(2024年5月9日作成)
結論
・個人事業主の所得税については令和5年(2023年)1月1日から、法人税地方法人税については令和5年(2023年)10月決算月分(10月決算の申告期限である令和5年12月31日が日曜日であることから法定申告期限が令和6年1月1日となるため)から、3年(3期)以上連続無申告の場合、3年(3期)目の無申告加算税が加重される改正となりました。消費税については、課税期間が1年間の場合には、申告所得税、法人税・地⽅法人税と同様となります。
・5年(5期)連続無申告の場合、3年(3期)目、4年(4期)目、5年(5期)目の無申告加算税が加重されます(参考文献有り)
・7年(7期)連続無申告かつ6年(6期)目及び7年(7期)目に偽りその他不正行為が存在する場合、の場合、3年(3期)目、4年(4期)目、5年(5期)目、6年(6期)目、7年(7期)目の無申告加算税が加重されると解されます(参考文献が無いため現状は弊所の独自の解釈)
・当該改正は「調査通知後かつ調査開始前の期限後申告」でも回避不可能の改正となります。
・つまり、連続無申告者は、税務署からの連絡がなくても自発的に申告納税せよ、という国税の意図を感じます。
下記で詳細を記述します。
当該改正の内容
(図1)財務省 令和5年度 税制改正の解説 国税通則法等の改正 p619の参考図表②
当該制度の背景
・類似の制度として「短期間に繰り返して無申告又は仮装・隠蔽が行われた場合の加算税の加重措置」が存在するが、5年間で2度調査を受けることが前提であり、例えば新規開業設立の者の初めての税務調査の場合の連続無申告は対象外であった。
・連続無申告という悪質性にも関わらず回数にかかわらず無申告加算税の税率が一律であるため不公平であった。
・そこで3年(3期)以上連続無申告の場合は、3年(3期)目以降は加重されるという改正となった。
となります。
財務省の資料によれば下記となります。
財務省 令和5年度 税制改正の解説 国税通則法等の改正p621-p622より、
現行、過去5 年以内に無申告加算税又は重加算税を課された者について、再び調査を受けて無申告又は仮装・隠蔽に基づく申告等が行われた場合への対応として、短期間に繰り返して無申告又は仮装・隠蔽が行われた場合の無申告加算税等の加重措置が整備されていますが、
・無申告行為を繰り返し行う者について一度に是正をする場合には適用がないことや、
・調査通知があったことを契機として、期限後申告書を提出すれば、この加重措置の適用を回避することが可能であることから、
意図的に無申告行為を繰り返す者に対する牽制効果は限定的であり、繰り返し行われる悪質な無申告行為について未然に抑止するための更に実効的な措置の整備が課題とされていました。
財務省 令和5年度 税制改正の解説 国税通則法等の改正p623より
・本措置が悪質な無申告行為を繰り返す者に対する牽制効果を高める観点から行うものであり、調査による更正又は決定の予知前において調査通知がある前にされる自発的な修正申告書又は期限後申告書の提出についてまで効果を及ぼす必要はないと考えられるため、本措置の対象外とされています。
・他方、修正申告書又は期限後申告書の提出が調査通知後にされた場合に課される無申告加算税については、調査通知がなければ、自発的な申告が行われていない可能性が高く、一定の悪質性が認められることから、本措置の対象とされています。
基本的な仕組みの解説
・3年度連続で無申告の場合、3年度目の無申告加算税(無申告重加算税)に10%加重されます。
・当該制度は、調査通知後かつ調査開始前の期限後申告(更正の予知無しの期限後申告)であっても回避できません。
・当該制度を回避するためには、調査「通知前」の無申告解消が条件となります。完全な自主的な無申告解消が求められます。
無申告税務調査=5年と解されるが5年連続無申告の場合はどうなるのか(参考文献有りによる結論有り)
結論
結論としては、
・×1年、×2年、×3年、×4年、×5年、と5年度連続で無申告の場合は、3年(3期)目、4年(4期)目、5年(5期)目の無申告加算税が加重されます
根拠
近畿税理士会2023年6月22日(本会ビデオ配信研修)令和5年度 改正税法研修会【所得税】に言及の記述がありました。なお、当該資料は税理士向けの近畿税理士会の研修資料であり、一般的には公開されておりません。
近畿税理士会2023年6月22日(本会ビデオ配信研修)令和5年度 改正税法研修会【所得税】p11より、
※ 例えば、X1年からX5年分を調査する場合は、X3からX5年分が今回の加重措置の対象。
では、調査が7年の場合はどうなるのでしょうか
調査が7年の7年連続無申告の場合はどうなるのか(参考文献無し、現状は弊所の独自の解釈)
・7年(7期)連続無申告かつ6年(6期)目及び7年(7期)目に偽りその他不正行為が存在する場合、の場合、3年(3期)目、4年(4期)目、5年(5期)目、6年(6期)目、7年(7期)目の無申告加算税が加重されると解されます。
根拠は、当該制度についての根拠規定は、国税通則法第66条(無申告加算税)しか存在せず、「前年及び前々年」という文言に対する但し書きも存在しないため、そのまま解釈すればそのように解されるためです。
まとめ
連続無申告の方は、調査通知後調査開始前ではなく、調査通知前に無申告解消が望まれると解されます。