(2023年11月10日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる
平成24年2月22日裁決のオリジナルのあだ名
平成24年過去申告経験があり消費税法の知識を有していて無申告であっても調査に協力的であれば隠ぺい仮装を認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
本判決で弊所が分析できていない点
・※平成23年12月2日以前に法定申告期限が到来する国税の増額更正は、偽りその他不正の行為が存在しなければ個人事業主は処分日から3年以内のはずであるが、3年以降の増額更正処分されている点を現在追究しております。
裁決の内容、要約、編集
(1) 事案の概要
・本件は、断熱保温板金工事業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)を受け、所得税並びに消費税及び地方消費税(以下、消費税及び地方消費税を併せて「消費税等」という。)の期限後申告をしたところ、
・原処分庁が、請求人は事業所得の金額並びに消費税の課税標準額を容易に知り得る状況にあり、確定申告をすべきことを十分に認識していたにも関わらず確定申告をしなかったことは、重加算税の賦課要件を満たすなどとして、所得税及び消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分を行ったことに対し、
・請求人が、隠ぺい又は仮装の事実はないとして、それらの全部の取消しを求めた事案である。
・所得税の調査対象期間
◎平成17年分→法定申告期限平成18年3月15日←処分日平成22年11月12日から5年以内(※平成23年12月2日以前に法定申告期限が到来する国税の増額更正は、偽りその他不正の行為が存在しなければ個人事業主は処分日から3年以内のはずである)
◎平成18年分→法定申告期限平成19年3月15日←処分日平成22年11月12日から4年以内←処分日平成22年11月12日から5年以内(※平成23年12月2日以前に法定申告期限が到来する国税の増額更正は、偽りその他不正の行為が存在しなければ個人事業主は処分日から3年以内のはずである)
◎平成19年分→法定申告期限平成20年3月15日←処分日平成22年11月12日から3年以内
◎平成20年分→法定申告期限平成21年3月15日←処分日平成22年11月12日から2年以内
◎平成21年分→法定申告期限平成22年3月15日←処分日平成22年11月12日から1年以内
・消費税の調査対象期間
◎平成20年分→法定申告期限平成21年3月31日←処分日平成22年11月12日から2年以内
◎平成21年分→法定申告期限平成22年3月15日←処分日平成22年11月12日から1年以内
・請求人は、平成18年3月までは、請求人の父Hから毎月定額で仕事を請け負っていたが、同年4月に、Hの事業を引き継ぎ、請求人名義のJという屋号で、Hの取引先であったK社から工事を請け負うようになり、断熱保温板金工事業を個人で営むようになった。
・なお、請求人が個人で営むようになった後の請求人の売上先は、K社1社のみであり、同社への売上代金は、全てL銀行j支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)(以下「本件預金口座」という。)に振り込まれていた。
・請求人は、F税務署長に対し、平成10年3月16日に、所得税の青色申告承認申請書を提出し、平成10年分以降の所得税の青色申告の承認を受けており、平成16年分の所得税の確定申告は、青色の確定申告書により法定申告期限内に行われた。
・調査日→平成22年8月25日
・処分日→平成22年11月12日
(2)争点
請求人が法定申告期限までに本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等の確定申告書を提出しなかったことについて、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件は満たされているといえるか否か。
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記はありませんが、最高裁平成7年4月28日判決=オリジナル命名:最高裁平成7年積極的な隠蔽なしの無申告だが当初から過少申告の意図を外部からうかがい得る行動した判決、を引用したと解されます。
(4)審判所の判断
・請求人は、本件調査担当職員から本件調査の事前通知があった際に、平成17年分以降の所得税の確定申告をしていないこと、帳簿の記帳がないこと、売上げの請求書の控えはあるが集計していないこと、経費については全く未整理であることを申し出た。
・請求人は、都合により当初の臨場調査の日を3週間ほど延期したが、平成22年8月25日には、本件調査担当職員の指示に従い、
◎本件各年分の事業所得の総収入金額及び必要経費の額についておおむね月別に集計したノート(以下「本件集計ノート」という。)、
◎平成18年3月31日から平成22年8月10日までの売上げに係る請求書の控え(2冊)、
◎平成19年5月から平成22年7月までの給料支払明細書の控え(3冊)、
◎従業員全員の出勤状況を記載した平成18年3月、同年10月、平成19年4月から平成20年5月まで及び同年7月から平成22年8月までの間の出勤簿、
◎平成19年分ないし平成21年分の給料賃金以外の必要経費に係る領収書、見積書の控え並びに本件預金口座の使用中の通帳を提示した。
◎請求人が記帳したものは、本件集計ノート以外にはなかった
◎請求人は、本件調査に終始協力的であった
・請求人は本件各年分の事業所得の金額を算定する上で必要となる書類等を全て保存していたわけではない
・本件調査担当職員の要請に基づいて短期間で作成可能であった本件集計ノートを請求人 が本件各年分の法定申告期限までに作成していなかったが、これらの理由について、本件調査担当職員は請求人から聴き取っていない。
・平成18年6月21日に、請求人からの電話連絡を受けた本件徴収担当職員は、請求人から、納税について相談したい旨及び平成17年分の所得税の確定申告をしたい旨の申出を受け、平成18年6月末までに、確定申告をするために必要な書類を持参してE税務署に出向くよう伝えた。なお、この際、本件徴収担当職員が請求人に対し具体的に指摘した事項は、明らかでない。
・請求人は、Hから仕事を請けていた平成18年3月までは、月に40万円の収入があり、手元に30万円くらいが残り、同年4月以降は、月に40万円くらい妻に渡し、自分も月に20万円くらい使うので、月に60万円くらいはもうけがあったと思う旨申述していることから、請求人は、所得金額について認識していたものと認められる。
・請求人は、Hから事業を引き継ぐ以前の平成16年分において、青色申告書により所得税の確定申告を法定申告期限内にしている。
・消費税等については、売上先から消費税を受け取っており、売上げが1,000万円を超えると、2年後に消費税等の確定申告をしなければならないことは分かっていた旨申述している
・請求人は、確定申告の必要性を認識しており、また、請求人が申告しなかった理由の一つとして租税の負担を免れるという点があったものと認められる。
・請求人は、a市役所の職員が行った市民税の問い合わせに対して、「税務署で青色申告をしている」旨回答し、申告していない事実を意図的に隠ぺいした旨主張するが、請求人が少なくとも平成16年分の所得税は青色申告書で確定申告しているのは事実であり、また、確かに請求人は本件各年分の所得税は確定申告をしておらず、この点をもって、事実と異なる話をしたともいえるが、その話の相手方はa市役所の職員であるから、そのことをもって、積極的な隠ぺい、仮装行為があり、その隠ぺい、仮装したところに基づいて申告しなかったものともいえないし、租税負担を免れる意図を外部からもうかがい得る特段の行動と評価することもできない。
・原処分庁は、請求人が売上先から消費税を受け取っており、売上金額が1,000万円を超えると、2年後に消費税等の確定申告をすべきことを十分に認識していたにも関わらず、申告をしなかった、請求人は、平成18年6月に本件徴収担当職員から申告をしていないことを指摘されたにも関わらず、申告しなかった、などと主張するが、いずれによっても、請求人が納税申告書を提出しなかったこととは別に、積極的な隠ぺい、仮装行為が存在し、これに合わせて納税申告書を提出しなかったものとはいえず、租税負担を免れる意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったともいえない。
・そして、請求人の売上先は、K社1社のみであり、同社への売上代金は、全て請求人 名義の本件預金口座に振り込まれており、請求人は、本件調査担当職員から本件調査の事前通知があった際に、平成17年分以降の所得税の確定申告をしていないこと、帳簿の記帳がないこと、売上げの請求書の控えはあるが集計していないこと、経費については全く未整理であることを申し出て、本件調査担当職員から、臨場調査の日までに、保存してある書類をノートのようなものに書き出して集計するように指示 され、請求人は、最初の臨場調査が行われた平成22年8月25日には、本件調査担当職員の指示 に従い、本件集計ノートのほか、保存されていた全ての書類を提示し、請求人が記帳したものは、本件集計ノート以外にはなかったが、請求人は、本件調査に終始協力的であったことが認められる。
(5)結果
・所得税の調査対象期間
◎平成17年分→法定申告期限平成18年3月15日←処分日平成22年11月12日から5年以内(※平成23年12月2日以前に法定申告期限が到来する国税の増額更正は、偽りその他不正の行為が存在しなければ個人事業主は処分日から3年以内のはずである)←重加算税賦課を取消す
◎平成18年分→法定申告期限平成19年3月15日←処分日平成22年11月12日から4年以内←処分日平成22年11月12日から5年以内(※平成23年12月2日以前に法定申告期限が到来する国税の増額更正は、偽りその他不正の行為が存在しなければ個人事業主は処分日から3年以内のはずである)←重加算税賦課を取消す
◎平成19年分→法定申告期限平成20年3月15日←処分日平成22年11月12日から3年以内←重加算税賦課を取消す
◎平成20年分→法定申告期限平成21年3月15日←処分日平成22年11月12日から2年以内←重加算税賦課を取消す
◎平成21年分→法定申告期限平成22年3月15日←処分日平成22年11月12日から1年以内←重加算税賦課を取消す
・消費税の調査対象期間
◎平成20年分→法定申告期限平成21年3月31日←処分日平成22年11月12日から2年以内←重加算税賦課を取消す
◎平成21年分→法定申告期限平成22年3月15日←処分日平成22年11月12日から1年以内←重加算税賦課を取消す
当該裁決をさらに要約
・請求人は申告済みの年も存在していた。
・請求人は事前通知の際に帳簿を作成していないことを申し出るなど終始調査に協力的であった。
・請求人は所得税や消費税の知識を有していた。
・事前通知後に自身で集計ノートを作成する能力を有していた。
弊所独自の考察
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は無申告でした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりとはいえない、と弊所が感じた事例です。請求人である納税者は確定申告の経験や知識を有しているにも関わらず無申告だったからです。
◎しかしやはり無申告の場合は隠ぺい仮装は無かったとされる傾向にあるようです。
◎当該裁決は、最高裁平成7年外部からうかがい得る特段の行動判決における、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用しています。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が全て保存していたわけではなかった。
◎当該裁決は、取引を把握できるような集計資料が無いことを事前通知の時点で申し出ている。その後調査日までに集計した。
◎当該裁決は、調査期間対象期間以前においては申告済みの期間が存在していた。
◎当該裁決は、消費税の申告義務の知識についても有していたと考えられる。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、終始協力的であった。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言の有無は不明である。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
過去に申告経験があり知識を有しているが無申告であっても調査に協力的で虚偽発言がなければ重加算税賦課を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)