(2023年11月14日作成)

当該ページの活用方法

・当該裁決の内容を理解する
・ご自身の税務調査に当てはまる、活用できそうなら、当該裁決内容及びあだ名を覚える
・ご自身の税務調査の場で活用させる

平成30年9月21日裁決のオリジナルのあだ名

平成30年個人的な飲食代金であると認識しながら法人の損金としたとは認められないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

当該裁決のまとめ

前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。

裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、交際費勘定等に計上した費用は損金の額に算入されないなどとして法人税等の修正申告書を提出したところ、原処分庁が、当該費用については、請求人の代表取締役の個人的な飲食等の費用を損金の額に算入したという隠ぺい又は仮装の事実があったなどとして法人税等に係る重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、隠ぺい又は仮装の事実はないとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。
・請求人は、宣伝、広告の企画、制作等及び飲食店の企画、経営等を目的とする法人である。
・調査日←おそらく平成29年4月6日
・調査による修正申告の勧奨による修正申告書の提出←平成29年5月15日←一部の交際費について損金算入されない部分は認めて修正したと解される
・処分日←平成29年5月31日
・法人税等及び消費税等の調査対象期間
◎平成25年7月1日から平成26年6月30日事業年度←法定申告期限平成26年8月31日←賦課処分平成29年5月31日から3年以内
◎平成26年7月1日から平成27年6月30日事業年度←法定申告期限平成27年8月31日←賦課処分平成29年5月31日から2年以内
◎平成27年7月1日から平成28年6月30日事業年度←法定申告期限平成28年8月31日←賦課処分平成29年5月31日から1年以内
・原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、請求人に対する法人税等に関する実地の調査において、現金、銀行振込又は請求人の代表取締役であるE(以下「E代表」という。)の個人名義の複数のクレジットカード(以下「本件各カード」という。)の利用により支払われた飲食店等に対する支出で、同表の「飲食等の代金」欄記載の各金額(以下「本件各飲食等代金」という。)については、E代表の個人的な飲食等に係る金額であり、請求人の本件各事業年度の損金の額に算入されず、また、本件各飲食等代金(税抜経理方式を採用している課税期間については消費税等相当額との合計額)は本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額には該当しないことを指摘した。

(2)争点
通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の事実はあるか否か。

(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明確な明記はありませんが、国税庁の「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)を引用、参考としていると解されます。なお当該資料には、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としています。

(4)争点の審判所の判断
・本件調査担当職員は、本件各カードの利用明細書に記載された飲食店等のうち、「G店」を経営しているH社の事務所へ平成29年3月21日に臨場し、同社に保管されていた「御勘定明細書」を確認したところ、平成26年1月23日から同年6月12日までの期間及び平成28年1月14日から同年6月13日までの期間における当該「御勘定明細書」のうち、「氏名」欄に「E」と記載があるものが16件あり、このうち、「人数」欄に「1名」と記載があるものが14件、「2名」と記載があるものが2件あった。
・調査審理庁所属の職員は、本件各カードの利用明細書に記載された飲食店等である「J店」を経営しているK社の事務所へ平成29年8月24日に臨場し、同社に保管されていた「御勘定明細書」を確認したところ、平成27年7月2日から平成28年6月14日 までの期間における当該「御勘定明細書」のうち、「得意先」欄に「E」と記載がある「御勘定明細書」が8件あり、その「人数」欄には、全て複数の人数が記載されていた。
・請求人が平成29年12月14日に当審判所に提出した本件各事業年度に係るE代表の日程表には、時刻の記載とともに「L」と記載がある日が認められ、当該記載のある日のうちに、本件各カードの利用明細書において本件各飲食等代金に係る支出をしていることが確認できる日がある。
・本件各事業年度の総勘定元帳において、本件各飲食等代金に係る飲食等の相手方又は当該飲食等の目的等の記載はなく、当審判所の調査においても、これらの点を明らかにする資料等は認められなかった。
・E代表は、平成29年4月6日、本件調査担当職員に対し、本件各カードは、以前は売上先の接待等で利用した際の決済に使っていたが、平成25年7月以降の利用分については請求人の業務に関連するものではなく、E代表が個人で利用した飲食代等であり、請求人の取引先と利用することはなく、E代表が1人で行ったものや知人と利用したものである旨申述し、その旨を記載した同日 付の質問応答記録書(以下「本件記録書」という。)に署名及び押印した。また、本件調査担当職員が作成した平成29年4月6日 付調査報告書には、E代表は、本件調査担当職員に対し、総勘定元帳に計上された現金支払の飲食代金等も個人的費用であると申述した旨記載されている。
・E代表は、平成30年1月25日、当審判所に対し、本件記録書は内容が全く違う旨本件調査担当職員に対し反論したが、当時の顧問税理士からもサインするように言われて署名及び押印したもので、その内容は全て真実に反しており、実際には、本件各飲食等代金は、個人的な飲食等に係る金額ではなく全て交際費である旨答述した。
・請求人の取引先の一つであるM社の従業員であるL(以下「L氏」という。)は、平成30年4月11日、当審判所に対し、E代表とは業務上の必要から面識があり、E代表と飲食し、その際にE代表が代金を支払ったことが何度かある旨答述した。
・「G店」の「御勘定明細書」のうち、「人数」欄に「1名」と記載があるものが14件認められるものの、その利用の目的・態様は明らかではなく、当該店舗の全ての利用がE代表の個人的な飲食等であることを裏付ける証拠は認められない。そうすると、「G店」の利用状況をもって、本件各飲食等代金について、その全てがE代表の個人的な飲食等に係る金額であると認めるには足りない。
・再調査審理庁所属の職員が「J店」において確認した事実は、そもそも当該店舗の利用がE代表の個人的な飲食等であることを推認させるものではない。
・L氏は、当審判所に対し、E代表と共に飲食を行っている旨答述し、かつ、E代表の日程表に「L」と記載がある日に、本件各カードの利用明細書において本件各飲食等代金に係る支出をしている日がある。そうすると、本件各飲食等代金の中には、E代表が請求人の取引先の従業員であるL氏と共に飲食等を行ったものが含まれていると推認される。当該飲食等がどのような目的・態様で行われたか等については明らかではないものの、少なくとも当該飲食 等について、E代表が、請求人の事業に関係のある者との飲食等ではなく個人的な飲食等であると認識していたとは認め難い。
・E代表は、当審判所に対し、本件記録書に署名及び押印したものの、その内容は全て真実に反しており、本件各飲食等代金は、個人的な飲食等に係る金額ではなく全て交際費である旨答述している。本件各飲食等代金の全てについて請求人の交際費であることを明らかにする証拠書類等はないことから、当審判所において本件各飲食等代金は全て交際費であるとの認定はできないものの、「J店」の利用状況や、L氏との飲食等の状況などからすると、E代表の答述を直ちに信用性を欠くものとして排斥できない。
・以上の事実のほか、その他の証拠及び当審判所の調査によっても、本件各飲食等代金の全てについてE代表の個人的な飲食等に係る金額であることを推認させるに足りる証拠はない。また、本件各飲食等代金の全てについて、E代表が個人的な飲食等に係る金額であることを認識しながら、請求人の本件各事業年度の総勘定元帳の本件各費用勘定に計上したとする仮装の事実を認めるに足りる証拠もないことからすれば、本件各飲食等代金の全てについて、個人的な費用であることをE代表が認識しながら本件各費用勘定に請求人の費用として計上したとは認められない。したがって、本件各飲食等代金について、通則法第68条第1項に規定するところの隠ぺい又は仮装の事実は認められない。
・本件各カードがE代表の個人名義のカードであることのみをもって、本件各飲食等代金はE代表の個人的な飲食等に係る金額であるとまではいえない。
(5)結果
・法人税等及び消費税等の重加算税を取消した期間
◎平成25年7月1日から平成26年6月30日事業年度←法定申告期限平成26年8月31日←賦課処分平成29年5月31日から3年以内←過少申告加算税を超える重加算税を取消す(一部の交際費について損金算入されない部分についての過少申告加算税は課されると解される)
◎平成26年7月1日から平成27年6月30日事業年度←法定申告期限平成27年8月31日←賦課処分平成29年5月31日から2年以内←過少申告加算税を超える重加算税を取消す(一部の交際費について損金算入されない部分についての過少申告加算税は課されると解される)
◎平成27年7月1日から平成28年6月30日事業年度←法定申告期限平成28年8月31日←賦課処分平成29年5月31日から1年以内←過少申告加算税を超える重加算税を取消す(一部の交際費について損金算入されない部分についての過少申告加算税は課されると解される)

当該裁決のさらなる要約

・請求人代表の個人名義のクレジットカードで支払われた交際費のうち一部は個人的な飲食代であると原処分庁は主張した。
・請求人代表は質問応答記録書の内容が全く違う旨を国税不服審判所に主張した。
・原処分庁は、請求人の飲食代金の決済先に反面調査を行っているが、人数が1名であったことなどの事実は判明したものの、請求人代表の個人的な飲食であることの決定的な証拠のようなものはいずれも存在しなかった。
・当審判所において本件各飲食等代金は全て交際費であるとの認定はできないものの、本件各飲食等代金の全てについてE代表の個人的な飲食等に係る金額であることを推認させるに足りる証拠はない、とした。
・従って、個人的な費用であることをE代表が認識しながら本件各費用勘定に請求人の費用として計上したとは認められない。

弊所独自の考察

弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は、申告済みでした。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。なぜなら、請求人代表の個人名義のクレジットカードで決済した点のみ、個人的な飲食代であることの決定的な証拠がないにも関わらず、個人的な飲食代なので計上できないと知りながら計上したことは隠ぺい仮装であると主張したことはいいがかりである、と感じたからです。
◎なお、所得税及び法人税の事務運営指針において改ざん等が存在しない経費の過大計上については、隠ぺい仮装としての明示はありません。
◎当該裁決は、原処分庁が、質問応答記録書を原処分庁にとって都合の良いように利用したように解されます。
◎当該裁決は、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への協力具合は、協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。

・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
事業に無関係な交際費の計上について原処分庁が重加算税を主張する場合は、隠ぺい仮装を否定することで重加算税を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)