(2023年11月15日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる
平成31年2月7日裁決のオリジナルのあだ名
平成31年売上金が銀行振込から小切手払いに変更されたことに伴う売上漏れについて答述も考慮し隠ぺい仮装を認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、小切手で受領した売上代金を売上げに計上していなかったとして、法人税等の修正申告をしたところ、原処分庁が、当該売上げを計上していなかったことにつき、事実の隠ぺい又は仮装の行為があったとして重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、請求人には事実の隠ぺい又は仮装の行為はないとして、その全部の取消しを求めた事案である。
・請求人は、平成9年7月○日に設立された、紳士服、婦人服及び子供服の企画等を目的とする法人である。請求人の取締役は、D(以下「D代表」という。)のみであり、従業員は、D代表の妻E(以下「妻E」という。)のみである。
・請求人が保管している平成26年10月8日付のF社宛の納品書(控)には、当月請求額287,712円(以下「本件売上額」といい、本件売上額に係る取引を「本件取引」という。)とする旨記載がある。
・F社は、本件取引に係る代金として、平成27年1月15日付で額面金額287,712円の小切手(以下「本件小切手」という。)を振り出した。
・妻Eは、平成27年1月16日、G銀行H支店において、本件小切手を現金化した。本件小切手の裏面には、F社の住所、法人名及び代表取締役としてJ(以下「F社J代表」という。)の記名押印並びに妻Eの署名がある。
・調査日←平成29年10月11日
・調査による修正申告の勧奨による修正申告書の提出←平成30年3月16日
・処分日←平成30年3月27日
・法人税の調査対象期間
◎平成26年6月1日から平成27年5月31日=平成27年5月期←法定申告期限平成27年7月31日←処分日平成30年3月27日から3年以内
◎平成27年6月1日から平成28年5月31日=平成28年5月期←法定申告期限平成28年7月31日←処分日平成30年3月27日から2年以内
・平成27年5月期及び平成28年5月期=本件各事業年度
・消費税の調査対象期間
◎平成26年6月1日から平成27年5月31日=本件課税期間←法定申告期限平成27年7月31日←処分日平成30年3月27日から3年以内
・平成30年3月27日付で平成28年5月期の法人税及び本件課税期間(=平成26年6月1日から平成27年5月31日)の消費税について重加算税の各賦課決定処分をした。
・※なぜ法人税の重加算税賦課処分が平成27年5月期ではなく平成28年5月期なのかは、公表裁決において別表1、別表2が省略されているため、弊所では解読不能でした。
(2)争点
請求人には通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺいがあったか否か。
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
引用は無しと解されます。
(4)争点の審判所の判断
・請求人は、本件各事業年度において、売上先に対して、原則として各月の20日又は月末締めで請求書を発行し、翌月末までに請求人名義のL銀行M支店の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件口座」という。)に代金を振り込むよう依頼していた。
・請求人の経理及び現金管理は、妻Eが担当していた。妻Eは、「○○会計」という名称のソフトウエアを使用して会計帳簿を作成しており、売上げの入力は本件口座の預金通帳の入金事績に基づいて行っていた。また、銀行振込み以外の方法で売上代金を受領した場合には、一旦、妻Eが預金口座に当該売上代金を入金した上で、売上げの入力をすることとしていた。
・請求人が平成30年8月28日に当審判所に提示したその他の売上先用の請求書つづり(以下「本件請求書つづり」という。)の内容等は、次のとおりである。
◎本件請求書つづりには、本件取引前のF社との3回の取引に係る請求書(控)(平成22年5月20日付33,600円、同年11月30日付301,350円及び平成23年4月30日付68,775円)もつづられている。このF社との3回の取引については、いずれも売上げに計上されており、平成22年5月20日付の請求書(控)に係る売上代金は現金で受領した後、本件口座に入金され、同年11月 30日付及び平成23年4月30日付の各請求書(控)に関する各売上代金はF社から本件口座に振り込まれていた。
◎平成27年5月期において、売上代金を本件口座への振込み以外で受領した取引は、本件取引を除くとQ社との2回の現金取引であった。このQ社との2回の取引については、いずれも売上げに計上されており、売上代金として受領した現金は本件口座に入金されていた。
・担当者Kは、平成30年9月5日、当審判所に対して、要旨次のとおり答述した。
◎請求人との取引を担当していたのは、私である。
◎本件取引を小切手で決済したのは、F社では、銀行振込みによる決済を決まった時期にまとめて行うこととしていたが、本件取引に係る請求書が遅れてきた関係で、銀行振込みを行う時期からずれ、個別に銀行振込みを行うのが手間だったので、本件小切手で支払ったと記憶している。
・担当者Kの答述は、本件取引の決済方法が本件小切手となった経緯を具体的に説明しており、担当者Kの答述は信用することができる。
・これらの事実から判断すると、本件取引については、請求人の通常の取引と比較して決済が遅れていることから、D代表が本件売上額の支払を督促するためF社に連絡し、F社側の事情で銀行振込みではなく本件小切手で決済されたと認めるのが相当であり、D代表が本件売上額を脱漏する目的でF社に依頼し、銀行振込みから本件小切手に決済が変更されたものではない。そして、本件小切手によって受領した売上代金が故意に本件口座に入金されなかったとの事実を認定するに足りる証拠もない。
・以上によれば、D代表が本件売上額を脱漏したとは認められず、その他の証拠によっても請求人に本件売上額を脱漏したとする事実も認められないことから、請求人に通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺいがあったと認めることはできない。
(5)結果
・平成28年5月期の法人税及び本件課税期間(=平成26年6月1日から平成27年5月31日)の消費税について重加算税の各賦課決定処分を取り消す。
・※なぜ法人税の重加算税賦課処分が平成27年5月期ではなく平成28年5月期なのかは、公表裁決において別表1、別表2が省略されているため、弊所では解読不能でした。
当該裁決のさらなる要約
・請求人は27年5月期中にF社へ納品し、287,712円を小切手で受け取った。しかし、27年5月において売上計上漏れをした。
・原処分庁は、過去は銀行振込により売上代金を回収していたので、今回は小切手に変更し故意に売上を脱漏させたと主張してきた。
・担当者Kの、本件取引に係る請求書が遅れてきた関係で、銀行振込みを行う時期からずれ、個別に銀行振込みを行うのが手間だったので、本件小切手で支払ったと記憶している、という発言は信用できるとされた。
・故意に売上金を脱漏しようとした事実はなく、隠ぺい仮装はないとされた。
弊所独自の考察
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は、所得税及び消費税が申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。なぜなら、売上漏れについて売上除外と決めつけているように解されるからです。売上除外とした理由は、過去行われていた銀行振込に代えて小切手に変更して意図的に未計上としたという理由でいた。また隠ぺい仮装の検討事項の中心が答述内容であり、原処分庁の主張はいいがかりであると感じたからです。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査での虚偽発言は無かったと解されます。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
明確な証拠が存在しない売上漏れについて原処分庁が隠ぺい仮装を主張した場合、隠ぺい仮装を否定すれば重加算税を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)