(2023年7月12日作成)

かつては不透明であった税務調査のルールですが、平成25年(2013年)1月1日以降は整備化されて、昔より理不尽な税務調査は減少傾向にある、というのが弊所の見解です。

平成23年(2011年)度改正で、平成25年(2013年)1月1日以後に開始する税務調査から、調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高める観点などから、税務調査手続等を法律上明確化するなどされました、代表的な7項目です。
1.事前通知の原則化及び明確化(事前通知をしない場合の例示)
2.帳簿書類等の預かりに対する預り証発行及び署名押印
3.調査結果の説明と修正申告等の勧奨(教示文に署名押印)
4.更正等は5年が基準に
5.不利益処分などを行う際の処分理由の記載
6.更正等をすべきと認められない場合の通知の明確化
7.再調査の明確化

今回は、事前通知の原則化及び明確化(事前通知をしない場合の例示)、を見ていきます。

結論

・驚くべきことですが、実は平成24年以前は無予告調査について明文化されていませんでしたが、平成25年以降は無予告調査について明文化されております。
・これにより、税務署職員の裁量、気分、勝手な判断により、無予告調査は実施できなくなっております。
・これが平成25年以降は理不尽な税務調査は減少していると思われる理由の一つです。

無予告調査とは

税務調査は2種類あります。事前に調査にいくと予告されるもの、事前に連絡のない無予告調査です。当該無予告調査ですが、平成24年(2012年)以前は法的な要件はありませんでした。しかし、平成23年(2011年)度改正で、平成25年(2013年)1月1日以後に開始する税務調査からの無予告調査は法定化されることになりました。

根拠規定を見ると、国税通則法第74条の9の規定は(原則として)実地の調査を行う場合は事前通知をしなければならないと定義しています。

国税通則法第74条の10は前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第三項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない。

ここで、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合、とはどのような場合か?と疑問が生じます。そこで、国税庁は通達で解説しております。

・法令解釈通達
・第4章
・法第74条の9~法第74条の11関係(事前通知及び調査の終了の際の手続)、第2節 事前通知に関する事項
・(「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合の例示)
・5-9 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(5)までに掲げるような場合をいう。
(1) 事前通知をすることにより、納税義務者において、法第128条第2号又は同条第3号に掲げる行為を行うことを助長することが合理的に推認される場合。
(2) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。
(3) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合。
(4) 事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳又は書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合(5) 事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者若しくは取引先又はその他の第三者に対し、上記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む。)ことが合理的に推認される場合。

当該通達においてもまだ「どのような場合にそう該当するか解釈の余地」が発生しそうなものですが、限定列挙にも限界があると思います。とにかく悪いことをしていると無予告調査の可能性が発生するとご理解ください。

平成25年(2013年)1月1日以後に開始する税務調査からの無予告調査は上記のいずれかに該当しなければなりません。そうなると、無予告調査にやってきた調査官に「上記のような通達の内容に該当しているのか」問うことはできるということになります。

無予告調査でも実は調査日程の変更は可能です!

ここで注意いただきたいのは、無予告調査でも実は調査日程の変更は可能です。あくまで拒否ではなく、調査日の延期ですので、代替日を提示しましょう。そして、まずは落ち着いて、ネットで税務調査に対応してくれる税務調査専門の税理士を探すことをおすすめいたします。

無予告調査の調査に来たが、調査日の日程を交渉し、改めて調査の初日を決定した場合、その調査日の前日までに修正申告書を提出すれば重加算税が回避できるのか?(現在不明、追究中)

無予告調査の調査に来たが、調査日の日程を交渉し、改めて調査の初日を決定した場合、その調査日の前日までに修正申告書を提出すれば重加算税が回避できるのかどうかについては現在不明で、今後追究して参ります。

 

過少申告かつ偽りその他不正の行為、隠ぺい仮装に心当たりがある方で調査通知があった方、あきらめないでください、調査通知後から調査日の前日までに自主修正申告をすれば重加算税を回避できることが国税通則法第68条1項に定義づけられています!(こちらの解説ページをご参考ください)

税務署から電話があっても慌てないでください!調査開始前であればまだ対応策は残されております。弊所にご連絡ください!