(2023年9月29日作成)
(※1)谷原誠、「税務のわかる弁護士が教える税務調査における重加算税の回避ポイント」、ぎょうせい、令和元年12月1日
結論(あくまで弊所独自の見解です)
谷原誠書籍を参考とした弊所オリジナルの判定表 | |||||||
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隠ぺい、仮装の行為者が本人 | 隠ぺい、仮装と思われる積極的な行為がある | 過少申告行為そのものとは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたかどうか<谷原誠ルール1>、(なぜなら重加算税賦課判定は)納税者が故意に隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽、仮装行為を原因として過少申告の結果が生じたものであれば足りるから<谷原誠ルール6> | 存在する | 通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか | 証明された | 重加算税が賦課される | いずれにしても税理士等が税務調査を受ける前の聞き取りの段階で重加算税賦課を予想することは困難を極める |
証明されていない | 重加算税が賦課されない | ||||||
存在しない | 重加算税が賦課されない | ||||||
隠ぺい、仮装と思われる積極的な行為がない | (1)各確定申告の時点において、真実の所得金額を隠蔽しようという確定な意図をもっており、 (2)必要に応じ事後的にも隠蔽のための具体的工作を行うことも予定して、 (3)会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出した<谷原誠ルール2> | 存在する | 通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか | 証明された | 重加算税が賦課される | ||
証明されていない | 重加算税が賦課されない | ||||||
存在しない | 重加算税が賦課されない | ||||||
納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした<谷原誠ルール3> | 存在する | 通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか | 証明された | 重加算税が賦課される | |||
証明されていない | 重加算税が賦課されない | ||||||
存在しない | 重加算税が賦課されない | ||||||
隠ぺい、仮装の行為者が納税者が委任した税理士 | 納税者と税理士との間に事実を隠蔽し、又は仮装することについて意思の連絡があった<谷原誠ルール4> | 納税者の行為と同一視できる | 上記、隠ぺい、仮装の行為者が本人の場合の判定に従うと重加算税が賦課されるに該当する | 通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか | 証明された | 重加算税が賦課される | |
証明されていない | 重加算税が賦課されない | ||||||
上記、隠ぺい、仮装の行為者が本人の場合の判定に従うと重加算税が賦課されるに該当しない | 重加算税が賦課されない | ||||||
納税者の行為と同一視できない | 重加算税が賦課されない | ||||||
(1)納税者において当該税理士が隠ぺい仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができたこと (2)法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたこと (3)納税者においてこれを防止せずに隠ぺい仮装行為が行われたこと。 (4)(1)~(3)に基づいて過少申告がされたこと<谷原誠ルール5> | 納税者の行為と同一視できる | 上記、隠ぺい、仮装の行為者が本人の場合の判定に従うと重加算税が賦課されるに該当する | 通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか | 証明された | 重加算税が賦課される | ||
証明されていない | 重加算税が賦課されない | ||||||
上記、隠ぺい、仮装の行為者が本人の場合の判定に従うと重加算税が賦課されるに該当しない | 重加算税が賦課されない | ||||||
納税者の行為と同一視できない | 重加算税が賦課されない | ||||||
隠ぺい、仮装の行為者が納税者が委任した税理士以外の第三者 | ①不正行為者が重要な事務を担当する地位や権限を有していたか ②納税者が不正を禁止していたかどうか ③納税者が管理監督していたか | 納税者の行為と同一視できる | 上記、隠ぺい、仮装の行為者が本人の場合の判定に従うと重加算税が賦課されるに該当する | 通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか | 証明された | 重加算税が賦課される | |
証明されていない | 重加算税が賦課されない | ||||||
上記、隠ぺい、仮装の行為者が本人の場合の判定に従うと重加算税が賦課されるに該当しない | 重加算税が賦課されない | ||||||
納税者の行為と同一視できない | 重加算税が賦課されない |
(表1)谷原書籍(※1)を参考とした弊所オリジナルの判定表
・上記があくまで弊所独自の重加算税が賦課されるかどうかの判定表となります。
・しかし結論としては、いずれにせよ税務調査開始前に貴事業所に重加算税か課税されるかの判定、予測、予想、判断は困難を極める、という結論になりました。
下記において作成した根拠と過程をお伝えいたします。
遺憾ながら谷原誠書籍(※1)p46-p47のフォーミュラ(公式)を弊所が理解できなかったこと
(図1)谷原誠書籍(※1)p46のフォーミュラ(公式)
弊所が理解できなかった点が
・上記(図1)の①の流れ
・上記(図1)の②の流れ
・上記(図1)の③の流れ
となります。
上記(図1)の①の流れですが、過少申告行為そのものとは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたものか<谷原誠ルール1>において「ある」を選択した後に、隠ぺい又は仮装は故意に基づくものか<谷原誠ルール6>において「ない」を選択すれば「重加算税課税されず」の結論となることが理解できませんでした。
税理士谷原誠は隠ぺい又は仮装の故意性については言及をしていない、と弊所は解しております。そこから弊所は、隠ぺい仮装は故意が当然含まれると解してよいとしました。下記を参照ください。
最高裁昭和62年5月8日判決について及び弁護士税理士谷原誠が考える「隠ぺいし、又は仮装しの定義」を弊所が独自に解釈する
そうすると、「隠ぺい仮装行為が存在するが故意には基づかない行為は存在しない」と弊所は考え、税理士谷原誠フォーミュラを理解できませんでした。
上記(図1)の②の流れも同様の考えに基づきます。「隠ぺい仮装行為が存在し故意があるが因果関係がない行為は存在しない」と弊所は考え、税理士谷原誠フォーミュラを理解できませんでした。
・上記(図1)の③の流れですが、上記①②の流れの後に、本人か第三者かを判定するという税理士谷原誠フォーミュラを理解できませんでした。
弊所独自の判定表の根拠過程
弊所独自の判定表の使い方
税務調査専門税理士を探して弊所にたどり着かれた納税者から「私は重加算税を課税されるのでしょうか?」と聞かれたケース、または重加算税を回避する方法をご自身で検索されている方がご自身で当てはめて検討するケースをイメージして作成したのが、弊所独自の判定表となります。使い方は下記となります。
・まず隠ぺい、仮装の行為者が、本人、依頼した税理士、それ以外の第三者で選択します。
・本人の場合は、隠ぺい、仮装と「思われる」積極的な行為があるかないかを選択します。
・積極的な行為があった場合は、さらにその隠ぺい、仮装と「思われる」積極的な行為が本当に隠ぺい、仮装に該当するか検討します。
・最後にその隠ぺい、仮装と「思われる」積極的な行為が本当に隠ぺい、仮装に該当すると通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか、を検討します。
・積極的な行為が無い場合は、<谷原誠ルール2>か<谷原誠ルール3>いずれに該当するか検討します。
・次に、<谷原誠ルール2>か<谷原誠ルール3>の該当性を通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか、を検討します。
・依頼した税理士の場合は、<谷原誠ルール4>か<谷原誠ルール5>いずれに該当するか検討します。
・次に依頼した税理士が、隠ぺい、仮装を行ったと認定できるかを検討します。
・最後にそれらのことを、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか、を検討します。
・それ以外の第三者の場合は、「ルールの名前の無い不正行為者の地位等の判定」を行います。
・次に第三者が、隠ぺい、仮装を行ったと認定できるかを検討します。
・最後にそれらのことを、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に証明されたかどうか、を検討します。