(2023年11月10日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

平成23年1月25日裁決のオリジナルのあだ名

平成23年勤務先の商品横流し販売無申告は隠ぺい仮装を認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提

・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要

・本件は、会社員である審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の勤め先の取引先と、勤務の傍ら個人的に行った取引に係る事業所得があるとして、所得税の期限後申告書を提出したところ、原処分庁が、隠ぺい又は仮装と同視し得る行為があったとして、重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、重加算税の賦課要件を満たさないとして、原処分のうち無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。
・請求人は、コンピュータ及びコンピュータ関連商品等の販売を業とするC社に勤務し、同社のD営業所長の地位にあった者である。C社のD営業所に勤務する従業員は請求人のみであり、請求人は、同社から、同営業所におけるすべての業務を一任されていた。
・請求人は、C社のD営業所における週ごとの売上げに関する明細書を作成し、週に1回、本社あてに電子メールで送信していた(以下、この明細書を「本件請求書明細」という。)。
・請求人は、D営業所の業績が良好であるにもかかわらず、C社から支払われる給与が減額されたことなどに不満を感じ、平成18年8月から平成21年9月までの間、本社が定めた同営業所の売上年間計画を達成するように業績を管理する一方で、請求人個人としてもコンピュータ関連商品を仕入れ、これをC社の取引先等に販売する取引を行って、事業所得を得ていた(以下、この取引を「本件個人取引」という。)。
・請求人は、本件個人取引の大部分を、C社の取引先であり、コンピュータ及びコンピュータ関連商品の販売を業とするE社との間で行っていた。
・請求人は、本件個人取引を行うに当たって、C社が使用する請求書とは別の、請求人個人名義の請求書を使用し、代金の振込先として、F銀行に開設した請求人名義の口座(以下「本件個人取引等管理口座」という。)を指定するなど、本件個人取引を、請求人個人の実名で行っていた。なお、請求人は、本件個人取引に係る仕入代金を、本件個人取引等管理口座から支払っていた。
・請求人は、E社との間で本件個人取引を行う都度、E社の従業員で同社側の窓口となっていたGに対し、取引金額のおおむね1%に相当する金額をリベートとして、同人名義の銀行口座に振り込んで支払っていた(以下、この振り込んだ金員を「本件リベート」という。)。
・請求人は、本件個人取引のすべてについて、本件個人取引に係る販売価格、仕入価格、本件リベートの金額、粗利及び粗利累計の額を記録した表(以下「本件粗利集計表」という。)をパソコンの表計算ソフトを用いて作成し、管理していた。
・所得税の調査対象期間
◎平成18年分←法定申告期限平成19年3月15日←処分日平成22年2月26日から3年以内
◎平成19年分←法定申告期限平成20年3月15日←処分日平成22年2月26日から2年以内
◎平成20年分←法定申告期限平成21年3月15日←処分日平成22年2月26日から1年以内
・調査日←平成21年12月7日
・修正申告の勧奨による提出→平成22年1月8日
・処分日←平成22年2月26日

(2)争点
請求人が、本件各年分の所得税の確定申告書を法定申告期限後に提出したことについて、通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装行為があったか否か。

(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記はありませんが、国税庁は、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)において、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としており、それが引用されていると解されます。

(4)審判所の判断

・本件リベートは、E社の複数の取引先の中から請求人を選んでもらう趣旨で支払われた謝礼であったと認められ、本件個人取引を秘匿することを意図して支払われた口止め料であったとはいえない。
・請求人が、C社とは無関係に個人で行った取引であって、その売上げは、C社のD営業所の売上げではないから、請求人が主張するとおり、本件個人取引の売上げを本件請求書明細に記載しないことは当然である。
・以上によれば、Gに対して本件リベートを支払ったこと及び本件請求書明細に本件個人取引を記載せずにC社の本社に報告したことが、上記特段の行動に該当し、本件で重加算税の賦課要件を満たすとの原処分庁の主張は採用することができず、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によっても、ほかに請求人が本件個人取引及びこれに係る事業所得を隠ぺい又は仮装したと評価すべき事実は認められない。

(5)結果

◎平成18年分←法定申告期限平成19年3月15日←処分日平成22年2月26日から3年以内←重加算税を取消す
◎平成19年分←法定申告期限平成20年3月15日←処分日平成22年2月26日から2年以内←重加算税を取消す
◎平成20年分←法定申告期限平成21年3月15日←処分日平成22年2月26日から1年以内←重加算税を取消す

当該裁決をさらに要約

・請求人は勤め先の商品を勝手に個人として横流し販売していた売上に関して無申告だった。
・売上がわかる通帳の保存があった。
・収支をまとめた集計表が存在した。
・原処分庁は単なる無申告ではなく、リベートを支払ったこと、勤め先に隠していたことが隠ぺい仮装にあたると主張したが、隠ぺい仮装は無かったとされた。

弊所独自の考察

・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は無申告でした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりとは言えない、と弊所が感じた事例です。なぜなら請求人である納税者は資料を保存し、集計した資料も存在しているので確定申告書を作成できる能力を有していながら無申告であったからです。
◎しかしやはり、無申告の場合は隠ぺい仮装を認めない傾向にあると解されます。
◎当該裁決は、取引の大部分を把握できるような資料の保存があった。
◎当該裁決は、取引の大部分を把握できるような集計資料の保存がパソコンにあった。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は不明である。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言の有無は不明である。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
資料を保存する能力及び集計する能力を有しており、集計表の存在を発見された状態で無申告であっても、重加算税賦課を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)