(2023年11月10日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる
平成24年2月14日裁決のオリジナルのあだ名
平成24年eワラント取引について夫からや法人での運用知識から知識を有しており申告済みの年もあったが無申告だった年について隠ぺい仮装を認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、有価証券取引により生じた利益に係る所得を申告していなかったことについて、原処分庁が、
・①平成16年分の所得税の無申告に対し、偽りその他不正の行為及び隠ぺい、仮装に当たる行為があったとして所得税の決定処分及び重加算税の賦課決定処分を、
・②平成19年分の所得税の期限後申告に対し、隠ぺい、仮装に当たる行為があったとして重加算税の賦課決定処分を、それぞれ行ったところ、
・請求人が、偽りその他不正の行為及び隠ぺい、仮装に当たる行為はないとして、
・①については全部の、また、
・②については一部の取消しを求めた事案である。
・請求人は、平成16年3月○日以降、夫Gが取締役を務めるH社の代表取締役に就任していた。なお、H社は、請求人が350万円、夫Gが250万円をそれぞれ出資し、請求人らの自宅を本店所在地と定めて設立された、有価証券の取得、投資等を目的とする法人であり、請求人及び夫G以外の役員及び従業員はいない。
・請求人は、平成15年12月14日以降、個人としてオプション取引の一種であるeワラント取引を行った。
・請求人は、H社設立後の平成16年4月7日以降は、同社の代表取締役として法人のためにeワラント取引を行った。
・請求人は、平成16年分の所得税の確定申告書を、法定申告期限までに提出しなかった。
・請求人は、平成18年中にH社から支給された給与○○○○円を給与所得とし、また、同年中のeワラント取引により生じた損失の額(別表2の「請求人」欄の平成18年の「差引損益」の項の額)を雑損控除の対象とする旨記載した平成18年分の所得税の確定申告書を平成19年3月3日に提出し、その後の同月15日(法定申告期限内)に、上記eワラント取引により生じた損失の額を短期譲渡所得の損失の額とする旨の確定申告書を改めて提出した。
・請求人は、平成19年分の所得税の確定申告書を、法定申告期限までに提出しなかった。
・請求人は、平成20年中にeワラント取引により生じた利益の額を○○○○円とし、これを雑所得の金額として記載した平成20年分の所得税の確定申告書を、法定申告期限までに提出した。
・調査日→平成22年4月6日
・修正申告の勧奨による提出→平成22年4月19日←平成19年分所得税
・処分の日←平成22年8月31日
・所得税の調査の対象となった期間
◎平成16年分→法定申告期限平成17年3月15日→処分日平成22年8月31日から6年以内
◎平成19年分→法定申告期限平成20年3月15日→処分日平成22年8月31日から3年以内
(2)争点
・争点1、平成16年分について、偽りその他不正の行為があったか否か。
・争点2、平成16年分及び平成19年分について、隠ぺい、仮装に当たる行為があったか否か。
3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
最高裁平成7年4月28日判決=オリジナル命名:最高裁平成7年積極的な隠蔽なしの無申告だが当初から過少申告の意図を外部からうかがい得る行動した判決、を引用したと明記されています。
(4)争点1(平成16年分について、偽りその他不正の行為があったか否か。)について審判所の判断
・平成16年から平成19年までの間、H社が実際に行った事業は、eワラント取引のみであり、H社は、平成16年3月○日から平成18年12月31日までの各事業年度において、当該取引(事業)に係る法人税の各確定申告を、いずれも法定申告期限内に行った。これらはまず、夫Gが、決算期末の翌年2月頃、インターネットを経由して、証券会社を通じて行った1年分の有価証券取引のデータをダウンロードし、それを集計した金額のほか、請求人から指示された費用などの金額をパソコンに入力し、そのデータを基に会計ソフトを用いて決算報告書を作成し、次に、請求人が、所轄税務署の職員に相談しながら、当該決算報告書に基づく確定申告書を作成し、提出するという方法で行われた。
・これを本件についてみると、請求人は、平成16年分の所得税について、請求人が同年中に個人として行ったeワラント取引により利益を得たにも関わらず、同年分の所得税の確定申告書を提出しなかったものの、当該取引の際には自己の名義を使用し、また、本件調査の際には夫Gが、原処分担当者に対して請求人が個人としてeワラント取引を行った証券会社の名称を全て明らかにしており、積極的な所得秘匿工作があったとは認められない。
・そこで、上記の無申告自体が「偽りその他不正の行為」と評価すべき態様の不申告行為に当たるか否かを検討する。
・請求人は、平成16年中に法人(H社)を設立してから平成18年12月までの間、事業年度ごとに、夫Gと2人で法人のために行ったeワラント取引に係る法人税の確定申告をしている。
・請求人は、平成15年に個人としてのeワラント取引を開始してから平成20年までの間、当該取引によって、平成15年、平成16年、平成19年及び平成20年には利益を、平成17年及び平成18年には損失を、それぞれ生じている
・しかし平成18年分(当該取引に係る損失)及び平成20年分(当該取引に係る利益)についてのみ、申告をしている。
・もっとも、請求人は、個人としてのeワラント取引により申告を要する額の利益を生じた年分(平成16年分、平成19年分、平成20年分)のうち、最も多額の利益を生じた平成20年分の当該取引に係る所得について、法定申告期限までに自ら申告をしている。
・上記のような申告状況(特に平成20年分の申告状況)は、請求人個人のeワラント取引に係る所得税を免れる意図を有していたこととは、相容れない面がある。
・以上のことからすると、請求人が、平成16年分の申告の時点で、原処分庁が主張するように、請求人個人のeワラント取引に係る所得税を免れる意図を有していたとは認められない。
・原処分庁は、①H社の法人税の申告状況)及び②(夫Gの所得税の申告事情等)を根拠に、請求人が個人として行ったeワラント取引に係る所得税を免れる意図を有していたことを推認できる旨主張するものの、上記①及び②は、いずれも請求人が個人として行うeワラント取引に関する請求人の認識を直接示す事情ではない。
・したがって、請求人の平成16年分の所得税の申告について、「偽りその他不正の行為」があったとは認められない。
・平成16年分については、本件決定処分は、通則法第70条第5項の要件を満たさず、同条第3項に規定する決定の期間制限を徒過してなされた違法な処分であるから、その全部を取り消すべきである。また、それを基礎としてされた本件平成16年分賦課決定処分も、同様に違法であるから、その全部を取り消すべきである。
・そうすると、そもそも重加算税の計算の基礎となるべき税額が存在しないこととなるから、争点2についての原処分庁の主張は、これを検討するまでもなく理由がない。
(5) 争点2(平成19年分において、隠ぺい、仮装に当たる行為があったか否か。)について審判所の判断
・これを本件についてみると、請求人は、平成19年分の所得税について、請求人が同年中に個人として行ったeワラント取引に係る利益が生じたにも関わらず、法定申告期限までに同年分の所得税の確定申告書を提出せず、本件調査の後の平成22年4月19日、平成19年分の所得税の期限後申告書を提出しているところ、当該取引の際には自己の名義を使用し、また、本件調査の際には夫Gが、原処分担当者に対して請求人が個人としてeワラント取引を行った証券会社の名称を全て明らかにしており、上記の無申告とは別の隠ぺい又は仮装に該当する積極的な行為があったとは認められない。
・そこで、以下では、上記の無申告そのものとは別に、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」が存在し、これに基づく無申告であったか否かを検討する。
・請求人は、平成20年分の所得税については、同年中のeワラント取引によって生じた利益を雑所得として、法定申告期限までに申告したのであるから原処分庁の主張するように、請求人がeワラント取引により損失が生じた場合にのみ申告をしていたとはいえない。したがって、上記の請求人の行為は、請求人が当初から所得を申告しない意図であったことを外部からもうかがい得る特段の行動に当たらない。
・証券会社に有価証券取引用の口座を開設し、インターネットを経由して、当該証券会社を通じて当該取引をした場合には、その取引のデータは、一定期間、インターネットを経由して当該証券会社から入手することができるのであり、また、当該取引用口座の解約後も、一定期間は、当該証券会社に照会して当該取引のデータを入手することができることは明らかである。そして、現に、原処分担当者は、請求人個人のeワラント取引に係る全ての取引のデータを、証券会社から入手することができている。
・そうすると、請求人が、当該各取引のデータを紙に出力して保存しておらず、また、証券会社から送付された取引残高報告書を保存していなかったことをもって、請求人が、納税者であれば通常保管しておくはずの証拠書類を保存せず、散逸するに任せていたと評価するのは相当でない。したがって、上記の請求人の行為は、請求人が当初から所得を申告しない意図であったことを外部からもうかがい得る特段の行動に当たらない。
(5)結果
◎平成16年分→法定申告期限平成17年3月15日→処分日平成22年8月31日から6年以内←偽りその他不正の行為が存在せず増額更正対象期間外→処分の全てを取消す
◎平成19年分→法定申告期限平成20年3月15日→処分日平成22年8月31日から3年以内←重加算税を取消す
当該裁決をさらに要約
・請求人の夫もeワラント取引を行っていた。
・請求人は法人の代表取締役として、法人のeワラント取引を行っていた。
・請求人は自身のeワラント取引について申告済みの年も存在していた。
・取引に関する資料は紙に出力はしていなかったが、インターネット経由で入手可能であった。
弊所独自の考察
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は無申告でした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりとはいえない、と弊所が感じた事例です。なぜなら請求人である納税者は、確定申告の経験や知識を有しているにも関わらず無申告であったからです。
◎しかしやはり無申告の場合は隠ぺい仮装は無かったとされる傾向にあるようです。
◎当該裁決は、最高裁平成7年外部からうかがい得る特段の行動判決における、外部からうかがい得る特段の行動部分を引用しています。
◎当該裁決は、偽りその他不正の行為が争点となっておりますが、隠ぺい仮装との違いについての言及はありませんでした。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が紙には出力されていなかったが、インターネットでアカウントログインすれば取得可能であった。
◎当該裁決は、取引を把握できるような集計資料の保存があったかどうかは不明であるが、インターネットでアカウントログインすれば取得可能であったと思われる。
◎当該裁決は、申告済みの年と無申告の年が混在し、最も利益が出ている年が申告済みであった。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は夫か協力的であった。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言の有無は不明である。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
無申告である年度及び申告済みである年度が混在している場合、最も利益が出ている年度が申告済みであることを主張すれば重加算税賦課を回避できる可能性があります。(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)