(2025年8月7日作成)
結論
・納税者自身に税金計算を強いる申告納税制度は批判されがちですが、納税者が自主的に提出した納税申告書はまずは信用されるという、実は納税者にとって有利な制度であるとも言えると解されます。
・反対に税務調査時点の無申告者は申告納税制度における有利性を放棄しているため、まずは疑われ、明確に証明した場合に認められるという不利な立場です。
・近年の税制改正を考えれば、事前自主申告無申告解消を基本とする弊所の方針は時流にのっていると解されます。
下記で詳細を記述します。
国税庁ホームページが記述する趣旨から分析する立証責任
我が国においては、戦前は税務官署が所得を査定し、税額を告知するという賦課課税制度が採られていました。しかし、昭和22年(1947年)に、税制を民主化するために所得税、法人税、相続税の三税について、申告納税制度が採用され、その後、すべての国税に適用されるようになりました。
この申告納税制度が適正に機能するためには、第一に納税者が高い納税意識を持ち、法律に定められた納税義務を自発的に、かつ適正に履行すること(コンプライアンス<法令遵守>)が必要です。そこで国税庁は、納税者が自ら正しい申告と納税が行えるよう、租税の意義や税法の知識、手続きについての広報活動や租税教育、税務相談、確定申告における利便性の向上など、さまざまな納税者サービスの充実に努めています。
また、納税者の申告を確認したり、正しい申告へと導いたりするためには、的確な指導と調査の実施が必要です。国税庁は、是正が必要な納税者に対して、的確な指導や調査を実施し、適正かつ公平な課税が実現するよう、適正・公平な税務行政の推進に努力しています。
(国税庁ホームページより)
まず税制を民主化、とは税額の算出について国民が主導的に動くようにするため、という意味と解されます。そして国税庁は、是正が必要な納税者に対して、的確な指導や調査を実施し、適正かつ公平な課税が実現するようにとあります。ここから、国は、まず納税者の申告書を尊重し、是正が必要な納税者に限り指導や調査を実施するという考えであると解されます。国がすべての納税者の税額を計算するという賦課方式を採用したとすれば膨大なコストがかかるところ、申告納税方式という納税者の協力により国は助かっているわけですから、国はまず納税者の申告書に対して感謝し、尊重するはずです。
税務申告実務から分析する立証責任
下記の表をご参考ください。
各種申告と添付資料と立証責任 | 提出書類 | レシート領収書通帳コピーなどの原資資料の添付 | 立証責任 |
---|---|---|---|
期限内申告 | 確定申告書 | 添付不要 | 基本的に納税者の申告書が尊重され、疑義については税務署が原資資料を調査して立証責任を負う |
期限内還付申告 | 確定申告書 | 添付不要 | 基本的に納税者の申告書が尊重され、疑義については税務署が原資資料を調査して立証責任を負う |
期限内における訂正申告 | 確定申告書 | 添付不要 | 基本的に納税者の申告書が尊重され、疑義については税務署が原資資料を調査して立証責任を負う |
期限後申告 | 確定申告書 | 添付不要 | 基本的に納税者の申告書が尊重され、疑義については税務署が原資資料を調査して立証責任を負う |
期限後修正申告 | 修正申告書 | 添付不要 | 基本的に納税者の申告書が尊重され、疑義については税務署が原資資料を調査して立証責任を負う |
更正の請求 | 更正の請求書 | 請求の理由の基礎となる事実を証明する書類の添付必要 | 納税者が原始資料を提示して立証責任を負う |
税務調査の勧奨による修正申告 | 税務調査の勧奨による修正申告書 | 後出し簿外経費を主張するための明確な資料の提出 | 裁判例、学説等によれば簿外経費等は納税者が立証責任を負うとされており、令和5年以後は明文化された |
(表1)各種申告と添付資料と立証責任20250812
まずみなさん、確定申告については下記のようなことを思ったのではないでしょうか。
確定申告書には、レシートとか通帳とか添付するよね、そうしないと無茶苦茶な数字を書いたとしても税務署はわからないじゃないか?
しかしながら、上記の表のとおり、実は納税者が主体的に提出する申告書については基本的に原始資料の添付は求められておりません。国税の考え方は下記であると解されます。
納税者の皆様には申告納税制度というお手間をかけていただいております、従いまして提出いただいた納税申告書は、まず全面的に信頼させていただきます。
小括すると申告納税制度は実は納税者にとって有利な制度とも言えます
そうすると申告納税制度は実は納税者にとって有利な制度とも言えます
反対に税務調査時点の無申告者は申告納税制度における有利性を放棄しているため、まずは疑われます。
では無申告者に対する国税の考え方は下記であると解されます。
申告納税制度を放棄された無申告者については、まずは疑ってかかります。反論があるのであれば、明確な資料を提示していただいた場合に限り認めます。
実際に、隠蔽仮装・無申告者に対しては原則的に仕入経費を否認し、例外的に仕入経費を認めるという規定が明文化されました。後出し簿外経費改正についてはこちらのページをご参考ください。
隠ぺい仮装や無申告を指摘された納税者の税務調査中の後出し簿外経費が不可に
更正の請求については納税者が立証責任を負うと解されます
更正の請求については下記ページをご参考ください。
まとめ
近年の税制改正を考えれば、事前自主申告無申告解消を基本とする弊所の方針は時流にのっていると解されます。