本件各業務委託契約書と本件売買契約書を併せて「本件各契約書」という。)
A 委託者である請求人と受託者であるL社は、L社に対して請求人が依頼する本件不動産の各種調査、助言及び交渉をL社が行うにつき、業務委託契約を締結する。
B 請求人は、本件不動産の購入に伴い、次のCに定める業務をL社に委託し、L社はこれを受託する。
C 請求人がL社に委託する業務は、以下のとおりとする。
(A) 本件不動産の購入に関しての調整・交渉
(B) 取引の手続及び日程に関する検討並びに立案
(C) 契約書類の確定及び作成についての支援並びに履行についての助言及び支援
D 請求人は、L社が上記Cの業務を遂行し、本件不動産の売買契約が締結され、当該契約に基づいて本件不動産の引渡しが完了したときは、次のとおり報酬を支払うこととする。
(A) 報酬金額7,500,000円
(B) 消費税等相当額は上記金額に含む。
・請求人は、平成23年3月25日に、本件売主に対して180,000,000円、K社に対して35,000,000円、L社に対して7,500,000円の金員をそれぞれ支払った。
・請求人は、M社に対し、本件不動産の売買契約締結の仲介手数料(以下「本件仲介手数料」という。)として、平成23年3月4日に2,800,000円及び平成23年3月25日に2,933,000円の合計額5,733,000円(消費税等の額273,000円を含む。)を支払った。

(2)争点
請求人が行った本件不動産の購入に関する行為に、事実の仮装があったか否か。

(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記はありませんが、国税庁は、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)において、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としており、それが引用されていると解されます。

(4)審判所の判断
・当該各答述を総合すると、本件不動産の売買契約における取引価額の決定の経緯は、次のとおりであると認められる。
(イ) 請求人は、まず、本件不動産の購入価額として220,000,000円を提示した。
(ロ) これに対し、K社は、請求人から報酬を得ようと考え、J社から提示があった180,000,000円に、当該報酬の額として35,000,000円を上乗せし、L社に提示した。
(ハ) L社も、請求人から報酬を得ようと考え、K社の提示した額に当該報酬の額として7,500,000円を上乗せし、請求人に対して総額222,500,000円を提示した。
(ニ) 請求人は、上記(ハ)の総額222,500,000円が予算の範囲内であったため、その内訳を知らないまま購入を了承した。
(ホ) 請求人は、その後、本件不動産に係る売買契約締結までの間に、M社従業員Nから、権利関係の調整を行 う業者等が複数介在すること、本件売買契約代金として本件売主に対して180,000,000円を支払うこと、別途42,500,000円を支払うことを聞いた上で支払を了承し、そして、本件不動産に係る代金決済までの間に、当該42,500,000円について、K社及びL社に対して35,000,000円及び7,500,000円をそれぞれ支払うことを了承した上で、本件不動産を購入した。
・請求人と本件売主との間の売買取引の対価の額である本件不動産の売買価額は180,000,000円であると認めるのが相当である。
・K社及びL社は、請求人に対して、本件不動産の購入に伴う役務の提供を行ったと認めるのが相当であり、そして、本件の売買契約が締結され、請求人は本件不動産を購入したのであるから、請求人がK社及びL社に対して支払った金員は、両社が本件各業務委託契約書に記載された業務を行い、請求人に対して役務の提供をしたことに対する対価であると認めるのが相当である。そして、当該対価の額は、本件不動産の購入に要した費用の額に該当し本件不動産の取得価額に算入されるものではあるが、本件不動産の売買価額そのものであると認めることはできない。
・本件不動産の売買価額は180,000,000円であり、K社及びL社に対して支払われた各金員は、両社が本件各業務委託契約書に記載された業務を行い、請求人に対して役務の提供をしたことに対する対価であるところ、G代表の「M社従業員Nから、本件不動産の購入に当たり、権利関係の調整を行う業者等が複数介在している旨を聞き、また、取引の条件として、総額222,500,000円のうち本件売買契約代金として180,000,000円を支払い、残額42,500,000円は別な形で支払うよう言われた。当該42,500,000円の内訳の説明はなかったが、総額222,500,000円が予算だったので了承した。」との答述の意味するところは、本件不動産の売買契約における取引価額の決定の経緯を踏まえると、請求人は、当初、本件不動産を総額222,500,000円で購入することを決めたが、本件売買契約代金を180,000,000円とし、差額の42,500,000円をK社及びL社に支払うという取引条件の提示を受け、これに応じて、本件売買契約書及び本件各業務委託契約書に係る契約を締結したと評価するのが相当であるから、本件各契約書は、いずれも取引の実態に即したものというべきである。
・したがって、請求人が、本件不動産の売買価額を分散したとは認められず、ほかに、請求人が、本件不動産の購入に関し、何らかの事実を仮装したと認めるに足る客観的な証拠もないから、請求人が行った本件不動産の購入に関する行為について、事実の仮装はなかったと認めるのが相当である。

(5)結果
平成22年9月1日から平成23年8月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)←重加算税を取消す

当該裁決のさらなる要約

・請求人は、複数の法人や、様々な人物の仲介を受けて土地及び建物を取得を行った。その実態に沿って、土地及び建物の取得費と仲介手数料を分けて計上した。
・原処分庁は、上記の仲介手数料は架空であり、虚偽の契約書を作成したことは隠ぺい仮装に該当すると主張したが、認められなかった。

弊所独自の考察

・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。確かに今回の取引内容は複雑でしたが、その金額の大きさに着目して、役務の提供を伴う仲介手数料を架空の手数料だと国税が主張したように感じたからです。
◎当該裁決は、明記はありませんが、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決は、明記はありませんが、取引を把握できるような集計資料も存在していたと解されます。
◎当該裁決において、明記はありませんが、請求人の調査への協力具合は協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
取引の複雑さから生じる解釈の違いについて国税が隠ぺい仮装を主張してくるケースがあるので、そのようないいがかりについては否定することで重加算税賦課を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)