(2023年12月20日作成)(2024年5月16日再編集)(2025年11月23日再編集)

結論

・現在存在する情報をまとめると日本人の成人は95%以上銀行口座を保有していると解されます。いわゆるタンス預金は現金管理リスクが高すぎるため、現金は預貯金で管理していると解されます。
・預貯金口座残高が勝手に増加することは無い(受取利息や受取配当金を除く)わけですから、増加した場合は受贈や収入があった証拠が残ることとなります。つまり隠すことが困難となります。
・昭和から平成初期であれば「すべて現金取引で完了し預金口座取引を通さず全てタンス預金」という状態もあったかもしれません。このような無申告者に対する税務調査のイメージが現在も浸透しているように思われますが、現在は少ないと解されます。
・現在において、ネットやホームページやアカウントを全く利用せず商売を行うことは困難と解されます。ネットを通すということはそのデータが残るということです。
・現在において、住所不特定やこっそりひっそりと商売をしていたとしても、消費者のネット上における口コミなどを制限することは困難であり、ネット上にあなたの存在を示す情報が掲載される可能性も高いです。

下記で詳細を記述します。

現在存在する情報をまとめると日本人の成人は95%以上銀行口座を保有していると解されます。いわゆるタンス預金は現金管理リスクが高すぎるため、現金は預貯金で管理していると解されます。

金融広報中央委員会「知るぽると」サイトにおいて下記の記述があります。

日本は、ほぼ全ての成人が銀行口座を保有しており、銀行預金を使った便利な支払い方法が早くから発展、普及してきました。ちなみに、15歳以上の銀行口座の保有率をみると、日本は98%、ユーロエリアは95%、米国は93%となっており、日本が一歩リードしています(2017年時点)。

一般社団法人 全国銀行協会、よりよい銀行づくりのためのアンケート(報告書)(2024年10月)P10より

金融機関は利用していない、は2.9%(つまり保有率は97.1%

銀行口座を保有していても利用せずタンス預金として貯蓄することも考えられますが、そのリスクは高すぎます。多くの方が例外なく銀行口座に現金を預金していると予想されます。

預貯金口座残高が勝手に増加することは無い(受取利息や受取配当金を除く)わけですから、増加した場合は受贈や収入があった証拠が残ることとなります。つまり隠すことが困難となります。

受取利息や受取配当金を除けば、預金残高が理由もなく勝手に増加することは考えられず、受贈や収入があった可能性が高く、またその証拠が残ることとなります。

税務署の調査官は、通帳明細であればその権限を利用して取得することが可能です。そうすると当該通帳明細を根拠に税務調査に発展した場合における聞き取り調査において、「なぜ預金残高が増加しているかわからない」ととぼけ続けることは困難と解されます。

みなさんがイメージする無申告税務調査は昭和から平成初期の無申告税務調査かもしれません

みなさんが思い浮かべる無申告者の税務調査のイメージは下記のようなイメージと解されます。

・移動販売車のラーメン屋が口頭の注文のやり取りのみで伝票は無し、現金のみでやり取りをしており、売上は無申告。この場合の税務調査は売上伝票や通帳の売上入金の証拠がないから、おしぼりの仕入れの数やお箸の仕入れの数から売上を推計して課税する。税務調査の調査官はとても横柄な態度で荒っぽくて暴言を吐く。

ただ上記の例では様々な突っ込みどころが存在します。

・移動販売車で無申告←仮に当該ラーメン屋がおいしかったとしたら、食べた消費者が「おいしかったよ」とSNS等でつぶやくかもしれません。また移動販売車であっても営業許可が必要となります。このような状況から、税務署に対してその存在を全く隠すことは、現在においては困難と解されます。
・現金のみでやり取り←現在はキャッシュレス化が進んでおります。現金オンリーの場合は、消費者が敬遠する確率が上がります。そうなると、現金取引のみのラーメン屋の売上はたかが知れている、となると解されます。
・おしぼりの仕入れの数やお箸の仕入れの数から売上を推計←確かにそのような方法で売上を推計することも考えられます。しかしながら推計課税に関しては「納税者からの反論」もありえるところ、当該反論は基本的には尊重しなければならず、税務署としては手間が発生します。それであるならば、「その人物の所有している預金口座に定期的に売上金のようなお金が入金されている」といった動かぬ数字のほうで税務署は納税者を問い詰めてくる、と解されます。

つまり、皆さんがイメージされる無申告の税務調査のイメージは少し古い、となります。なぜイメージが古くなるのでしょうか。私見としては下記となります。

・現在出版されている税務調査の本について、上記のような古い税務調査のエピソードが多く掲載されている傾向にあること。
・テレビ等のメディアで放送される税務調査の映像が、上記のような古い税務調査のエピソードが多く掲載されている傾向にあること。

国税庁公表の税務調査のデータから明らかとなること

個人事業主について

こちらのページをご参考ください。

個人所得税及び個人消費税の税務調査等データ

下記のような分類をしてデータを集計し、発表しております。

・富裕層に対する調査状況
・海外投資等を行っている個人に対する調査状況
・シェアリングエコノミー等新分野の経済活動(シェアリングビジネスサービス、ネット広告、アフィリエイト、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションその他新たな経済活動を総称した経済活動)
・暗号資産仮想通貨等取引
・無申告者に対する調査状況(当該無申告者がどのような取引による無申告かの分類情報は無し)

このような分類における調査対象者において、現金のみの取引である、通帳口座は利用していない、ネット取引は利用していない、そのような状況は考えにくいと解されます。

法人について

こちらのページをご参考ください。

法人税及び法人消費税の税務調査等データ
無申告に対して重加算税は賦課されるのか及び増額更正期間は5年か7年かについて

法人については、「意図的な無申告法人を把握した件数」として、おそらく無申告法人に対して重加算税が賦課された件数もわざわざ公表しています。また、「<主な不正の手口>~インターネット情報等で事業実態を把握し、取引の全貌を解明~」など不正発見の方法もわざわざ公表しています。このような解説から、上記のような無申告のラーメン屋の税務調査のような例は中心ではないと解されます。

つまり、近年においては、税務署は「効率的に多額の無申告案件について、推計ではなく実額で動かぬ証拠を手に入れることに集中している」と解されます。

現在において、私たち納税者は、ネットやデジタル取引を介在せずに経済活動を行うことが困難であることから、どこかになんらかの売上の証拠が残る世の中と解されます。

したがって、永遠に無申告を貫くことは困難な世の中と解されます。

まとめ

昭和の時代と違い、通帳、ネット、ネットアカウント、などのデジタルを通してあなたの存在は把握されます。もし仮に売上等の収入があればそれを隠すこと、それを知らないととぼけることは困難な世の中と解されます。