事前通知と調査通知の違いとは

(2020年4月3日作成)(2023年7月27日再編集)(2024年4月23日再編集)(2025年11月24日再編集)

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結論

・調査通知で定められている通知項目は、①実地調査を行う旨②調査の対象となる税目③調査の対象となる期間、の3項目を通知するものであり、日時(調査日、調査開始時刻)は含まれておらず、事前通知は日時を含む7項目という明確な違いがあります。
・通知の前後を基準に加算税の賦課や減額を判断するところ日時項目を含む事前通知のみではその基準に疑義や混乱を招く恐れがあるところから日時項目を除く調査通知が導入されたと解されます。
・そうすると調査官が調査通知で調査を行う旨を伝え一度電話を切り、納税者から日時の提案を受け、改めて調査官が日時の項目を含む事前通知を行うという2段階の手順を踏むべきと解されます。
・しかしながら実務上は、調査通知において調査官が調査候補日を提案するため納税者が誘導にのり調査日を決定してしまうため同時に事前通知が発生しているように思われます。これは調査官の罠とも言えます。
・調査通知である税務調査官からの初回の電話においては税務調査候補日については保留とすることが望ましいと解されます。
下記で詳細を記述します。

調査通知で定められている通知項目は、①実地調査を行う旨②調査の対象となる税目③調査の対象となる期間、の3項目を通知するものであり、日時(調査日、調査開始時刻)は含まれておらず、事前通知は日時を含む7項目という明確な違いがあります。

税理士でも調査通知と事前通知の違いを知らない、又は混同している税理士も多いと予想されます。事前通知は7項目を通知するものであり、調査通知は3項目を通知するものとなります。

事前通知に必要な項目(国税通則法74条の9より)
① 調査を開始する日時
② 調査を行う場所
③ 
調査の目的
④ 調査の対象となる税目
⑤ 調査の対象となる期間
⑥ 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
⑦ その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

調査通知に必要な項目(加算税制度(国税通則法)の 改正 のあらましより)
①実地調査を行う
②調査の対象となる税目
③調査の対象となる期間

通知の前後を基準に加算税の賦課や減額を判断するところ日時項目を含む事前通知のみではその基準に疑義や混乱を招く恐れがあるところから日時項目を除く調査通知が導入されたと解されます。

現在の税制においては、「通知」の前後によって加算税賦課の有無や減額が定められております。事前通知においてはその「調査日時」が項目に存在します。「調査日時」とは調査官と納税者が合意しなければ定められないものとなります。そうすると、「調査日時が決定しなければ事前通知が完了しない、すなわち通知が永遠に行われない」ということは不都合が生じることととなります。そのため日時項目を除く調査通知が導入されたと解されます。

そうすると調査官が調査通知で調査を行う旨を伝え一度電話を切り、納税者から日時の提案を受け、改めて調査官が日時の項目を含む事前通知を行うという2段階の手順を踏むべきと解されます。

掲題通りとなりますが、調査通知及び事前通知が採用されているのであれば、本来であれば調査通知が行われ、その後納税者と日時を合意し、その後改めて事前通知を行う2段階の手順を踏むべきと解されます。

しかしながら実務上は、調査通知において調査官が調査候補日を提案するため納税者が誘導にのり調査日を決定してしまうため同時に事前通知が発生しているように思われます。

掲題通りとなります。調査官の思惑は下記と推測されます。

・調査通知の段階で調査日の候補日を挙げることにより納税者を誘導する方が、税務調査を3週間後程度に設定できるため都合がよい。
・調査通知後の事前通知という実務上の手間を省くことができる。

こちらのページをご参考ください。

調査日の何日前に調査通知が来るのでしょうか?

税務調査における事前通知の歴史

①~平成13(2001)年までは事前通知は明文化されていませんでした。
②平成13(2001)年3月27日付事務運営指針において「原則として事前通知する」とされました。
③平成23(2011)年度税制改正で平成25(2013)年1月1日以後は事前通知が行われることが国税通則法74条の9に規定されました。
④平成26(2014)年度税制改正で国税通則法74の9⑤により納税者への事前通知は納税代理人に対して行えば足りるとされ、平成26年7月1日以後にされる事前通知において適用されることになりました。
⑤平成28(2016)年度税制改正で加算税改正に伴い「調査通知」が導入され平成 29 年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用となりました。

①~平成13(2001)年までは事前通知は明文化されていませんでした。

驚くべきことですが、実は平成13年(2001年)までは税務調査の事前通知の有無は明文化されていませんでした。つまり事前通知をするかどうかは税務署職員の判断に任せられていたということになります。

・事前通知をした方がメリットが多いと考える税務署職員
・事前通知をしない方がメリットが多いと考える税務署職員

事前通知をした方がメリットが多いと考える税務職員は多かったと思われます。国税局査察部、通称マルサでなければ強制調査はできないです。つまり事前通知なしでアポなしで納税者を訪問しても「今日は都合が悪い」と言われてしまえばまず税務調査自体ができません。また仮に税務調査にしぶしぶ応じたとしても、帳簿、帳面、資料が準備されているわけではないでしょうからまずそれらの準備に時間がかかります。つまり税務調査は納税者の協力無しにはスムーズに進まないので、事前通知をしたほうが調査が円滑に進むのでメリットが多いと考える税務署職員もたくさん存在したと想像できます。

反対に事前通知をしない方がメリットが多いと考える税務署職員を存在したと思います。想像するに、性格的に荒っぽい方がそのような方法をとっていたと考えられます。例えば、納税者が無申告であることや過少申告であることについて心あたりがある場合は、税務署職員に対して強く主張できないことも多くあるでしょう。そのような納税者に対してこれまで多くの追徴課税を徴収してきた実績と自信がある税務署職員の方は、事前通知をしない方がメリットが多いと考えていたと思われます。

②平成13(2001)年3月27日付事務運営指針において「原則として事前通知する」とされました。

事務運営指針とは何でしょうか?事務運営指針とは国税組織における内規です。内規とはある組織の中でのみ適用される規則です。国税組織における内規で代表的なものが2つあります。

・通達:上位組織である国税庁が下位組織である国税局及び税務署へ通達する、法令解釈について基本的な考えをまとめたもの。
・事務運営指針:国税組織全体が国税組織の中で守るべき統一的な考えをまとめたもの。

<旧事務運営指針(平成13(2001)年3月27日)>
税務調査の際の事前通知について(事務運営指針)
1、税務調査に際しては、原則として、納税者に対し調査日時をあらかじめ通知(事前通知)する。ただし、事前通知を行うことが適当でないと認められる次のような場合については、事前通知を行わない。
①業種・業態、資料情報及び過去の調査状況等から見て、帳簿書類等による申告内容等の適否の確認が困難であると想定されるため、事前通知を行わない調査(無予告調査)により在りのままの事業実態等を確認しなければ、申告内容等に係る事実の把握が困難である想定される場合
②事前通知することにより、調査に対する忌避・妨害、あるいは帳簿書類等の破棄・隠ぺい等が予想される場合
2、なお、事前通知を行うかどうかは、個々の事案に即して、無予告調査の必要性を十分に検討して決定し、税務調査の指令の際に指示するとともに、その事績を記録する。

上記のように事務運営指針において、税務調査に際しては原則として事前通知をするといことが定められました。しかし、先述のようにあくまで内規ですので、拘束力はそれほど強くありません。税務署職員の中には事務運営指針を知っていながら無視したり、またそもそも知らない、ということもありえたようです。

③平成23(2011)年度税制改正で平成25(2013)年1月1日以後は事前通知が行われることが国税通則法74条の9に規定されました。

平成23年(2011年)においてようやく事前通知が国税通則法74条の9において制定されました。また事前通知を要しない場合としてが、国税通則法74条の10において制定されました。

国税通則法第七十四条の九 税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。以下第七十四条の十一(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査(税関の当該職員が行う調査にあつては、消費税等の課税物件の保税地域からの引取り後に行うものに限る。以下同条までにおいて同じ。)において第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。
一 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時
二 調査を行う場所
三 調査の目的
四 調査の対象となる税目
五 調査の対象となる期間
六 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
七 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
第七十四条の十 前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第三項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない

④平成26(2014)年度税制改正で国税通則法74の9⑤により納税者への事前通知は納税代理人に対して行えば足りるとされ、平成26(2014)年7月1日以後にされる事前通知において適用されることになりました。

平成23年(2011年)の国税通則法の改正により、税務調査の通知について、納税義務者に税務代理人がある場合には、納税義務者と税務代理人の双方に対して通知されることとされましたが、平成26(2014)年度改正において税務代理人に対してすれば足りるということになりました。

⑤平成28(2016)年度税制改正で加算税改正に伴い「調査通知」が導入され平成 29 (2017)年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用となりました。

平成23(2011)年度税制改正で原則として事前通知することが法令上義務化されたことにより、事前通知直後かつ更正の予知前に多額の修正申告又は期限後申告を行うことにより加算税の賦課を回避している事例が散見されていました。そこで当初申告のコンプライアンスを高めるためから、事前通知ではなく「一定の調査通知」から更正の予知までについても一段低い水準の加算税を課すこととされました。

事前通知に必要な項目(国税通則法74条の9より)
① 調査を開始する日時
② 調査を行う場所
③ 
調査の目的
④ 調査の対象となる税目
⑤ 調査の対象となる期間
⑥ 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
⑦ その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

調査通知に必要な項目(加算税制度(国税通則法)の 改正 のあらましより)
①実地調査を行う
②調査の対象となる税目
③調査の対象となる期間

まとめ

・調査通知と事前通知は法的に全く別物のはずであるが実務上は同時に発生しているケースが多い。それは調査官が調査通知の段階で調査日の日程を決めてしまおうとする戦略からくるものであり、納税者は知らないうちに誘導されています。
・調査通知の段階では調査候補日については保留とすることが望ましく、実際に法律はそのように設計されているように解されます。

この記事の監修者

税理士 田中亨
税理士 田中亨税務調査専門税理士
プロフィール
近畿税理士会上京支部
登録番号128205
税務調査案件を全国対応している税理士
事前自主申告による税負担の軽減に全力を尽くしている
これまで多くの税務調査案件を早期解決に導いてきた
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