(2023年7月21日作成)(2025年8月12日再編集)

結論

・ここでいう資料が何も残っていないの定義は現状資料は無いが再発行すれば多くは取得できる、という定義となります
・レシート領収書等の資料が何も残っていないからといってそのまま何もしないという選択肢は無く、再発行請求をしながら事前自主修正申告及び更正の請求を利用することがテクニックとなります。
・仕入税額控除は基本的にあきらめつつ記録が残っているものは諦めない。
・所得税法及び法人税法における経費計上の要件としてレシート領収書請求書保存は必須ではありません。
・究極的にはすべて概算で計上するという方法も書籍で紹介されています。
・原資資料収集及び作成における優先順位
・税務申告における優先順位

下記で詳細を記述します。

ここでいう資料が何も残っていないの定義は現状資料は無いが再発行すれば多くは取得できる、という定義となります

現状資料が何もないには下記のパターンがあると解されます。

・現状資料は無いが再発行すれば多くは取得できる
・現状資料は無く再発行も難しい

ここで、「現状資料は無く再発行も難しい」については、究極的にはすべて概算で計上するという方法も書籍で紹介されています

こちらのページをご参考ください。

レシート領収書保存が少ない無申告者の調査通知後の事前自主申告は不利であるからすべきではないは本当かについて弊所の考え

レシート領収書等の資料が何も残っていないからといってそのまま何もしないという選択肢は無く、再発行請求をしながら事前自主修正申告及び更正の請求を利用することがテクニックとなります

掲題の通りですが、まとめますと下記となります。

・レシート領収書請求書を紛失している場合は再発行を基本として税務調査前に事前自主修正期限後申告することが理にかなっているというのが弊所の持論の結論です。
・レシート領収書等の資料が無い、少ない場合における事前自主修正期限後申告は損だから、税務調査開始後に調査官と交渉しながら経費計上を織り込むという意見は、近年の税制改正の方向性と合わず、」時代の流れに沿っていないと解されます。

仕入税額控除は基本的にあきらめつつ記録が残っているものは諦めない

・無申告者、過少申告者が簡易課税届出を提出している可能性は少ないことから、ここでは原則納税方式における仕入税額控除の話を前提とします。
・原則納税方式における仕入税額控除の要件として、レシート領収書請求書の保存要件があり、記憶に基づく手書きの伝票作成、通帳の再発行、クレカ明細再発行のみでは否認されます。
・クレカ、通帳支払いに記録がありそれに基づいてネットアカウントから請求書等を再発行できる場合は、仕入れ税額控除の要件を満たします。例えば、通帳からアマゾンへの支払いが有り、それに基づきアマゾンアカウントへログインして請求書が発行できる場合などです。

所得税法及び法人税法における経費計上の要件としてレシート領収書請求書保存は必須ではありません

消費税法上における仕入税額控除と対照的に、所得税法及び法人税法における経費計上の要件としてレシート領収書請求書保存は必須ではありません。したがって、電子メールやメモ書きスケジュール帳におけるメモ書きから蓋然性の高い金額を主張することは可能です。究極的には、記憶を頼りに書き出した手書きの伝票も経費主張は可能です。

原資資料収集及び作成における優先順位

原資資料収集及び作成の優先順位としては下記となります。

・第1位、レシート領収書請求書を紛失しているが現金払いした記憶が確かなもののうち、金額が大きいもののうち再発行の可能性がある先への請求及び再発行不可の場合の手書き伝票の作成
・第2位(上記第1位と同時進行)、通帳、クレカ明細の再発行の請求
・第3位、仕入税額控除要件のためのネットアカウント等によりレシート領収書請求書が再発行可能なものの再発行
・第4位、レシート領収書請求書を紛失しているが現金払いした記憶やメモ帳やカレンダーメモによる推測が可能なもので、少額の細々とした仕入経費等の手書き伝票やエクセル帳簿の作成

下記で詳細を記述します。

●第1位、レシート領収書請求書を紛失しているが現金払いした記憶が確かなもののうち、金額が大きいもののうち再発行の可能性がある先への請求及び手書き伝票の作成の理由

・イメージとしては、一人親方大工が税務調査を受けた場合に、現金払いの50万円外注費を主張する場合です。金額が多額な場合は、請求書等が存在しないと税務調査官のチェックが厳しくなる傾向にあるためその対策となります。
・ここでなぜ第1位に位置付けたかというと、当該多額な経費は再発行ができなかった場合は、納税者自身が作成した手書き伝票等で主張することになるのですが、税務調査において経費主張を織り込むほうが、後述の更正の請求における添付書類として主張するより経費計上の可能性が高まるからです。

●第2位(上記第1位と同時進行)、通帳、クレカ明細の再発行の請求の理由

・通帳は大手銀行、クレカは大手クレカ会社の管轄にあるため、再発行システムについても整備されているため、取得可能性が高いためです。
・ここでなぜあえて第2位に位置付けたかというと、後述の更正の請求における添付書類としても認められるような確実な資料であるため、もし仮に税務調査中に再発行が間に合わなかったとしても、後日の更正の請求でリカバリ可能な可能性を秘めているためと考えました。

●第3位、仕入税額控除要件のためのネットアカウント等によりレシート領収書請求書が再発行可能なものの再発行

・アカウント情報が手元にあれば素早く再発行ができる可能性が高いため
・仕入税額控除要件を満たすことができる可能性を秘めているため

●第4位、レシート領収書請求書を紛失しているが現金払いした記憶やメモ帳やカレンダーメモによる推測が可能なもので、少額の細々とした仕入経費等の手書き伝票やエクセル帳簿の作成

・申告納税方式によれば事前自主申告された申告書に記載された仕入経費はまず尊重されるべきと解されます。
・記憶やメモ帳やカレンダーメモによる推測による手書き伝票であっても認められるべきと解されます。

こちらのページをご参考ください。

税務調査を理解するために申告納税制度を理解しよう

税務申告における優先順位

・第1位、レシート領収書請求書を紛失しているが現金払いした記憶が確かなもののうち、金額が大きいものから優先的に事前自主期限後申告に織り込む。
・第2位、通帳、クレカ明細、ネットアカウントから請求書再発行が可能な仕入経費は時間の許す限り事前自主期限後申告に織り込むが間に合わなかった場合でも更正の請求で還付を受ける可能性も残されています。

下記で詳細を記述します。

●第1位、レシート領収書請求書を紛失しているが現金払いした記憶が確かなもののうち、金額が大きいものから優先的に事前自主期限後申告に織り込む。

こちらのページをご参考ください。

税務調査を理解するために申告納税制度を理解しよう

レシート領収書保存が少ない無申告者の調査通知後の事前自主申告は不利であるからすべきではないは本当かについて弊所の考え

●第2位、通帳、クレカ明細、ネットアカウントから請求書再発行が可能な仕入経費は時間の許す限り事前自主期限後申告に織り込むが間に合わなかった場合でも更正の請求で還付を受ける可能性も残されています。

こちらのページをご参考ください。

税務調査通知後は残された時間を考慮し事前自主修正期限後申告制度及び更正の請求制度を駆使した計画及び判断が重要です

まとめ

領収書レシート請求書、通帳、クレカ明細を紛失していたとしても可能な限り再発行を行い、税務調査日までの残り時間を考慮しながら事前自主修正申告及び更正の請求を利用することがテクニックとなります。