(2023年7月24日作成)

Table of Contents

結論

まとめると下記になります。

・無申告者が税務調査において売上に関する帳簿を提示しなかった場合、無申告加算税が10%加重されます。
・過少申告者が税務調査において提示した売上に関する帳簿に記載した売上金額が、本来記載すべき金額の2分の1未満だった場合、過少申告加算税が10%加重されます。
・過少申告者が税務調査において提示した売上に関する帳簿に記載した売上金額が、本来記載すべき金額の3分の2未満だった場合、過少申告加算税が5%加重されます。

弊所が考える当該改正の国税庁の狙い

・無申告者はこれまで、無記帳がゆえに重加算税を賦課が困難であるという矛盾を抱えておりました。重加算税であれば40%、無申告加算税であれば50万円までは15%、50万円を超える部分は20%でした。当該改正で10%加重されますので、50万円までは25%、50万円を超える部分は30%と重加算税税率に近づくことになります。

・過少申告者はこれまで、売上が過少であったケースであれば、売上漏れであれば過少申告加算税税率10~15%、売上除外であれば重加算税率35%でした。しかし、売上漏れと売上除外の判定は明確な基準は無く、当然納税者は売上漏れとして重加算税を回避する主張をしておりました。しかし、当該改正により、もし仮に売上漏れと主張しても記載された売上金額が多額に不足する場合、10%~5%加重されますので、これもまた重加算税率に近づくことになります。つまり、売上漏れで逃げられないようにする意図を感じます。

対象となる事業者

・事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき業務を行う個人事業者
・法人
・消費税の課税事業者

いつから適用されるか

・令和6年(2024年)1月1日以後に法定申告期限が到来する、申告所得税・法人税・消費税について適用されます。

・個人事業主の所得税→令和5年(2023年)1月1日から
・法人税地方法人税→令和5年(2023年)10月決算月分(10月決算の申告期限である令和5年12月31日が日曜日であることから法定申告期限が令和6年1月1日となるため)
・消費税→課税期間が1年間の場合には、申告所得税、法人税・地⽅法人税と同様。

具体例

例えば、個人事業者に対する税務調査において提示等がされた帳簿について、本来記載等をすべき売上⾦額が2,000 万円であったにもかかわらず、実際には800 万円しか記載等がされておらず、その結果、申告漏れが生じていた場合には、上記②(本来記載等をすべき⾦額の2分の1未満だった場合)に該当することから、申告漏れとなっていた1,200 万円に対して新たに納める必要のある所得税額を基礎として課される過少申告加算税の割合が10%加重されることとなります。
(注) 申告所得税、法人税・地⽅法人税、消費税の本税の割合が加重されるものではありません。

本措置に基づいて過少申告加算税又は無申告加算税が加重されるべき状況において、これらの加算税に代えて重加算税が課されることとなった場合、重加算税も本措置に基づいて加重されることとなりますか。

重加算税の加重は無く、重加算税税率はこれまで通りです。

自発的な期限後申告書の提出に伴う無申告加算税は、あくまで税務調査を契機としないものであることから、本措置は適⽤されないと考えてよいですか。

自発的な期限後申告に本措置の適用はありません。

国外取引に該当する営業収入については、本措置の判定基準となっている「売上げ(業務に係る収入を含みます。)」に該当しますか。

・所得税・法人税の加算税の加重措置については「売上げ(業務に係る収入を含みます。)」に該当する
・消費税の加算税の加重措置については「売上げ(業務に係る収入を含みます。)」に該当しない(国外売上は消費税不課税取引より)

個々の売上⾦額や売上先は記載されておらず、日々の売上⾦額の合計額のみが記載されているノートは、本措置において帳簿として認められますか

・原則として、本措置における「売上げ(業務に係る収入を含みます。)に関する調査に必要な帳簿」として認められません。
・ただし、日々の売上⾦額の合計額のみが記載されているノートに関しては、それと併せて請求書の控え(写し)等の書類も保存されており、個々の取引の相手⽅・⾦額がこれらの書類に記載されている場合には、これらを本措置における「売上げ
(業務に係る収入を含む。)に関する調査に必要な帳簿」として取り扱うこととしています。

帳簿に相当する規則性を有する形式で整理・保存がされた書類を示しても、本措置においては帳簿として認められませんか。

・例えば請求書の控え等を雑然と袋や箱に随時入れてまとめておく状態である請求書・領収書の控え(写し)等は、本措置における「売上げ(業務に係る収入を含みます。)に関する調査に必要な帳簿」として認められません。
・ただし、その年月日順に整理して保存する等、帳簿に相当する規則性を有する形で保存している場合には、これを本措置における「売上げ(業務に係る収入を含みます。)に関する調査に必要な帳簿」として取り扱うこととしています。

個人として不動産賃貸業を営んでいますが、収入は預貯⾦⼝座に毎月振り込まれる賃貸料のみですので、この預貯⾦⼝座の通帳を確認すれば不動産賃貸業に関する売上げの全てが網羅的に記録されています。この預貯⾦⼝座通帳は、本措置において帳簿として認められますか。

・お尋ねのケースについては、その預貯⾦⼝座が賃貸料の全てについて振込みを受ける目的でのみ使⽤されており、摘要欄の記載等からそれに対応する賃貸期間・賃人が分かる場合には、この通帳自体が売上帳に相当し、本措置における「売上げ
(業務に係る収入を含みます。)に関する調査に必要な帳簿」として取り扱われます。
・いずれにしても、預貯⾦⼝座通帳が本措置における「売上げ(業務に係る収入を含みます。)に関する調査に必要な帳簿」として取り扱われるためには一定の条件を満たしている必要があります。思わぬ形で加算税が加重されないようにするためにも、取引の年月日・相手⽅・⾦額等の取引に関する事項について記載等がされた帳簿を適切に備付け・保存するようお願いします。

いつまでに帳簿の提示等をしなかった場合に加算税が加重されることとなりますか。

・税務調査においては、調査を開始する日時までに帳簿を遅滞なく提示等ができるように準備してあれば、「売上げ(業務に係る収入を含みます。)に関する調査に必要な帳簿」の提示等をしなかった場合に該当して加算税が加重されることはありません。

過少申告かつ偽りその他不正の行為、隠ぺい仮装に心当たりがある方で調査通知があった方、あきらめないでください、調査通知後から調査日の前日までに自主修正申告をすれば重加算税を回避できることが国税通則法第68条1項に定義づけられています!(こちらの解説ページをご参考ください)

税務署から電話があっても慌てないでください!調査開始前であればまだ対応策は残されております。弊所にご連絡ください!