(2020年3月20日作成)(2024年9月11日再編集)

結論

・税務調査の対象期間に関する情報は、3年、5年、7年と様々な情報が飛び交いとにかく混乱します。
・法律的には5年だが実務上の時間的制限から3年となることが多く、6年前や7年前に偽りその他不正の行為をしていれば6年前や7年前も更正されると暗記お願いします。
・6年前、7年前に偽りその他不正の行為が存在していれば最大で7年前まで更正されるわけであり、例えば2年前に偽りその他不正の行為が存在していたとしても最大7年前の根拠とはなりません。
・最大7年遡る根拠は偽りその他不正の行為であり、隠蔽仮装行為が根拠ではありません。
・隠ぺい仮装行為は調査前事前自主修正申告で存在しなかったことに回復できますが、偽りその他不正の行為は調査前事前自主修正申告でも回復できないと解されます。

下記で詳細を記述します。

税務調査の対象期間に関する情報は、3年、5年、7年と様々な情報が飛び交いとにかく混乱します

税務調査 何年分 と検索すると下記と解されます。

・基本は3年だけど5年間可能性がある。
・3年間の調査がある
・最大7年調査される

などとくかく情報がごちゃごちゃしています。

法律的には5年だが実務上の時間的制限から3年となることが多く、6年前や7年前に偽りその他不正の行為をしていれば6年前や7年前も更正されると暗記お願いします

上記の混乱を避けるために簡潔にまとめます。

・法的には調査は5年可能
・しかし実務上は時間的制約から3年の場合が多い
・6年前、7年前に偽りその他不正の行為が存在すれば5年以上更正される可能性がある

となります。

まず除斥期間とは、法律で定められた期間のうち、その期間内に権利を行使しないと権利が当然に消滅する場合の、その期間をいう。時効と異なり、中断すること、ある事由により経過した期間が消えることはない、となります。

・国税通則法70条1項が、更正・決定・減額更正などが5年という除斥期間を定めています。これが税務調査5年の根拠となります。
・国税通則法70条5項が、上記1項に関わらず偽りその他不正の行為が存在する場合は7年とすると定めています。これが最大7年の根拠となります。

6年前、7年前に偽りその他不正の行為が存在していれば最大で7年前まで更正されるわけであり、例えば2年前に偽りその他不正の行為が存在していたとしても最大7年前の根拠とはなりません

勘違いしがちな考え方は下記となります。

その調査において何年前か何期前かに関わらず偽りその他不正の行為が発覚すれば、その調査は7年前まで更正される可能性があるという勘違い

繰り返しとなりますが、注意したいのは、7年前に偽りその他不正の行為があれば最大7年前となるわけであり、例えば直近や2年前に当該行為が存在したとしても7年前とは無関係となります。裁決事例においても、まず決定や賦課処分の期間が適切かどうか検討するために、まず7年前に偽りその他不正の行為が存在したかどうかを検討し、検討した結果存在しなかった場合は当該処分等は違法として取り消されています。

しかし、直近において偽りその他不正の行為を行う納税者なのだから怪しいとして6年前、7年前を「いったん調査」されることは、違法とは言えません。なぜならまずは調査しなければ存在しているかどうかも判断できないためです。

最大7年遡る根拠は偽りその他不正の行為であり、隠蔽仮装行為が根拠ではありません

ここで注意したいのが下記となります。

最大7年遡る根拠は偽りその他不正の行為であり、隠蔽仮装行為が根拠ではない

ということです。しかしながら下記のページのように、国税庁や税務署は隠蔽仮装行為と偽りその他不正の行為を区別しない、同一視している恐れがあり、批判的な意見が存在します。

税理士鴻秀明の隠ぺい仮装と偽りその他不正の行為の違いを明らかにすべきという意見

隠ぺい仮装行為は調査前事前自主修正申告で存在しなかったことに回復できますが、偽りその他不正の行為は調査前事前自主修正申告でも回復できないと解されます

松嶋洋「https://letter.sorimachi.co.jp/taxnews/20230329_01」「脱税など不正取引のペナルティー 重加算税と除斥期間の延伸」(2023年03月29日 )より

重加算税については特殊で、自主的に架空経費を訂正すれば、他の加算税が課税されることはあってお重加算税が課税されることはありません。いわば、重加算税は自主修正でなかったことにすることができるのです。一方で、「偽りその他不正の行為」を自主修正でなかったことにはできません。このため、架空経費を計上して税金を少なくしてしまったのであれば、その年度は自主修正をしようと、今後7年間は調査され税金も取られます。すなわち、一度「偽りその他不正の行為」をした申告をしまうと、そのリカバーは永遠にできません。このため、脱税的な行為はやはり絶対にやってはいけないのです。

とあります。もし仮に偽りその他不正の行為をある日行えば、8年間恐れながら過ごさなければならなくなるということです。

まとめ

税務調査は法的には5年、実務的には3年、後ろめたい行為を行っていれば最大7年、と暗記お願いします。