(2023年11月11日作成)
当該ページの活用方法
・当該裁決の内容を理解する
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・ご自身の税務調査の場で活用させる
平成24年4月20日裁決のオリジナルのあだ名
平成24年使用人決算賞与損金算入時期の期ずれについて通知日の隠匿虚偽記載等は存在しないので隠ぺい仮装を認めなかった裁決
当該裁決のまとめ
前提
・原文ではなく、弊所が内容を編集しております
・上記にもあるように、弊所の私見による内容の編集、見解を記述しているにすぎません。
裁決の内容、要約、編集
(1)事案の概要
・法人税法施行令第72条の5第2号において、賞与の支給額を同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知し、通知した日の属する事業年度終了日の翌日から1月以内に支払っている場合は、通知日の属する事業年度において支給されたものとする規定が存在する。
・本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が使用人に対する未払賞与の額及び当該未払賞与に係る請求人が負担すべき社会保険料の額を損金の額に算入したことについて、原処分庁が、当該未払賞与の額は、当該事業年度終了の日までに、その支給額を各人別に通知したかのごとく仮装して計上したものであり損金の額に算入 されないなどとして、当該未払賞与等の額について、法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該未払賞与等の額を損金の額に算入したことについて、事実の仮装はないとして、重加算税の賦課決定処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。
・法人税の調査対象期間
◎平成21年1月1日から平成21年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)←法定申告期限平成22年2月28日←処分日平成23年2月28日
・処分日←平成23年2月28日
・請求人は、H社が100%出資する法人であり、平成21年9月1日から平成24年1月1日までの間の代表取締役はJ(以下「J元代表」という。)であった。
・請求人は、使用人に対して夏季(7月)と冬季(12月)に賞与を支給していたが、平成15年1月1日から平成15年12月31日までの事業年度以後、冬季(12月)に支給していた賞与を、その年の12月に支給する賞与と、事業年度の業績に基づいて翌年1月に支給する決算賞与とに分けて支給していた。
・請求人は、平成21年12月31日に、本件事業年度の業績に基づき平成22年1月に使用人に支給する決算賞与(以下「本件決算賞与」という。)について、その支給対象者となる請求人の各使用人(H社からの各出向者を除く。以下「本件各支給対象者」という。)に係る本件決算賞与の合計金額58,321,546円(以下「本件決算賞与額」という。)を賞与(相手科目は未払費用)として損金の額に算入するとともに、請求人が負担すべき本件決算賞与額に係る社会保険料の額6,699,756円(以下「本件社会保険料額」といい、本件決算賞与額と併せて「本件決算賞与額等」という。)を法定福利費(相手科目は未払費用)として損金の額に算入した。
・請求人は、平成22年1月22日に取締役会を開催しており、当該取締役会の議事録(以下「本件議事録」という。)には、「取締役管理部Kより、平成21年度の業績について報告と、次いで代表取締役Jから決算賞与0.65ヶ月とする提案があり、これの審議を行った。審議の結果、提案どおり支給することでこれを可決、承認した。決算計算書類については、1月21日に監査役監査を実施し、監査報告済みであることが確認された。また、H社への配当金の支払い決定はまだであることが確認された。尚、決算賞与の支給日は1月29日とし、従業員に対する案内は12月29日行なっていることを確認した。」と記載されていた(以下、本件決算賞与に関して本件議事録に記載された「従業員に対する案内は12月29日行なっている」を「本件記載」という。)。
・請求人の人事総務部長であるL(以下「L部長」という。)は、平成22年1月26日に、電子メールにより、平成21年12月29日付の「2009年度冬季(成果報酬部分)賞与支給のお知らせ」と題する書面(以下「本件案内文」という。)を部下職員に送信し、その送信に併せて当該部下職員に対し、本件案内文の、請求人の社員向けホームページへの掲載及び請求人の各部門の部門長への電子メール送信を指示し、当該部下職員は、平成22年1月26日に、本件案内文を当該ホームページに掲載するとともに、各部門の部門長に電子メール送信した。なお、本件案内文には、「E社正社員のみなさんへ」として、本件決算賞与に関して要旨次の内容が記載されていた。
・請求人は、平成22年1月29日に、本件各支給対象者に対して本件決算賞与を支給しているところ、その支給日の2日又は3日前に、本件各支給対象者に対し、本件決算賞与に係る賞与基礎額、支給月数(支給率)、評価係数(成績係数)、出勤率及びこれらに基づき計算された賞与支給額、当該賞与支給額から控除される所得税額等の各控除金額並びに差引支給額が記載された各人別の賞与支給明細書(以下「本件決算賞与支給明細書」という。)を交付した。
・当該論点は期ずれの論点であるから、期ずれの原因が隠ぺい仮装に基づくものでなければ重加算税賦課要件は満たさないものと解されます。
(2)争点
請求人が法人税法施行令第72条の5第2号に規定する支給額の通知を本件事業年度終了の日までにしたと仮装の上、本件決算賞与額等を損金の額に算入した事実があるか。
(3)引用された最高裁判決判例、地裁判決
明記はありませんが、国税庁は、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)において、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としており、それが引用されていると解されます。
(4)審判所の判断
・本件において、請求人が本件決算賞与の支給額を、法人税法施行令第72条の5第2号イの要件である、各人 別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をした日(以下、本件決算賞与の支給額を、各人 別に、かつ、同時期に支給を受けた全ての使用人に対して通知をした日を「各人別通知日」という。)がいつであるかについては、上記1の(4)のヘのとおり、平成22年1月29日の本件決算賞与の支給日までに本件決算賞与支 給明細書が本件各支給対象者に交付されているところ、当該交付日をもって各人別通知日であることについて、原処分庁及び請求人は争わず、当審判所の調査の結果によっても相当であると認められる。
・そうすると、法人税法施行令第72条の5の規定の適用上、本件決算賞与に係る各人別通知日は、本件事業年度の翌事業年度中であるから、本件決算賞与額は、本件事業年度において、同条第2号に規定する要件を満たさず、また、同条第1号に規定する賞与とも認められないから、同条第3号の規定により、本件決算賞与が支払われた当該翌事業年度の損金の額に算入することになる。
・請求人において法人税法施行令第72条の5第2号に規定する支給額の通知の事実を仮装したか否かについて検討すると、次のとおりである。
A 確かに、本件議事録における本件記載及び本件案内文には、平成21年12月29日の日付が記載されているが、当該日付については、各事実並びに当審判所のL部長に対する調査の結果によれば、L部長は、本件議事録及び本件案内文の作成に当たって、M前部長の決算賞与に関する事務処理手順を踏襲しつつ、日付を請求人の年内最後の営業日としていたことがうかがえる。また、本件議事録における本件記載の内容は、各人別通知日を記載したものでなく、従業員に本件決算賞与を支給することを案内したというにとどまるものであり、さらに、本件案内文の記載内容は、本件決算賞与を支給する旨を記載したにとどまっていることが認められる。
B 本件決算賞与支給明細書の交付は、法人税法施行令第72条の5第2号イに掲げる通知に当たるものであると認められるところ、本件決算賞与支給明細書には、各人別通知日について、本件事業年度中の日付が記載されていたなどの事実は認められず、本件決算賞与支給明細書に関し、本件決算賞与額を本件事業年度の損金の額に算入するために、各人別通知日を仮装した事実がないことは明らかである。
C 各人別通知日の事実の仮装についての原処分庁の主張の根拠は、L部長が、平成21年12月29日でないと本件事業年度の損金にならないため、当該日付を残す必要がある旨を申述したというものであり、その証拠は、原処分庁所属の調査担当職員がL部長の申述内容として作成した文書が存在するのみであるが、請求人は、当該申述内容については否定しており、また、当審判所の調査の結果によっても、当該文書の他に、L部長が、原処分庁に対し、平成21年12月29日でないと本件事業年度の損金にならないため、当該日付を残す必要がある旨の申述を行ったことを認めるに足りる証拠はなく、さらに、請求人において、本件決算賞与額を本件事業年度の損金の額に算入するために、平成21年12月29日の日付を残すようにしたことを認めるに足りる証拠はない。
D 以上を総合的に勘案すると、請求人が、本件決算賞与額について、法人税法施行令第72条の5第2号に規定する賞与の支給額の通知をした日を仮装した事実は認められず、他に、請求人が、本件決算賞与額を、本件事業年度の損金の額に算入するに当たって、何らかの事実を仮装したと認めるに足りる客観的な証拠もない。
(5)結果
・法人税の調査対象期間
◎平成21年1月1日から平成21年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)←重加算税を取消す
当該裁決のさらなる要約
・請求人は翌期に支払いを予定している賞与について、法人税法施行令の規定の通知日の要件を満たして当期に損金算入しようとしたが、通知日の要件を満たすことができなかった。
・上記の、要件を満たさずに繰上げ計上したのみでは単なる期ずれであることから、原処分庁は通知に関する虚偽の主張をしたが、認められなかった。
弊所独自の考察
・弊所独自の視点
◎当該裁決は、当初申告は申告済みでした。
◎当該裁決は、法人税施行令の使用人賞与の決算時期の要件を満たそうと試みたが、満たすことができず、結果的に期ずれとなった事例と解されます。
◎当該裁決は、国税が納税者の隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりである、と弊所が感じた事例です。なぜなら国税が単なる期ずれを通知日の隠匿虚偽記載等であるといいがかりをつけてきたように感じたからです。
◎当該裁決は、明記はありませんが、取引を把握できるような資料が存在していたと解されます。
◎当該裁決は、明記はありませんが、取引を把握できるような集計資料も存在していたと解されます。
◎当該裁決において、明記はありませんが、請求人の調査への協力具合は協力的であったと解されます。
◎当該裁決において、明記はありませんが、請求人の調査への虚偽発言は無かったと解されます。
・当該裁決から導いた弊所独自の重加算税賦課回避基準(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)
国税が単なる期ずれについて隠匿虚偽記載等を主張してくるケースがあるのでそのようないいがかりについては否定することで重加算税賦課を回避できる可能性があります(あくまで私見であり一切の保証はできかねます)