(2023年10月2日作成)(2024年4月18日再編集)(2024年5月14日再編集)(2025年8月21日再編集)

結論

・弊所は事前自主期限後申告による調査前に修正無申告解消を基本スタンスとしております。
・しかし事前自主期限後申告による調査前に修正無申告解消はメリットデメリットがあるという論者もおられます。
・ただこの近年の傾向としては事前自主期限後申告による調査前に修正無申告解消することが基本スタンスとする考えの傾向が浸透してきていると感じます。

下記で詳細を記述します。

弊所は事前自主期限後申告による調査前に修正無申告解消を基本スタンスとしております

根拠となるページは下記をご参考ください。

・国税通則法第68条1項において調査通知後でも調査日の初日の前日までに修正申告すれば重加算税は回避できると定義づけられています
無記帳無保存無申告に対する厳罰化がすすんでいます
税務調査を理解するために申告納税制度を理解しよう

しかし事前自主期限後申告による調査前に修正無申告解消はメリットデメリットがあるという論者もおられます。

税務の専門家と思われる方が、事前に修正申告することにメリットについて言及したコメントに対しての分析、同様に事前に修正申告することにデメリットについて言及したコメントに対しての分析を行います。

メリットとして加算税が軽減されるというコメントを分析

無申告加算税、過少申告加算税、延滞税が軽減できるというメリットは法的に明らかであるため、異論は全く存在しません。

メリットとして重加算税が回避できる、できる可能性が高まるというコメントを分析

弊所は当該論点を明確にし、特化しておりますので異論はありません。なお回避できる可能性が高まる、という論点ですが、重加算税を回避する条件、要件として「更正の予知が無い場合」が必須となり、この「更正の予知があったかどうか」についてははやや不明瞭な部分が存在すると言われています。その原因は、税務署通達としては、「(注) 臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として更正があるべきことを予知してされたものに該当しない」とされており、原則として?では例外はどのような時?が不明瞭であるためです。

デメリットとして税理士報酬が高くなるというコメントを分析

当該コメントについてはやや疑問を感じます。

こちらのページをご覧ください。

税務調査案件対応税理士の報酬相場平均は算出困難と解されます

改めてまとめますと、例えば事前申告を税務調査の初日の前日までの1か月で5年分確定申告書を作成する報酬が100万円だったとします。すると、100万円÷5年=20万円となり、20万円÷12か月とすると月額顧問料2万円を切っています。

一般的な税理士を選ぶ時によく見る文言として「税理士顧問報酬月額2万を切るような安かろう悪かろうの税理士にご注意ください」などの注意、警鐘、揶揄が実際に存在し、そうなると年間20万円は格安税理士となります。しかも、税務調査の事前修正申告案件については「1か月で5年」という時間的制約が存在します。調査日の初日の前日までに修正申告書作成提出を約束しての契約は、税理士は大きな税務リスクを負っての契約となります。

デメリットとして、税務調査官の調査が厳しくなる、嫌がらせされる可能性が高まるというコメントに対する分析

当該コメントについては疑問が生じます。

・無申告、過少申告のままの調査はむしろ厳しいものになると解されます。
・税務調査官にあら捜しをされる、重箱の隅をつつかれる、調査がきつくなるなどがありますがそれは税務署が任務を全うしているに過ぎず、納税者側も適正な資料の提示に努めて、任意ではあるものの調査を受ける義務を果たすべきではないのでしょうか。
・事前に修正申告することは法的に認められており、嫌がらせされたとしても法的に提出は可能となります。

デメリットとして調査対象期間が3年分で終わるはずが5年分の修正が必要となり負担が増える、税理士報酬が高額となるというコメントに対する分析

当該コメントについてはやや疑問が生じます。

・法的に原則の調査期間は5年とされており、例外的に3年が慣行となっているにすぎません。
・仮に4年前、5年前に誤りがある場合は修正すべきと考えられます。
・上記より税理士報酬が高額かどうかは状況、内容によると解されます。

デメリットとして、短期間で複数年修正申告書を作成を試みることにより、適正な申告書が作成できないのではないか、というコメントを分析

当該コメントについては一部納得でき、一部疑問が生じます。

・確かに、短期間で複数年作成することによる集計ミス、判断ミス、時間をかければもっと正確であった可能性のある数字との乖離、は否定できません。

しかし、

・過少申告の場合で、納税者の隠ぺい仮装行為に対する心当たりがあるならば、当該心当たりを中心に修正すれば効率的に修正が可能となる。
・無申告の場合、無申告の場合の厳罰化がすすんでいることから、短時間による作成リスクはあるものの事前申告に意義がある可能性が高い。

とも解されます。

まとめ

ただこの近年の傾向としては事前自主期限後申告による調査前に修正無申告解消することが基本スタンスとする考えの傾向が浸透してきていると感じます。