(2023年11月16日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

令和2年9月4日裁決のオリジナルのあだ名
令和2年共同事業を途中まで行ったことに対する支払手数料の計上について隠ぺい仮装は認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1) 事案の概要
・本件は、請求人が、ある会社に共同事業を依頼しており、途中まで事業を共同していたが最終的には共同事業が解約になったにも関わらず、役務提供の対価として計上していた支払手数料について、損金の額に算入することは認められないとの原処分庁の調査による指摘に従い法人税等の修正申告をしたところ、原処分庁が、請求人が当該支払手数料を計上したことにつき事実の隠ぺい又は仮装の行為があったとして、重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、重加算税の取消しを求めた事案である。
・なお、請求人は、役務の提供が伴わないため支払手数料否認とされたことは争っていないと解される。
・請求人の現代表者はEであるが、前代表者はGであった不動産会社の法人である
・KはH社の職務執行者である。
・請求人前代表者Gは本件不動産の取得に必要な資金を調達するため、K(H社)に資金調達を依頼した。
・その後、K(H社)から実際に資金提供はされず、請求人前代表者Gは、L社に資金提供を求め、平成27年4月27日付で、請求人とL社は、本件不動産の取得及び販売業務を共同で行うことについて合意し、その内容を記した共同事業協定書(以下「本件協定書」という。)を作成した(以下、本件協定書に定められた共同事業を「本件共同事業」という。)。
・L社は、平成27年9月16日までに本件不動産を取得し、同年10月30日に本件不動産を売却した。
・請求人前代表者Gは、平成27年6月1日から平成28年5月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の決算に際して、請求人の税務代理をしているN税理士に電話で連絡し、H社(K所属)に対して支払う経費があるとして150,000,000円(以下「本件金員」という。)を計上するよう依頼した。
・請求人の本件事業年度に係る総勘定元帳の支払手数料勘定には、平成28年5月31日付で、相手科目を未払金とし、150,000,000円が計上されている。
・調査日←平成30年10月12日
・調査による修正申告の勧奨による修正申告書の提出←令和1年6月17日
・処分日←令和元年7月5日
・法人税等の調査対象期間
◎平成27年6月1日から平成28年5月31日事業年度←法定申告期限平成29年7月31日←処分日令和元年7月5日から3年以内
・請求人は、本件調査担当職員の調査による指摘に従い、本件金員を「支払手数料否認」として本件事業年度の所得金額に加算した上で、各修正申告書を提出した。
・提出した修正申告書に対し重加算税賦課処分があり、請求人は取消を求めた。
(2)争点
請求人に通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する事実があるか否か。

(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明確な明記はありませんが、国税庁の「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)を引用、参考としていると解されます。なお当該資料には、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としています。
(4)争点の審判所の判断
・しかしながら、請求人前代表者GとK(H社)が、本件不動産の取得を含む複数の不動産取引を共同事業として手掛けようとしていた時期があり、その事業の目論見を書面化したものとして本件書面が作成されている。このことからすれば、結果的に、H社から請求人に対し本件不動産の取得のための資金調達に係る役務提供はなかったとしても、請求人が請求人前代表者Gが本件不動産に関してK(H社)に共同事業契約の話を持ち掛け、その後、資金提供を拒否されるまでの間に、K(H社)が資金提供以外の何らかの役務提供を行っていたと請求人前代表者Gが認識し、それに対して対価を支払う必要があると考えていた可能性が全くないとまではいえない。
・そうすると、請求人前代表者Gが、K(H社)に対して本件金員を支払う必要はないと認識していたにもかかわらず本件金員を支払手数料勘定に計上させたことを直ちに認定することはできない。
・したがって、請求人前代表者GがN税理士に指示し、本件金員を総勘定元帳の支払手数料勘定に計上させた行為が、故意に事実をわい曲したものと評価することは困難である。

(5)結果
・支払手数料否認としての過少申告加算税は相当である。
・平成27年6月1日から平成28年5月31日事業年度←重加算税賦課処分は取消。

当該裁決のさらなる要約
・登場人物及び事実関係まとめ
◎請求人は法人
◎請求人の前代表者がG
◎KはH社に所属している
◎今回は、請求人がH社に支払い手数料を支払った
・請求人は途中まで、K(H社)へ資金提供を求めて共同事業をしていたが、提供されず、結局はL社から資金提供を受けた。
・請求人は、H社に共同事業契約に基づく仕事をしてもらっていたと認識して支払手数料を支払った
・国税不服審判所は以下のように認定した
◎K(H社)から請求人前代表者Gに本件金員を支払う根拠となる資金提供がなされた事実は認められない。
◎結果的に、H社(K所属)から請求人に対し本件不動産の取得のための資金調達に係る役務提供はなかったとしても、請求人前代表者Gが本件不動産に関してK(H社)に共同事業契約の話を持ち掛け、その後、資金提供を拒否されるまでの間に、K(H社)が資金提供以外の何らかの役務提供を行っていたと請求人前代表者Gが認識し、それに対して対価を支払う必要があると考えていた可能性が全くないとまではいえない。

弊所独自の考察

・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は、所得税が申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。なぜなら、請求人は、途中までではあるが共同契約に基づく仕事をしてもらっていたため、支払手数料を支払ったことについて理解はできるからです。それに対して隠ぺい仮装があったと主張した原処分庁に疑問を感じたからです。
◎しかし、今回は未払金計上であり、その後実際に支払われたかどうかについては不明であり疑問が生じます。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
見解の違いにより経費が過大計上となった場合でも隠ぺい仮装が無かったと主張すれば重加算税を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)